最終更新日:2023/08/31 (公開日:2023/07/27)
関東大震災から学ぶこと: 100年前の教訓
この記事では、関東大震災についての情報と教訓、そしてこれから来る首都直下型地震への影響について紹介しています。
関東大震災は1923年に発生した日本最大の地震災害であり、首都圏を中心に甚大な被害をもたらしました。
地震の恐るべき破壊力と火災の広がりが教訓となり、現代の防災対策の重要性を強調しています。
関東大震災の概要
関東大震災は、明治以降に日本で発生した災害の中でも最悪の被害を及ぼした海溝型地震です。
今年2023年のちょうど100年前である1923年(大正12年)9月1日の午前11時58分に発生しました。
また、9月1日というのは防災の日と定められています。
地震の規模
地震の震源地は、神奈川県の北西にある相模湾です。
推定マグニチュードは、7.9とされています。(内閣府の報告書より)
神奈川県をはじめとする首都圏で現在の震度7、北海道から四国地方までの広範囲にわたり現在の震度6〜1に相当する非常に強い揺れに見舞われました。
1923年の関東地方について
関東大震災が発生した1923年当時の関東地方は、日本の政治、経済、文化の中心地であり、急速な近代化が進んでいました。以下に関東地方の背景情報の一部を示します。
- 政治情勢
- 日本は大正時代と呼ばれる時期で、政治的には議会制民主主義が確立へ
- 関東地方には東京が位置し、政府機関や重要な施設が集中
- 経済状況
- 関東地方は日本の経済の中心地であり、商業、金融、産業が発展
- 東京は日本最大の都市であり、先進的なビジネスや金融の中心地
- 社会と人口
- 関東地方は人口密度が高く、都市化が進む
- 農村部からの人口流入や産業の発展により、都市部の人口が急増
- 文化と教育
- 関東地方は文化と教育の中心地でもあり、大学、学校、文化施設が集中
- 文学、演劇、音楽などの芸術活動が盛んに行われる
- 都市計画と建築
- 東京は急速な都市化が進んでおり、新しい建物やインフラの建設が行われる
- 近代的な建築物や鉄道、道路などのインフラが整備が進む
関東大震災は、上記のような背景の中で発生し、関東地方の社会や経済に大きな影響を与えました。
また、都市化の進展や近代化の過程において、防災対策や建築基準などの面で課題が浮き彫りになった出来事だったのではないでしょうか。
地震の被害状況
関東大震災では、東京大火災による被害のイメージを持つ方が多いでしょう。
関東大震災における死者・行方不明者が10万5千人、そのうちの約9万2000人もの方が火災によりお亡くなりになりました。
その他の1万3千人の方の内訳は、建物全壊による死者数が1万1千人、津波による死者数が約300人、土砂災害による死者数が、約800人とされています。
関東大震災の原因
ここまで読んだ方は、関東大震災の全体像をご理解していただけたでしょう。
ここからは、火災などの被害が大きくなったのかについてまとめています。
地震のメカニズム
そもそも地震とはどのような現象なのでしょうか。
地震は、地球全体の表面を覆っている厚さ数十kmほどのプレートの運動による変動が原因とされています。
現代では、主に海溝型地震と直下型地震の2つに分類されます。
関東大震災は、海溝型地震に分類されています。
海溝型地震とは、海のプレートが海溝で沈み込むときに陸地のプレートの端が巻き込まれます。やがて、巻き込まれた陸のプレートの端は反発して跳ね上がり、巨大な地震を引き起こします。この跳ね上がりによって起こる地震を海溝型地震と呼んでいます。
直下型地震とは、直下型地震の特徴は、海溝型地震に比べて規模が小さく、また被害範囲も20キロメートルから30キロメートル程度と予想されています。しかし震源が浅い場合は大きな被害をもたらすことになります。また、この型の地震は予知することは、ほとんどできません。
引用:東京都防災ホームページ >https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/bousai/1000929/1000305.html
甚大な火災被害の要因
関東大震災では、約9割の方が火災により被害を被りました。
熊本地震や東日本大震災とは違い、特に火災による被害が大きくなった要因としては下記3点です。
- 地震の発生時刻がお昼時である12時近くであったこと。
- 台風が近くにあり風が強くなっていたこと。
- 現在と比較すると建物間が狭い上に、木造家屋が多く消火設備が未熟だったこと。
このような要因が重なり、甚大な被害を及ぼしてしまったと分析されています。
詳しく知りたい方は、内閣府防災情報のページにある報告書をご参照ください。https://www.bousai.go.jp/kantou100/siryou.html
土砂災害・津波
火災被害があまりにも大きく、地震による土砂災害や津波にあまり触れられることは少ないですが、被害がなかったわけではありません。
土砂災害と津波により約1000人もの方がなくなったとされています。
また、土砂崩れだけでなく、液状化現象も確認されています。
液状化が生じた地域の地形条件は、旧河道・自然堤防・扇状地・砂州背後の低地・埋立地・盆地(扇状地)における河川合流部、台地状の凹部など様々であるが、いずれも地盤の堆積環境からみて緩い砂質土が堆積し、地下水位が高い(浅い)ところである。
引用:内閣府防災情報のページ >https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923_kanto_daishinsai/pdf/1923–kantoDAISHINSAI-1_06_chap3.pdf
関東大震災は、震源地が相模湾内にありマグニチュード7.9と大きかったこともあり、伊豆半島の東海岸部に高さ数メートルの津波をもたらしました。
その結果鎌倉・熱海などでは建物の倒壊や火災だけでなく津波による被害によっても甚大な被害がありました。
被害状況など詳しく知りたい方は、内閣府防災情報のページにある報告書をご参照ください。https://www.bousai.go.jp/kantou100/siryou.html
関東大震災の体験談
現在の東京、横浜などに行かれたことがある方にとっては、このような悲劇がおこったとは信じられない方もいるでしょう。
ここからは、当時被災された方の体験談を一部引用しております。
辛い記憶を思い出したりされる方は、ご注意してお読みください。
秦野市栄町の方
関東大震災の時の私の体験では、“ゴー・ドスン”と音がして、上・下運動が五・六分間位と思います。以後十分位横振りでした。その短時間の出来事は、何も考えられ ず、闇の中で起った様でした。人が地面より四・五十センチ上・下運動していました。 静かになって周囲を見回すと、どの家も半壊や全壊が目立ち、全体の四割位が被害を 受けていました。電気、水道、電話、交通、全部不通、消防は、電柱や電線が倒れたり、たれ下がったり、地割れ等により全々使用出来ません。(中略)
引用:秦野市役所 >https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1001000001042/files/taikenki.pdf
家庭に備えておくべきもの、毛布一枚、ナンキン袋、懐中電灯、マッチ、ローソク一個づつ、砂袋(五キロ入り三袋以上)、食料は十日分位、白米又は玄米、かつぶし、 ミソ、正油、砂糖、塩、梅干、カンパン、カン詰類、マキ等です。
秦野市曽屋の方
大正十二年九月一日、当時三歳半位だった私は、茶の間の食器戸棚の前でお昼を食 べていました。(中略)私はそれを皆より先に食べ ていました。そこへあの大地震でした。泣いている私の上にそばにあった食器棚が倒 れてきて、私はその下敷きになってしまいました。どのくらい時間がたったのか私は 父の腕に抱かれていました。舟のように揺れる我が家は、襖や、障子が全部はずれて、 大掃除の時のようでした。幸い私は手にちょっとかすり傷を作った程度ですみました。(中略)そんな私ですが地震に備えて、何か用意をしているかと言えば、四十九年に新築 した家をプレハブにした位のものです。見えない天井裏に鉄骨が使ってあるのが気に 入りました。家の周囲は、生垣にしましたので地震のときなどとても安全だと思います。食糧の備えも大切だと思います。常に非常分として二~三日分の食糧は備えてお く必要があると思います。 とにかく天災は自らむかえうつという気持が大切であると思います。
引用:秦野市役所 >https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1001000001042/files/taikenki.pdf
秦野市北矢名の方
この世に生を受けて七十年余年、様々の天災に遭い、また数々の人災も見聞きして 来ました。天災に対する私達は、無力でも人災は、各々の注意で避けられます。人類 の不幸も日頃の注意、備えで、半減されるものと信じます。私の体験から、天災は驚 いたり、心配するより、常に冷静な判断と敏速な行動が必要だと思います。どんな大 地震でも、一瞬で潰れることはありませんから、落ちついて行動し、最小限度の生活 必需品を持ち、広い空地に避難する。決して欲を出さないことが肝心です。火災発生 の場合でも、初期消火に全力をそそぎ、自家からは、絶対に火を出さないという気構 えが必要です。月に一度位は、各家庭で、レクレーションの心積りで、子供さんも入 れて全員で防災訓練をして見てはいかがでしょう。日頃から、親は子供に火の恐ろし さ、地震の時の落下物があぶないこと、避難場所をどこにするかなど、体で教えてお くことが必要だと思います。我家では、ガスの出る所の窓は、ガス漏れと室内換気の ため、いつも明けておきます。私は二十年位前に、石油風呂の工事の不備で、一酸化 炭素中毒で倒れた事がありました。主人が急いで家中の窓を明けてくれましたので、 翌朝には元気になりましたが、どんな場合でも己一人の力には、かぎりあること、い つ災難に遭うかわかりません。古い言葉ですが、何時の時代でも助け合いの精神が大 切だと思います。この精神の上にこそ、行政の力も、迅速かつ効果的に、市民の中に 浸透出来るのではないでしょうか。
引用:秦野市役所 >https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1001000001042/files/taikenki.pdf
首都直下地震への教訓と対策
ここまで100年前の関東大震災についてまとめました。
ここからは、これから襲いくるとされている首都直下型地震への教訓や対策を解説します。
首都直下型地震の被害予測
中央防災会議[2013]によると、首都直下地震(都心南部直下地震)が 発生した場合、建物・人的被害の6割程度が都内に及ぶと想定されています。
そのうち、半数程度が区部内で発生すると想定されています。
また、残りの4割は東京都の周辺県である埼玉県・千葉県・神奈川県においての被害が大きくなると想定されています。
地震による被害が、中枢機能が集中している23区内に集中することにより行政・経済・企業機能に及ぼす影響が甚大となるだろう。
関東圏において深刻なインフラ・ライフラインの被害も想定されており、その結果救助や物資調達など初動対応が非常に困難をきたすとされてもいます。
また、経済被害についても企業の本社機能や卸売・小売業、サービス業なども集中しており、その影響は首都圏だけでなく日本全国に及ぶと想定されています。
都が防災対策を実施するにあたっては、都内で発生する甚大な被害への備えを万全に するとともに、周辺県においても甚大な被害が生じる点や、都県境をまたいだ被害が 想定される点などを踏まえた、より現実的な対応策の検討や広域的な連携体制の構築 を進めることが重要である。
引用:内閣府防災ホームページ > https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h25/74/special_01.html
下記画像は、東京都内で最大規模の被害が想定されている都心南部の直下型地震が発生した場合の被害想定になります。
起きたらどうする?
もし、首都直下型地震が起きた場合最も多くの方が困ると想定することは帰宅方法だろう。
もちろん地震から身を守ることや火災からの避難方法などもあるでしょう。
全てを網羅するとかなりボリューミーになってしまうため、帰宅困難について解説します。
東京都がホームページ上で帰宅困難者の行動心得10ヶ条を示しています。
1.あわてず騒がず、
2.状況確認 携帯ラジオをポケットに 作っておこう
3.帰宅地図(東京都防災マップを見る )
4.ロッカー開けたらスニーカー(防災グッズ)
5.机の中にチョコやキャラメル(簡易食料)
6.事前に家族で話し合い(連絡手段、集合場所)
7.安否確認、災害用伝言ダイヤル等や遠くの親戚(災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板)
8.歩いて帰る訓練を
9/季節に応じた冷暖準備(携帯カイロやタオルなど)
10.声を掛け合い、助け合おう
引用:東京都防災ホームページ > https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/bousai/1000026/1000279.html
一個人として、まずは検索で簡単に調べられる②の帰宅地図を確認してみてはどうでしょうか。
今この瞬間に来るかもしれない大地震ですが、一度に全部を行うことは大変です。
そこで諦めるのではなく、1つ1つ簡単にできることから初めてステップアップしていくとやりやすいのではないでしょうか。
参考までに、発災時の企業や自治体の行動フローを載せておきます。
対策
前節でも述べましたが、「いつ来るかわからない」「お金や時間が足りない」など様々な理由があって、思考停止になり防災対策を行わないという方もいます。
そんな方々が勘違いされていることが、防災対策のハードルを高くしてしまっていることが考えられます。
例えば、
- 家族全員分の1週間分の備蓄食を備える
- 自宅周辺の避難所まで歩いて見る
- 防災セットを会社にも準備する
などなど、いざ防災対策をしようと思い検索してみると多くの対策があります。
一度に全てを行うことは、非常に困難です。
お金もかかりますし、多くの時間も費やさなければいけません。
防災対策を実行する前に、防災のハードルを下げてみましょう。
例えば、
- 普段買い物の時にサバ缶を1つ多く購入する。
- 自宅周辺のハザードマップを家族と一緒に確認する。
- 家族や友人と連絡手段をいくつか考えておく。
など、少しの手間と時間を使うだけで行うことができる防災対策はたくさんあります。
まとめ
この記事では、関東大震災についての情報と教訓、そしてこれから来る首都直下型地震への影響について紹介しました。
関東大震災は1923年に発生した日本最大の地震災害であり、首都圏を中心に甚大な被害をもたらしました。
地震の恐るべき破壊力と火災の広がりが教訓となり、現代の防災対策の重要性を強調しています。
関東大震災から得られた教訓は、防災意識の向上、建築基準の強化、統合的な災害対策の構築などが挙げられます。
これらの教訓を活かし、関東大震災の経験から得られた知見を元に、地震や災害に対する予知技術や防災技術が進化しています。
関東大震災を忘れずに、過去の教訓を活かしましょう。
大学時代に災害救援系NPOに在籍し、多数の災害救援活動を経験。卒業後は防災のベンチャー企業でECサイト/オウンドメディアの運用を請け負う。被災地での災害救援活動を行なったり、居住地の防災対策コミュニティに参加し、日々防災と向き合っている。