最終更新日:2023/06/13 (公開日:2018/09/07)
【愛知県】自然災害の特徴と対策ポイント 南海トラフの被害予想
地震、津波、台風、土砂災害…。「災害大国」ともいわれる日本列島では、いつどこで災害に遭遇してもおかしくありません。
災害への備えは、地域ごとの地理的特徴と社会特性を知り、災害の種類ごとにどんな影響がおきるのかを正確に把握するところからスタートします。
ここでは、愛知における地震・津波災害、風水害、土砂災害の特徴を整理し、それぞれの災害についての対策のポイントを紹介します。
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目次
愛知で想定される地震・津波災害
地震災害には、陸域の浅いところで活断層が活動することにより発生する直下型の地震と、海域のプレートが跳ね上がって発生する海溝型の地震とがあります。
愛知に被害を及ぼす地震は、主に南海トラフ沿いで発生する海溝型巨大地震と陸域の浅い場所で発生する地震です。
さらに愛知は県全域が、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。また沿岸部の3市町は「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定されています。
愛知県の地震の特徴
歴史の資料で知られている県内の浅い場所で発生した被害地震としては、浜名湖の西、静岡県との県境付近で発生した715年の地震、1686年の地震や西尾市付近で発生した1861年の地震などが知られています。明治以降では、1945年の三河地震があり、幡豆郡を中心に死者2306名、全壊家屋7221棟などの大きな被害が生じました。この地震により深溝地震断層で地表にずれが生じ、断層の上盤側で特に大きな被害が生じました。
周辺地域で発生した地震によっても被害を受けることもあります。例えば、歴史の資料によると、1586年の天正地震、1715年の大垣付近の地震などで県内に被害が知られており、明治以降では、1891年の濃尾地震により県内の広い範囲で震度6が観測され、甚大な被害が生じました。
さらに、1960年の「チリ地震津波」のように外国の地震によっても津波の被害を受けることがあります。
愛知県における直下型地震
過去にマグニチュード6以上で、本県に被害を及ぼした直下型地震は、濃尾地震と三河地震の2例があります。現在、県内の主要な活断層は県中部に屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯が、伊勢湾内に伊勢湾断層帯があります。
液状化
大きな揺れにより地盤が液状化を起こすと、水道管やガス管などの地中のパイプが破損する被害が発生します。
下の図は、静岡県内の基盤を一定にし、県内での液状化の起こりやすさを表した液状化危険度分布図です。
濃尾平野、岡崎平野、豊橋平野を中心に、液状化危険度が極めて高いエリアが広がっています。
愛知における海溝型地震
県内に被害を及ぼす可能性のある海溝型地震には、南海トラフ地震・東海地震・東南海・南海地震があります。
南海トラフ地震について
駿河湾から遠州灘、熊野灘、紀伊半島の南側の海域及び土佐湾を経て日向灘沖までのフィリピン海プレート及びユーラシアプレートが接する海底の溝状の地形を形成する区域を「南海トラフ」といいます。二つの大きな岩石の板であるプレート同士が押し付けられ合った結果、負荷に耐えられなくなったユーラシアプレートが大きく跳ね上がる。これが南海トラフ地震です
東海地震について
太平洋側では、100年から150年の周期で海溝型の大地震を繰り返してきています。東海地震は、こうした海溝型の大地震の一つで、駿河湾を震源としています。過去150年、この海域での大地震が発生しておらず、いつ発生してもおかしくないと言われています。
東南海・南海地震について
東海地震と同じメカニズムで起きるのが、東南海・南海地震です。
東南海地震は、紀伊半島沖の熊野灘、南海地震は四国沖を震源とする地震です。
3つの地震は、ユーラシアプレートの下に、フィリピン海プレートが沈みこむ、いわばプレートの境で起きる3つ子のような地震です。
特に東海地震が起きるプレートの境を駿河トラフ・東南海・南海地震が起きるプレートの境を南海トラフと呼びます。
3つの地震は、これまで、同時かあるいは、連続して起きてきました。
しかし、この150年間は、東海地震だけが起きていないという状況が続いており、東海地震の起きる海域は巨大地震の空白地帯となっているわけです。
南海トラフ地震における被害予想
政府の中央防災会議は、科学的に想定される最大クラスの南海トラフ地震が発生した際の被害想定を実施しています。
この被害想定によれば、南海トラフ巨大地震がひとたび発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。
愛知の被害は、建物被害229万7982棟、人的被害は冬・深夜のケースでは死者6400人、重傷者6900人、軽傷者3万2000人と想定されています。さらに、インフラ被害は停電など:375万7000軒・情報通信:約120万5000回線と予想されています。その他、エレベーター停止による閉じ込め被害が発生し、帰宅困難者は市街地を中心に県内全体で約323万人発生する可能性があります。
台風などの風水害
愛知は扇状地、氾濫原、三角州といった沖積地に展開しています。洪水の氾濫による水害を防御あるいは軽減するため、「御囲堤」、「霞堤」、「輪中堤」、「新川開削」など、河川を改修したり土地の利用を調整してきました。
しかし、流域の発展に伴う水害危険地域への定住などによって、ひとたび洪水の氾濫が起こると、個人の生命財産のみでなく、都市活動にも莫大な被害が発生するおそれは増え続けています。
愛知では、死者・行方不明者3200人を超えた伊勢湾台風災害以降も、昭和47年、49年、51年、平成3年、さらには平成12年など大きな災害にみまわれています。特に平成12年9月の東海豪雨では、浸水面積275k平方メートル、浸水家屋約6万2千世帯におよび、伊勢湾台風以来の甚大な被害に見舞われてきました。昭和44年から平成12年までの浸水宅地面積は延ベ668k平方メートル、県内宅地の79%、浸水世帯は延ベ32万世帯にも及んでいます。
現在、愛知では東海豪雨を教訓にし、浸水被害が甚大だった地区へポンプの増強や雨水貯留施設の建設・設置を行いました。さらに、監視カメラを導入。水害危険スポットへの24時間監視を始めました。また、東海豪雨など浸水被害に基づいた区別に浸水予想地域を表した洪水ハザードマップを平成22年に作成しました。
土砂災害
毎年発生する自然災害の中で、死者や行方不明者が発生する割合がもっとも高いのは、実は土砂災害です。
阪神・淡路大震災と東日本大震災の特異ケースを除けば、自然災害による死者・行方不明者のうち4割を土砂災害が占めています。土砂災害は、がけ崩れ、土石流、地すべりの順に発生しやすくなっています。
愛知でも、多くの土砂災害が発生し、甚大な被害が起きています。
愛知県は6割以上が山地丘陵地で占められ、地質的にも脆弱な風化花崗岩類、第三紀層が多く分布し、また、中央構造線などの断層もあり、土砂災害の生じやすい特質を持っています。さらに、山腹斜面やがけ地近くまで宅地化が進んでいるため、土砂災害の危険箇所を多く抱えています。この危険箇所は、土石流危険渓流・地すべり危険箇所・急傾斜地崩壊危険箇所に分類されますが、人家等に被害の生じる恐れのある総数は愛知県内約11,000箇所にのぼります。
愛知県が行っている災害対策
アクションプラン
地震に強い愛知県をめざし、愛知県地域防災計画の実効性を高めるために、今後5か年で取り組むべき地震防災施策をとりまとめた行動計画「あいち地震対策アクションプラン」が策定されています。
このプランでは、地震の発生や警戒宣言発令等の事態に対応するため、(1)防災協働社会の形成、(2)防災型まちづくりの推進、(3)災害対策活動への備えを三つの目標として掲げています。施策体系としては、七つの柱を設定し、その下に中心となる40の対策アクションを定めて、地震防災対策を計画的・効果的に推進しているものです。
=愛知が今後取り組むべき地震、防災対策をとりまとめた行動計画です。
防災マップ
防災マップでは「愛知県 東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査(平成23-25年度)」による各種ハザードデータ(震度、液状化危険度、津波到達時間、津波波高、浸水深)を閲覧することができます。
震度、液状化危険度については、数ケースの想定を行っている中で、過去に南海トラフで繰り返し発生している地震を参考にした「過去地震最大モデル」の想定結果を閲覧できます。
津波波高、浸水深、津波到達時間については、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波から命を守るための避難行動をとっていただくことを念頭に、「理論上最大想定モデル」(複数想定したケースのうち、最大または最短の値)の想定結果を閲覧できるようになっています。
防災対策のポイント3つ
①地震・津波への備え
地震・津波は突然発生し、破壊力が非常に大きいため、何をおいても命を守るための対策をたてておくようにしましょう。代表的なのは揺れを抑える対策です。自治体によって耐震診断などに助成金を出している場合もあるので、問い合わせてみて積極的に活用しましょう。
- 耐震補強:壁や屋根、天井、照明器具など
- 家具や家電製品の固定、棚の中身の飛び出し対策、ガラス飛散防止対策
また、大規模な地震の場合はどんなに備えていても必ず被害が発生すると覚悟して、長期間の被災生活を想定した備えをしておくことも重要です。
- 停電対策:バッテリーや蓄電器、簡易発電機などの準備
- 断水対策:飲水や生活用水の確保
- 下水対策:下水道損傷に備えた簡易トイレの確保
- 備蓄対策:食料、生活必需品の備蓄
- 避難対策:津波や大規模火災時の避難場所、避難方法の確認、非常持出品の整理
津波からの避難は一刻を争います。ふだんから高台や津波避難タワーなど、津波から逃れるための場所を確認し、いざというときにすばやく逃げることができるよう、避難訓練にも参加しておきましょう。
②風水害への備え
風水害の場合は、気象庁からあらかじめ予報が出されるため、できるだけ早く正確な情報をつかんで、災害が発生する前に避難できるようにすることがもっとも重要なポイントとなります。
ふだんから気象関係のアプリやホームページにアクセスして、どんな情報がどこにあるか、どのくらいの状態になったら避難などの対応が必要かなど、気象情報を正しく読み取れるようになっておきましょう。
③土砂災害への備え
土砂災害は前触れなく発生します。大雨で地盤が緩んでいるときに起きやすいですが、はっきりとした兆候がみつけにくいことも多いため、崩れることに気づいてからでは助かりません。
土砂災害の場合は、土地の危険性についてあらかじめ知っておくことがもっとも重要なポイントになります。 土砂災害の危険性については、自治体が発表している土砂災害危険度情報(土砂災害ハザードマップなど)が参考になります。ホームページで公開されていますので、あらかじめ確認しておきましょう。
また、大雨のときには、気象庁と都道府県から土砂災害警戒情報や土砂災害に関する避難情報も発表されますので、該当する地域にいる場合はできるだけ早く避難してください。
まとめ
災害はいつどこで発生するかわかりませんが、むやみやたらと恐れて根拠のない都市伝説に引っかからないようにしましょう。
一人ひとりが災害に対する正しい知識を身につけ、「きちんと怖がる」ことが、災害と向き合う第一歩です。
「まさか自分が」とならないよう、良質な情報を集め、できることから備える行動を起こしましょう。
参考文献
防災マップ:http://www.quake-learning.pref.aichi.jp/upload_source/bousaimap1_2014_map.html
アクションプラン:http://www.pref.aichi.jp/bousai/action_plan/
地震本部:https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_chubu/p23_aichi/
過去の水害:https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kasen/kako-suigai.html
名古屋:https://www.toshinjyuken.co.jp/aichi_nagoya/?p=1506
直下型地震と活断層:http://www.pref.aichi.jp/bousai/katudannsou2.html
大地震:https://hicbc.com/bousai/earthquake/file/earthquake/quake/index.htm
南海トラフ地震:https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/assumption.html
:http://www.asahi.com/special/nankai_trough/
・https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58183
土砂災害:https://www.pref.aichi.jp/soshiki/sabo/0000021309.html