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最終更新日:2022/09/03 (公開日:2019/07/09)

BCPを策定する意味とは?知っておきたい企業の危機管理について

災害大国である日本は、企業や事業所でも従業員や財産を守るために「防災」への取り組みを行っています。
防災ととてもよく似ているけれども、別の観点から企業としてぜひ策定しておきたいのが「BCP」です。

そこで今回は、BCPそのものの意味や概要に加えて、策定する目的や重要性について解説しています。
企業としてBCPの策定を検討している人や、危機管理を行っておきたい人は、ぜひ参考にしてください。

前提として「BCP」とは何を意味する言葉か

BCP:対策室
近年BCPを策定、導入する企業が増えてきています。
ところが、具体的に「BCP」とは何を意味する言葉なのか分からない人も多いでしょう。

まず前提として、BCPは以下の意味を持つ言葉です。

  • 「事業継続計画」を指す
  • 企業としての危機管理方法のひとつ
  • 企業の非常時対応マニュアルそのもの

BCPの意味その1:「事業継続計画」を指す

BCPとは「Business continuity plan」の頭文字を取った言葉で、日本語では「事業継続計画」を指します。

簡単に言えば、企業や事業者の事業の存続が危ぶまれる何かが発生した場合でも、事業を停止することなく継続する、または停止せざるを得ない場合もできるだけ早い復旧を目指すために、計画をあらかじめ策定しておくことを指しています。

「企業や事業者の事業の存続が危ぶまれる何か」とは

具体的に、事業の存続が危ぶまれる要因となるものには、以下のものがあります。

  • 地震、津波、台風、豪雨などの自然災害
  • 火災や交通事故などの人的災害や事故
  • サイバーテロやシステム障害
  • 感染病などのパンデミック
  • 大量リコールなどその他事業停止の原因になる可能性のあるもの

以上を見ても、事業停止の要因となるものは外的・内的にも多岐にわたるのが分かります。

なお、BCPとは別に災害や事故を未然に防止する、または発生時に従業員や企業の財産を守るための取り組みに「防災」、災害が発生するのを前提とした取り組みや行動で、できるだけ被害を最小限におさえるための取り組みに「減災」があります。

「防災」や「減災」は企業や従業員の命や財産を守るのが第一の目的ですが、BCPの目的は事業の継続そのものです。

また、防災や減災は、災害や事故などそれぞれに対して対応方法が異なりますが、BCPは事業の継続を目的としているため、「事業を停止せざるを得ないリスクのある要因」の種類は問わず、対応方法は1つという特徴があります。

BCPの意味その2:企業としての危機管理方法のひとつ

企業や事業者に対して、大きな損失や打撃を与えるいろいろなリスクが存在しています。
これらのリスクから企業や事業を守るための考え方が「危機管理(リスクマネジメント)」です。

例えば、企業の従業員による不適切な行動を動画撮影し、SNSなどにアップして拡散する「バイトテロ」が社会問題にもなっています。
バイトテロが発生すると賠償問題や、企業や店舗の社会的信頼の落失にもつながるでしょう。

バイトテロへの危機管理方法にあたるのが「コンプライアンス」です。
コンプライアンスとは日本語で「法令遵守」という意味があり、企業全体が法律や社会的倫理に従うことを指します。

以上で挙げたコンプライアンスと同じく、BCPは災害や事故などの事業停止のリスク要因から企業や事業者を守る、危機管理方法です。
企業や事業者として、身に着けておくべき危機管理能力のひとつと言えるでしょう。

BCPの意味その3:非常時に活用するマニュアルとそれを保守・点検する体制や組織

BCPは、事業を停止せざるを得ない要因に対し、事業を継続させるための計画を策定、実際の行動に移す取り組み自体のほか、非常時に活用するマニュアルそのものもBCPと呼ばれます。

さらに、事業を停止せざるを得ない要因や企業、事業者の状況や規模などは日々変わりますので、マニュアルも保守・点検する必要があります。

「BCP」はマニュアルそのもののほか、マニュアルの保守や点検を行う体制や組織も含めた意味もあるのです。

なお、BCPとよく似た防災への取り組みは、企業内の防災担当者が行う特徴があります。
一方でBCPは保守点検を行う担当部署のほか、経営者以下従業員全員が実際にBCPへの取り組みを行うのも、違いのひとつです。

実際にBCPを発動させる状況が発生した場合はもちろん、日ごろの非常マニュアルの保守点検も、サイクル式で計画の策定からフィードバックまで、組織全体で行います。

BCPを策定する4つの意味とは?


「BCP」というひとつの語句だけで、いろいろな意味を持っていることが分かりました。
次に、なぜBCPを策定すること自体に何の意味があるのかを見てみましょう。

  • 企業や事業者そのものの存在を外・内的なリスクから守るため
  • 企業として信頼や社会的責任のため
  • 事業構造を停止させないため
  • BCPを策定するべき、という外的な圧力が高まったから

BCPを策定する意味その1:企業や事業者そのものの存在を外・内的なリスクから守るため

災害を含めて不測の事態が発生しても、BCPを策定しておけば適切な対応ができ、事業の継続につながります。
企業や事業者そのものの存在を、事業を停止する可能性のある要因から守るのが、BCP策定の第一の目的です。

BCPを策定する意味その2:企業として信頼や社会的責任のため

BCPを策定しておけば「企業としては危機管理体制が整っている・危機管理能力がある」という外的なアピールにもつながります。
BCPを策定することで、危機管理能力のある企業として大きな信頼や信用にも得られるでしょう。

また、BCPには防災と同じく従業員の死亡や負傷者を最小限におさえるという目的も含まれています。
企業や事業者として、従業員の命を守るという社会的責任を果たすのもBCP策定として意味のあることです。

BCPを策定する意味その3:事業構造を停止されないため

企業や事業者が提供する製品やサービスなどが消費者までに届く一連の流れが「サプライチェーン」です。

さらに、IT技術をサプライチェーンの中に取り入れることで、より原材料の確保や在庫管理などを柔軟かつ効率よく管理するのがサプライチェーン・マネジメントの手法も広がりました。

これに加えて、事業のすべてを企業が担うのではなく、一部を外部へ委託するアウトソーシングもIT技術の発展とともに広がり、事業はより効率化されました。

ところが、サプライチェーンやアウトソーシング主体の事業構造は、事業の効率化には有効な一方、一ヶ所が停止してしまうとその事業全体が停止してしまうリスクもあります。

事業構造そのものを停止させないためにも、BCPを各企業や事業者が策定しておくのが重要と言えるでしょう。

BCPを策定する意味その4:BCPを策定するべき、という外的な圧力が高まったから

最後に、現時点でBCPをまだ導入していない、BCP策定に対してまだ具体的な行動を起こしていない企業や事業者に対して「BCPを策定するべき」という外的な圧力が強まった背景があるのも見逃せません。

前提として、BCPは事業停止の可能性のある要因が発生した場合、事業を停止させない、または停止させても即急な復旧のための計画を指します。
これは、企業や事業者の存在を守るだけでなく、社会的な義務を果たす意味があるというのは前項で解説しました。

けれども、BCPの策定や導入が法律で義務付けられているわけではありません。
つまり、BCP策定や導入に対して法的な拘束力はないのです。

BCPの策定や導入を行っていなくても、ただちに罰則規定などがあるわけではありませんので、実際のBCPの策定や導入は企業や事業者にゆだねられることになります。

実際にどのくらいの企業や事業者がBCPの策定や導入を行っているかを調べるために、内閣府は大企業と呼ばれる規模を持つ企業に対して、「平成 29 年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」を行っています。

平成30年3月に発表された調査結果によると、大企業でBCP策定済みなのは調査対象全体の64%。さらに調査時点では未策定・未導入でも今後策定予定となっている企業も全体の17.4%を占めました。

両方合わせると大企業の8割以上が何らかの形でBCPを策定、または策定予定となっていることが分かります。

参考:平成 29 年 度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査|内閣府

この一方で、中小企業庁は中小企業を対象に「従業員規模別に見た中小企業のBCPの策定状況調査」を行っています。

調査結果によると、中小企業ではBCP策定済みはわずか15.5%にとどまっていることが分かりました。

一方でBCPを知っている、必要と思っていると回答した中小企業も全体の6割以上あり、中小企業ではBCPの策定や導入を検討したくても、コストやノウハウ、人材や資金不足などの理由でBCP策定まで進んでいない、という背景があるのです。

参考:第2部 中小企業の稼ぐ力 2 BCPに係る取組の現状|中小企業庁

なお、BCP策定は法律で義務付けられているわけではありませんが、2012年には事業継続マネジメントの国際規格であるISO23001も発行されています。

大企業のBCP策定や導入の完了率の高さや、ISO23001の発行などの外部からの「BCPを策定しておくべき」という圧力により、今後BCP策定を実施、または検討する中小企業や事業者も多くなると予想されています。

つまり、BCP策定そのものが外的圧力に対応する、社会の変化に柔軟に企業として対応するため、という意味も持っているのです。

BCPは企業や事業者だけでなく社会の存続にも大きな意味がある

BCPは事業の停止防止、または停止した場合でもできるだけ早い復旧のために必要な計画であると分かりました。

BCPは企業や事業者そのものの存在を守るだけでなく、従業員の生活や事業全体の存続を行う、社会的にも重要な意味を持っています。

今後災害を含めて事業停止の可能性のある要因はより多様化していきます。
BCPを策定するべきという社会の風潮に乗るだけでなく、企業や事業を守るためにもBCP策定や導入に具体的に動くのが、企業としての責任を果たすことになるでしょう。

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