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最終更新日:2022/09/03 (公開日:2019/06/19)

BCP事業継続計画のメリットと全体プロセスを紹介

災害大国日本で、個人レベルの防災とともに重要な位置にあるのがBCPです。
BCPとは“Business continuity planning”の略で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれています。

BCPをあらかじめ策定しておけば、不測の事態が起きた場合にも企業や団体として適切な行動ができるでしょう。
とはいえ、企業としてBCPをどのように運用すべきか分からず、悩む担当者の人も多くなっています。

そこで今回は、BCP事業継続計画の重要性とともに、BCP事業継続計画の全容から見る運用プロセスをご紹介します。
これからBCP策定を計画している団体や企業の担当者の人も、ぜひ参考にしてください。

BCP事業継続計画とは

いつ起きるか分からない災害時でも、企業や事業を存続させるためにあらかじめ策定しておくのがBCPです。
とはいえ「BCPとは具体的にどのようなものか分からない」または「すでに防災対策を行っているがそれでは不十分なのか」と悩む人も多いでしょう。

まずは、BCPの概要と防災との違いを解説します。

BCPとは「事業継続計画」を指す

BCP(事業継続計画)の概要について説明します。

BCPとは、企業にとって不測の事態が起き、事業を停止せざるを得ない場合に、できるだけ停止せずに継続できるように、または停止してもできるだけ早い事業の再開を目指すために策定する計画を指します。

日本語では「事業継続計画」と訳されています。

BCPにおける「事業を停止せざるを得ない事態」の中には、地震や台風などの自然災害のほか、インフルエンザや食中毒などのパンデミックと呼ばれる感染症、建物の倒壊や家事などの人的災害、大事故、さらにサイバー攻撃やテロ攻撃などのインシデントも含まれています。

BCPというと、「災害が起きても事業を停止しない、または早期の再開を目指すための計画」というイメージがありますが、災害を含め事業を停止せざるを得ない状況すべてに対して策定される、というのを覚えておきましょう。

BCP(事業継続計画)と防災の違い

BCP(事業継続計画)は、「防災」と似た性質を持っていますが、それぞれで対象や目的が異なります。
BCPと防災の違いについて見てみましょう。

防災は「従業員個人」の財産や命を守るのが目的です。
また、地震、津波、台風など災害の種類に応じて対応方法が異なる計画を立てる特徴があります。

例えば地震なら「落下物から身の安全を守る」、津波なら「ただちに高台に避難する」、台風なら「あらかじめ家屋の固定などの措置を講じ、不要不急の外出を控える」など、災害の種類によって行うべき対応は異なってきます。

これは、企業における防災の最大の目的が死傷者と損害額を最小におさえることだからです。
さらに従業員の安否確認や、被災者の救助や支援などの要素も加わってきます。

防災対策の範囲は、従業員、自社ビルや自社工場など「自社組織」の拠点ごとに限定されます。
また、総務部や防災部門、施設部門などの防災担当部署が実際の対策を行っています。

BCPは「企業そのもの」の存続を目的として策定されます。
企業にとって欠かせない従業員の死傷者や資源の損害額を最小限におさえるという防災の目的と重複する部分もありますが、これに加えて重要業務の早期復旧や目標復旧レベルの達成、経営や利害関係者への影響を最小限におさえるという目的も持っています

起きた事態が何であっても対応方法は同一の計画を立てるのが特徴です。
防災と違って、企業の存続に関して起きた事象は重要ではありません。

地震でも感染症でも火事でも、事業を停止せざるを得ない事象が何であってもBCPにおいては「企業として行う対応は同一」というのを覚えておきましょう。

BCPの対象範囲は従業員や自社ビルを含めた「自社組織」全体であること。
さらに事業の委託先、取引先、調達先など企業と事業の依存関係にある組織や団体すべてが対象範囲になる特徴があります。

最後に、BCPを実施するのは企業や事業所の経営者以下役員、各部署が横断的に行います。

BCPの検討や見直し、策定などはBCP策定に関する専用チームが行うとしても、実際のBCPを運用するのは企業全体であるのも防災との違いです。

BCP事業継続計画の6つのメリット

BCP(事業存続計画)は、企業の存続を目的として策定され、防災と目的は異なれど需要な要素であると分かりました。
あらかじめBCPを策定しておくと、以下5つのメリットが得られます。

  1. 平常と同じ心構えができる
  2. 業界全体のストップを防げる
  3. BCPを策定している企業としての信頼度が上がる
  4. 企業としての社会的責任を果たせる
  5. 通常業務にも活かせる

BCP事業継続計画のメリット①:平常と同じ心構えができる

自然災害を含めて、企業の存続に関わる重大なインシデントはいつ発生するか分かりません。
あらかじめBCP(事業継続計画)を策定しておくことで、いざ緊急事態が起きてもマニュアルとして参照し、適切な行動ができるようになります。

適切な行動ができる以外にも、BCPがあることで「これに従って行動すればよい」という安心感にもつながります。

緊急時でも平常時と同じく、冷静かつ適切な対応が求められる経営陣や役員クラスにも、BCPがあることで平常時と同じ心構えができるといったメリットも得られるでしょう。

BCP事業継続計画のメリット②:業界全体のストップを防げる

ひとつの企業や事業所に緊急時が起きて事業が停止してしまった場合、企業や事業所の立場によってはその業界全体の生産、流通ラインがストップしてしまう可能性があります。

メーカー、サプライヤー問わずBCPをあらかじめ策定し、事業停止を防止または早期の再開を行うことで、業界全体のストップを防ぐこともできるでしょう。

BCP事業継続計画のメリット③:BCPを策定している企業としての信頼度が上がる

BCPをあらかじめ策定しているということは、企業として緊急時への対応を行っていることの証明にもなります。

企業や事業所として、リスクマネジメントができていることから対外的にも信頼が上がるメリットがあります。

例えば新規の取引先を開拓する場合でも、BCPを策定している企業と策定していない企業があれば、BCPを策定している企業のほうが緊急時でも事業を停止せず、または停止しても早期再開する可能性が高いです。

取引先として選ぶのなら、よりリスクなく安心して取引できる企業が選ばれるのは当然のため、BCPの策定によって企業としての信頼向上にもつながるのです。

BCP事業継続計画のメリット④:企業としての社会的責任を果たせる

近年、日本企業間でも「企業は従業員だけでなく国や地域に対して社会的責任を果たすべきである」という欧米的な考え方が広がってきました。

企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)を果たすべき、という観点から「企業としてのリスク管理としてコンプライアンスを策定・遵守する」という取り組みも行われています。

従業員や顧客、取引先や株主などを守るために企業側が主体となり、リスク管理を行うという社会的責任を果たすという目的にも、BCPの策定はつながるのです。

BCP事業継続計画のメリット⑤:通常業務にも活かせる

BCP(事業継続計画)は、策定する上で当然業務上で優先するべきものを選定したり、事業停止のリスクとなる企業として脆弱なポイントを把握したりする必要があります。

BCPを策定する過程において、企業として優先すべき業務を改めて把握できるため、業務の効率化につなげたり、企業の脆弱性を知って補強したりといった、通常業務にも活かせるメリットも得られるのです。

BCP事業継続計画の運用プロセス

「内閣府 防災担当」が改訂した「事業継続ガイドライン」では、BCP事業継続計画の運用プロセスを以下のように解説しています。

  1. 方針の策定
  2. 分析・検討
  3. 事業継続戦略・対策の検討と決定
  4. 計画の策定
  5. 事前対策および教育・訓練の実施
  6. 見直し・対策(→1.方針の策定のサイクル)

それぞれのプロセスについて見てみましょう。

BCP事業継続計画の運用プロセス①:方針の策定

BCPを策定するにあたって、企業としての基本的な方針の確認を行い、自社の事業継承に関する基本的な考え方を策定します。

その後、事業継続のための管理(BCM)を行うために、BCMの管理組織や役職の設立、メンバーの指名、チームの構築などBCPを実行する組織づくりを行います。

BCP事業継続計画の運用プロセス②:分析・検討

緊急時の事業停止によってどの程度の影響が出るかの事業影響度の評価やリスクの分析を行い、重要業務の決定や目標復旧時間、目標復旧レベルの検討を行います。

BCP事業継続計画の運用プロセス③:事業継続戦略・対策の検討と決定

事業を継続するための戦略と対策に関する基本的な考え方に加えて、資金確保や法規制への対応、企業としての中核組織の確保、行政や社会インフラへの取り組みや整合性を取るなど、緊急時の事業継続に対する具体的な戦略と対策を検討し、決定していきます。

また、この過程では地域社会との共生と貢献に関する、企業としての社会的責任を果たす対応も同時に検討します。

BCP事業継続計画の運用プロセス④:計画の策定

具体的なBCPの計画を立案、策定していきます。

BCPの事前対策の立案、従業員や役員に対するBCPの事前教育や訓練の実施計画、BCPの見直しや改善に関する実施計画も加えて、BCP全体の文書化も行います。

BCP事業継続計画の運用プロセス⑤:事前対策および教育・訓練の実施

前段階で策定したBCPの事前教育や訓練、BCPの見直しや改善計画を実施します。

BCP事業継続計画の運用プロセス⑥:見直し・対策(→1.方針の策定のサイクル)

事前計画や事前教育、訓練の実施を踏まえたフィードバックを行います。

BCPが緊急時に本当に機能するのかに加えて、事業継続管理体制が適切であるかをBCPメンバーや経営者が見直し、評価を行います。

これらの見直しと評価を踏まえて、基本的な方針の策定をし直す(1へ戻る)のサイクルを経て、BCPを策定していきます。

参考:事業継続ガイドライン 内閣府防災担当

BCP(事業継続計画)策定は企業としての義務

BCP(事業継続計画)の概要や防災との違い、策定するメリットやプロセスを解説しました。

自然災害を含めて、企業として生き残れるかどうかの緊急事態に対応するためには、BCPの策定は企業の従業員や資産を守るため、また社会的な責任を果たすうえでも義務であると言っても、決して過言ではないでしょう。

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