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最終更新日:2022/09/02 (公開日:2020/03/29)

自治体に求められるBCP策定の重要性とポイント(事例付き解説)

災害を始めとした、事業停止に追い込まれる何らかの要因が発生したさいでも、企業の事業を継続できるためにあらかじめ立てておく計画が「BCP」です。

東日本大震災発生後から、日本の企業でもBCPの重要性が注目されるようになり、大企業はもちろん中小企業にもBCP策定を目指す動きが出てきました。

とはいえ、BCPは企業だけでなく、実は災害時重要な役割を担う自治体も策定すべき計画であるのです。

ここでは、特に災害時業務を継続するために、BCPを自治体が策定すべき理由や重要性とともに、策定のポイント、実際の自治体のBCP策定事例を紹介します。

BCPをめぐる自治体の現状を知っておきましょう。

災害時自治体にBCPが求められる理由

自治体にはすでに災害時に自治体が行政としてどのように行動するかの計画である、地域防災計画を策定しています。
それでもなぜ災害時に自治体にも、一般企業のようなBCPの策定が求められるかの理由を解説します。

まず地域防災計画とは、災害発生時自治体が行政として災害対策本部を設置、地域住民の避難や救助、支援を行ったりするための計画を指します。
この地域防災計画は、自治体の庁舎や役員そのものは無事であることが前提で策定されているのが特徴です。

東日本大震災では庁舎や役員そのものが被災するケースも多く、地域防災計画を発動させるための資源自体がなくなることが多くありました。
そのため、庁舎や役員が被災しても、自治体としての業務を継続できるように、BCPを自治体が策定しておくことが重要になったのです。

なお、企業は事業を継続させる目的でBCPを策定するため「事業継続計画」と訳されますが、自治体のBCPは自治体としての業務継続が目的のため「業務継続計画」と訳されます。

災害時のための自治体BCPの策定状況について

災害対策のためには、一般企業だけでなく自治体もBCPを策定しておくことが重要視されるようになりました。
実際に、日本全体での自治体のBCP策定状況について見てみましょう。

総務省消防庁による「地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果」によると、平成30年6月1日現在、BCP策定済みの都道府県は100%なのに対して、市町村は80.5%の策定率、平成30年度中に策定予定を入れても全体でBCPを策定済みなのは89%となっています。

前年度の同調査では、市町村のBCP策定率は64.2%だったため、前年度よりもBCPを策定した自治体は285団体増加している結果が出ました。
ただし、まだ全体の約5/1の市町村は、BCP策定に至っていないこととなるのです。

BCPの策定率の内訳を都道府県別に見ると、北海道、秋田、茨城、埼玉、石川、福井、静岡、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、熊本、大分、宮崎が平成30年度中に策定予定の自治体も含めれば、市町村で策定率100%を達成しています。

関西や中国、四国、九州が特に策定率が高い結果となりました。
北海道や中国、四国、九州など地震や豪雨災害の被災経験がある自治体もBCPを策定済み、または策定予定となっています。

また、東海地震からの備えの高さから静岡県も100%の策定率となりました。

一方で策定率の低い都道府県を見ると青森県の47.5%、岩手県の69.7%、福島県の54.2%、新潟県の66.7%、長野県の71.4%、佐賀県の70%、沖縄県の56.1%となっています。

東日本大震災の被災県である岩手県や福島県を含めた、東北や北陸の自治体が特に策定率が低くなっているのです。

なお、東日本大震災の被災三県のひとつである宮城県は94.3%、東京都は83.9%になっています。
全体的に自治体のBCP策定率は徐々に上がってきていますが、東京などの中枢都市が100%を達成していないところも、今後の課題になると言えるでしょう。

参考:総務省消防庁 地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果

地方自治体の災害時のためのBCP策定ポイント

内閣府では、BCPの自治体策定支援として「市町村のための業務継続計画作成ガイド」を作成、公開しています。
これに沿った災害時の自治体のBCP策定ポイントは以下の6つです。

  • 首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制
  • 本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定
  • 電気、水、食料等の確保
  • 災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保
  • 重要な行政データのバックアップ
  • 非常時優先業務の整理

首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制

県知事や市長、町長など自治体における首長が不在の場合の職務の代行順位と、災害時の職員の参集体制について定めます。

代行の選定には、緊急時に重要な意思決定に支障を生じさせないこと、非常時優先業務の遂行に必要な人数の職員が参集することを重要視して選びましょう。

本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定

災害によって本庁舎が使用不能となった場合、執務場所となる代替庁舎を定めなければいけません。

災害によって庁舎が使えない、というのは地震による建物の損壊など、物理的なダメージによる要因をイメージしがちですが、それ以外の理由で庁舎が使用できなくなる場合もあります。

たとえば庁舎そのものは無事でもライフラインが寸断されているため、電気系統が使えない、前述の業務に必要な人員が確保できない、などです。
あらゆる理由によって庁舎が使えない想定をして、BCPを策定しましょう。

電気、水、食料等の確保

災害発生時、電気を始めとしたライフラインが寸断されます。
さらに、道路が寸断されたり、ほかの企業の事業も停止に追い込まれたりすることが多いため、物流も止まってしまい物資の補充も不可能です。

まずは停電に備えて、自治体としての業務遂行に必要な非常用発電機とその燃料を確保しておきます。
また、災害発生時に業務を遂行する職員などのための水、食料等も一緒に確保しておきましょう。

ライフラインや物流が再開する間までの、災害対応に必要な設備、機器等への電力供給確保の手段をBCPで策定しておきます。
また、災害により本庁舎や自治体への移動手段が寸断され、「陸の孤島」になってしまうと物流が復帰するまでに時間がかかるのと、供給を受けられるのもごくわずかとなります。

外部からの水、食料等の調達が不可能となる場合もあるのでそれも想定してBCPを策定しておきましょう

災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保

災害時には電話線の断線、輻輳などにより固定電話や携帯電話が使用不能になります。
その場合使用可能となる通信手段を確保しておきましょう。

具体的にはインターネット回線を使った一斉配信メール、メールサーバーに頼らないクラウドによる連絡ツールなどが手段の選択肢となります。

また、災害対応にあたって自治体としても情報の収集や発信、連絡調整が必要となります。
災害SNSの活用、防災無線の方法など、自治体の災害対応としての連絡手段も同時に確保しておきましょう。

重要な行政データのバックアップ

災害時の被災者支援や住民対応にも、行政データが必要となります。
たとえば、安否確認や被災者にり災証明を発行するときなどです。

業務の遂行に必要となる、重要な行政データのバックアップをあらかじめ確保しておきましょう。

非常時優先業務の整理

BCPでは、自治体として非常時に優先して実施すべき業務を整理しておきましょう。
事前に各部門で実施すべき時系列の災害対応業務を明らかにしておき、実際にBCP発動とともに災害対応をスムーズに行える体制を作っておきます。

災害を想定した自治体のBCP策定事例

災害を想定した自治体のBCP策定事例として、仙台市と大阪府の2自治体を紹介します。

災害を想定した自治体のBCP事例その1:仙台市

仙台市のBCPは、地震・津波災害対策を想定して策定されています。

仙台市のBCPは、計画の目的や位置づけを「市民の生命・身体及び財産を保護し、市民生活への影響を最小限にする」ことと、「迅速に災害対応業務を開始するとともに、最低限の行政サービスを維持しつつ、可能なかぎり早期に通常業務を復旧させること」と提言しています。

東日本大震災の経験と教訓を活かした、6つの視点からの災害対応の検証、そのうえでの非常時の優先業務を決め、業務を継続するための環境整備として職員の体制、庁舎と設備、燃料の確保、情報・通信、業務用物資の見直しを行っています。

参考:仙台市業務継続計画(BCP)【地震・津波災害対策編】

災害を想定した自治体のBCP事例その2:大阪府

都道府県としても、市町村としてもBCPの策定率100%を達成している大阪府。
大阪府として「府内市町村BCP策定の手引書」を作成、「とにかく無理のない範囲でBCPを作ってみよう」というのをコンセプトに、BCP策定を推進した実績があります。

府内市町村BCP策定の手引書では、BCP策定のポイントとともに必要性も述べられています。
さらに、BCP策定に必要な資料も網羅されていて、初めてBCP策定を行う自治体が行動に移しやすい内容となっているのが特徴です。

参考:大阪府 府内市町村BCP策定の手引書

自治体の災害時業務遂行にもBCPは不可欠

企業だけでなく災害時は自治体も通常業務が困難になる可能性が非常に高いです。

とくに自治体では、業務は被災した住民の生活や命を守るうえでも欠かせないため、必要最低限の業務を続けられるように、BCPを策定しておくのが自治体や住民を守るうえでも、災害からの即急な復興のうえでも重要になってきます。

近年、行政の業務も停止せざるを得ないほどの災害に見舞われるケースも多くなりました。
住民のためにも、自治体としての責務を果たすために災害に強い自治体としてのBCP策定が求められているのです。

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