最終更新日:2022/09/03 (公開日:2019/07/30)
BCPは策定と改善が重要!策定までのプロセスと運営方法を解説
事業を停止せざるを得ない災害や事故などが発生したさいに、できるだけ事業を停止しないように策定しておくのがBCP(事業継続計画)です。
ところが、BCPはただ策定しておくだけでなく、運営と実践のうえで改善をしていくのも重要です。
今回は、BCPを策定するまでの流れと、ただ策定するだけでなく改善しながらの運用の重要性について解説します。
BCPの策定をしたくても具体的に何からすべきか分からない、資金やノウハウ不足などでBCP策定に至らない、という場合もぜひ参考にしてください。
目次
BCPを策定するサイクルについて解説
まずBCPを策定するうえでは、以下の流れに沿っていきます。
- 事業継続の方針を経営者が立てる
- 計画を策定する
- 計画に沿って実施・運用をする
- 従業員の教育訓練を行う
- 対応状況について点検・是正措置を行う
- 経営層による見直しを行う
- 最初に戻る
BCP策定その1:事業継続の方針を経営者が立てる
BCPとは災害やテロ、製品のリコールや大事故など事業を停止せざるを得ない事案が発生した場合でも事業を停止しないように、または事業を停止してもできるだけ早く復旧できるようにあらかじめ策定しておくべき「事業継続計画」です。
企業の規模や事業の内容に応じて、事業継続のために優先すべきことは何かを経営者側が示し、それをもとにBCPを策定していくことになります。
BCP策定その2:計画の策定~実施、運営をする
企業の規模や事業の内容は、もちろん企業によって差があります。
事実、大企業ではBCPをすでに策定済み、または策定予定としているところが多い一方、中小企業の場合は資金やノウハウ不足などで「BCPは策定しなければいけないと思っているが、まだ具体的に何も出来ていない」状態のところも少なくありません。
企業規模や事業内容によって、まずは「できる範囲」でのBCP策定でも問題ありません。
そのためには、最低限事業継続のうえで必要不可欠になることはなにかを経営者が判断し、BCP策定に活かしていくことが重要といえるでしょう。
BCPは、事業を継続させる、または停止せざるを得ない場合でもできるだけ早く復旧させるための計画を指しますが、これだけでなく、BCPのためのマニュアルや運営を行う組織全体もまとめてBCPと呼びます。
経営者の指針に沿ったBCPの計画策定に至れば、それに合わせてマニュアルを作成します。
さらに、マニュアルの保守点検やBCP実行時の運営を行う組織などを決めていきますが、ここで勘違いしてはいけないのが、BCPはあくまで企業全体で行うということです。
BCPと似た、企業としての災害対策である「防災」は、企業でも総務部などの防災担当者が行うことが多くなっています。
一方で、BCPはマニュアルの保守点検を行うBCPとしての組織はあっても、基本的には企業の従業員や関係者すべてが行う計画であることを覚えておきましょう。
BCP策定その3:従業員の教育訓練を行う
計画に沿ってBCPを実行、運営をする上では必ず従業員への教育を行い、BCPに対して周知徹底を行わなければ、BCPは正常に起動しません。
実際に訓練や教育、研修などを経てBCPを実践し、従業員へやるべき対応、覚えておくべき知識などを周知徹底しておきましょう。
BCP策定その3:点検、是正、改善のサイクル
もうひとつ重要なのが「BCPは策定・実行して完了」という一方通行のものではなく、策定の流れはサイクルであることがいえます。
BCPのマニュアルなどを策定、そのうえで従業員への訓練や教育としてBCPを実行したあとは、必ず必要に応じた是正や経営陣による改善を行わなければいけません。
そのため、BCPは一連の流れが一方的なものではなく、策定、実行、改善のサイクルで行われているということを覚えておきましょう。
当初はBCPとして不完全だった計画が、策定、実行、改善のサイクルを踏むことによって徐々に企業としての危機管理能力が上がっていくと言えます。
BCP策定において効果的な4つの改善方法とは
BCPはただ策定するだけでなく、実践やマニュアルの保守点検を行い、改善点を見つけて改善していくことで、より災害や重大インシデントに強い企業として成長できると分かりました。
BCPをより良い物へ改善していくうえで有効な方法は以下の4つです。
- 自己診断チェックを行う
- 机上訓練を行う
- 計画・手順確認訓練を行う
- 総合演習を行う
それぞれどのような手法かを解説していきます。
BCP策定と改善の手法その:自己診断チェックを行う
自己診断チェックは中小企業庁が公開している「3.6 BCP策定・運用状況の自己診断(基本コース)」を使用する方法です。
各設問をよく読み、BCPの運用状況に応じてチェックを行っていきます。
自己診断チェックを活用するポイントは「はい」の数が多ければよい、というわけではなく、チェックの結果に出た「いいえ」の数を少しでも少なくすることです。
「いいえ」は現在のBCPで不足している部分や不完全な部分であるため、「いいえ」を少なくするための是正を行い解決策を得るということは、BCPの是正と改善につながります。
自己診断チェックは中小企業庁の公式サイトからすぐにダウンロードできますので、効果的なBCP策定と改善に役立ててみましょう。
机上訓練を行う
策定したBCPがきちんと機能するか、改善点はないかを是正するさいに有効な方法が「訓練」です。
事業を停止する要因(災害や事故など)を設定したうえで、実際にBCPを実行するプロセスを踏んで訓練を行います。
また、BCPにおける訓練では、必ず「ファシリテーター」と呼ばれる中立の立場を設けます。
ファシリテーターは、訓練が途中で止まってしまわないように、参加者のサポートを行うなど、円滑な訓練進行を行う役です。
BCPに関する訓練で一番簡単に行えるのが「机上訓練」です。
机上訓練とは、文字通り机の上で行っていく訓練でイメージアップ訓練とも呼ばれる訓練です。
災害発生、事故発生などのシナリオをBCPで検証したいテーマに合わせて作成し、シミュレーションをします。
会議室などに集まって行いましょう。
机上訓練の流れは以下の通りです。
- 1グループ10人ほどの数グループを構成
- ファシリテーターが訓練の課題説明後、グループ討議を行う
- 討議の結果をグループごとに発表
- ファシリテーターが講評と検討例を解説
机上訓練は改善点を発見するだけでなく、初歩的な訓練のためBCPを認識させたり、従業員へあらためて企業の危機管理への意識を植え付けたりといった効果も期待できるのが特徴です。
また、大掛かりな準備の必要なく場所と人員、テーマに沿ったシナリオがあれば実践できるため同じテーマを繰り返して改善を行ったり、違うテーマでシミュレーションを行って新しい発見につなげたりすることもできます。
計画・手順確認訓練を行う
「計画・手順確認訓練」とはウォークスルー訓練とも呼ばれる訓練です。
災害や事故など、事業を停止する要因が発生した場合に、どのような手順を取っていくかをBCPのマニュアルに沿って机上で訓練していきます。
計画・手順確認訓練の流れは以下の通りです。
- 策定済みのBCPマニュアルを机上で読み合わせを行う
- ファシリテーターの合図とともに訓練開始
- 災害発生の時系列に沿って、実際に起きた災害に対する施設、ライフライン、周囲の状況などを想定しながら行動手順の確認を行う
- ファシリテーターは各自の行動手順が実行可能かどうかを質問し、そのうえでBCPにおける手順の改善点を発見、今後に生かす
ウォークスルー訓練は、机上で策定したBCPのマニュアルや計画書を開き、実際の手順や適切な行動の確認、さらに事業を停止せざるを得ないリスクの確認などを行います。
最後にファシリテーターが実際に参加者へ災害時にBCPを実行できるかどうかを質問し、不可能な場合は改善点として今後に生かすことができます。
総合演習を行う
総合訓練とは、フルスケールエクササイズとも呼ばれる訓練です。
実際に災害など事業が発生したことを想定した実践的な訓練になります。
総合訓練は以下の流れで行います。
- 総合訓練実施前に参加者へ事前説明会を行う
- テーマを決めて発生した事案(災害、事故、サイバーテロなど)を宣言したうえで、テーマに沿って総合訓練を実施
- 目標時間を設定する
- 緊急時の連絡手段、電気などのインフラ確保はできているか、従業員の状態確認などステップを踏んで確認
- 訓練後は時系列ごとに訓練記録を行う
- 訓練で失敗(=改善点)は課題管理表に記録して今後に生かす
BCPは防災担当者だけが取り組むのではなく、経営陣も含めた企業全体で行う計画のため、従業員全員が参加して行うのが重要です。
まず机上訓練や計画・手順確認訓練を複数行ったうえで総合演習を行いましょう。
また、総合演習は大規模な訓練となるため、事前に説明会を行いテーマや訓練の内容、目的を周知しておきます。
場合によっては業務の調整も必要になるため、日時確認を行いできるだけ多くの従業員が参加できるようにしましょう。
BCPの策定と改善を繰り返して強い企業に成長しよう
BCPはただ策定するだけでなく、確認や訓練を行って実際の問題点を発見し、より適切な計画へ改善していくのが重要です。
企業の規模や事業内容によっては「BCPを策定する資金やノウハウなどがない」いう企業もあるでしょう。
けれども、まずは企業として事業継続に必要最低限の指針を出し、それだけのBCPを作るところから始めても問題はありません。
ただBCPを策定したままにするのではなく、適度訓練やシミュレーションを行い少しずつ改善していけば徐々に災害を始めとした重要インシデントに強い企業に成長していけるでしょう。
今後、より多くの企業がBCPの策定を計画し、実行していくことが予想されています。
BCPの策定の一歩を踏み出してみましょう。