最終更新日:2019/06/05 (公開日:2019/05/28)
「減災ってなに?」被害を減らすために知るべきこと
皆さん、「減災」という言葉を聞いたことはありますか?
聞いたことはあるけど、よくわからない…という方も多いのではないでしょうか。
阪神淡路大震災、東日本大震災を経て広く提唱されている「減災」。
「減災」とは一体どんな取り組みか、「減災」のために国がどんなことをしているか、
「減災」のために私たちができることをまとめていきます。
目次
「減災」とは
まずは「減災」の意味について調べてみました。
震災などによる被害、特に死傷者をできるだけ少なくするよう事前に十全な対策を立てておこうとする考え方。また、その取り組み。堤防・防潮堤など構築物の強化だけでは防ぎきれないとして、地域住民と行政の協働による災害情報の共有、避難方法の周知徹底、物資の備蓄などを重視する。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
つまり、減災とは災害が来た時に被害を最小限にするために対策を立てておくことを指します。
京大名誉教授河田惠昭が提唱し、阪神淡路大震災、東日本大震災を経て広く認識されるようになりました。
内閣府では「やればできる!減災」をテーマに災害被害を軽減する国民運動の一つとしてあげています。
「減災」と「防災」何が違うの?
「いやいや、それって防災と何が違うの?」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
2つの違いは、重視している取り組みの概念の違いです。
「防災」は被害を出さないのが目的
「減災」は被害を最小限に抑えるのが目的
を指します。
つまり「防災」は被害そのものを出さないようにするための取り組みに対し、「減災」は、災害は起こりうるという概念のもと、被害を最小限に抑える取り組みという違いがあります。
防災について、詳しくはこちら↓
もう目の前に!防災の基本と災害への備えを今すぐ身につけるべき理由
減災のための7つの備え
内閣府は「やればできる!減災」をテーマに「今すぐできる7つの備え」を紹介しています。
避けられない災害による被害を最小限にするためにはどんなことができるのか、一緒に見ていきましょう。
減災の備え①「自助」と「共助」
自分の身は自分で守るのが「自助」、地域や身近にいる人どうし が助け合うのが「共助」といいます。
この2つの力が、災害による被害を最小限に抑えるための大きな力となります。
ただし、「自助」があっての「共助」。
周りの人を助けるには、まず自分自身が無事である必要があります。
普段から、災害に対して、「自分でできること」→「家族でできること」→「近所の方と力を合わせてできること」といったことを考える必要があります。
減災の備え②地域の危険を知る
自分たちの地域を災害から守るためには、どのような災害が想定されるかを知る必要があります。各自治体が発行している「防災マップ(ハザードマップ)」や内閣府が自治体ごとに紹介している「表層地盤のゆれやすさマップ」で確認すると良いでしょう。
減災の備え③家は地震に耐えられるか
1981(昭和56)年に、住宅の建物の強さを定める基準が大きく変わりました。
この年を基準に、自分の家の強さを図る必要があるといえるでしょう。
1981(昭和56)年以前に建てられた家の場合は、十分な強度が備わっていない可能性があります。
必ず耐震診断を受け、その結果に応じた補強を行いましょう。
新しい耐震基準に基づいて作られた建物であっても、あくまで人命に深刻な影響が及ばないということを基にしています。
地盤によっては想定以上の揺れになり、建物に大きな影響を与えることもあります。
必ず、点検・整備をこまめに行なって補修を行いましょう。
減災の備え④家の中を災害から守ろう
東京都防災会議の「首都直下地震による被 害想定」によると、約16万人の想定負傷者 のうち、34.2%(約 54,500人)の人々が「家具類の転倒・落下」によって負傷するだろうといわれています。
ところが、内閣府の「地震防災対策に関する特別世論調査」によると、実際に家具類の転倒防止対策を講じている人はわずか24.3%だそうです。
実は家の中で備えることで防げたことで、命を落としてしまうケースが非常に多いんですね。
家庭内に「安全空間」を作るためのポイントは5つ。
○ 家具は、倒れる向きを考えて配置しましょう
○ 家具部屋を作りましょう(寝室や居間として使用しない)
○ 作りつけの家具を使いましょう
○ 寝室には家具を置かないようにしましょう
○ 家具を置く場合は、固定することで転倒防止をはかりましょう
自分の家は、ちゃんと備えられているかチェックしてみてくださいね。
減災の備え⑤日頃からの備え
日頃から「手軽な形」で災害が起きた時の備えをしておくかどうかが万が一のときを左右します。
防災リュックを購入して家に置いておくのも一つの手ですが、「日頃からティッシュ、トイレットペーパーや水をあらかじめ多めに購入する」「玄関にすぐに逃げられるようにLEDライトやズック靴(紐なし靴)を用意しておく」といった、毎日の生活の中に組み込める形で備えましょう。
減災の備え⑥家族で防災会議をしよう
災害は、家族が揃っている時に起きるとは限りません。
バラバラにいるときに起きる可能性もあります。
●日頃からやっておくべきこと
・災害時にどの親戚や知人等に連絡をするか、どの連絡方法を利用するかを家族みんなで決めておきましょう。
・自宅・学校・職場の近くや、通勤通学途中にある避難所の場所を、家族で確認しておきましょう。
・保育園、幼稚園、学校における、災害時の子どもの引き取りに関する取り決めを、確認しておきましょう。
●災害が発生したら
・被災した場合には、自分の状況を、自分から家族や知人に知らせるとともに、家族の安否を確認することが重要です。ただ、災害発生時に電話が殺到すると、被災地域内における電話がつながりにくくなり、安否確認や、消防、警察への連絡等に支障が発生します。安否確認には、災害用伝言ダイヤル 171などのサービスを活用しましょう。
・学校や職場で被災した場合は、先生や防災担当の方の指示に従いましょう。
・家族の安否と周りの安全が確認できたら、今いる場所で、周囲の人たちと力を合わせて、救出・ 救護活動などに協力しましょう。
減災の備え⑦地域とのつながり
阪神淡路大震災では、家の下敷きになった人々の多くを助け出したのは地域の住民の方だったそうです。
日頃から町内会は自治会が開催する行事に参加し、周りの方とのつながりを大切にしましょう!
減災のために、日頃からできることをしよう
先程、「減災」のためにできる7つのことを確認しましたね。
どれも大きなことではなく、日頃から少しずつ取り組めることなんです。
自分を助けるための行動「自助」と周りを助けるための行動「共助」の概念のもと、「災害は必ず来る」ということを頭の片隅に置いて常に行動するようにしましょう。
「この家具は地震が来たら危ないから対策しよう」「遠出するときは家族に連絡しておこう」といった些細なことからで構いません。
今まで見えていた景色が少し違って見えるかもしれませんね。
地方自治体の減災に関する取り組み
各地方自治体では、減災に関する取り組みを行っています。
例として、大阪府をピックアップしました。
・大阪府の減災に関する取り組み
大阪府はウェザーニュースと共同で「おおさか減災プロジェクト」を実施しています。
ウェブ上で自治体からのお知らせや、一般の方による気象に関するリポートのチェック、避難場所の確認などをすることができます。
もし被害があったときに、今現在のリアルな状況やどこに行ったらいいのかなどひと目で確認することができますよ。
「おおさか減災プロジェクト みんなの参加で災害を減らそう」(パソコン版)<外部リンク> http://weathernews.jp/gensai_osaka/
「おおさか減災プロジェクト みんなの参加で災害を減らそう」(モバイル版)<外部リンク>http://wni.jp/?osak
そのほかにも、災害について考えるカフェや、小学生のための防災マップコンクールなど日頃から災害を意識してもらうための取り組みは多数あります。
今住んでいる区域でどんなことをしているのか、ぜひチェックしてみてくださいね。
参考ページ:災害被害を軽減する国民運動
減災の研究をしている大学も多数
大きな災害が起きる国として、多くの大学も研究を行っています。
中でも積極的に活動を行っている2つの大学をご紹介します。
・名古屋大学減災連携研究センター
名古屋大学は平成22年12月に「減災連携研究センター」を立上げました。
「東海」「東南海」「南海」の3連動地震などによる巨大災害や近年頻発している風水害に対して、地域密着型の様々な連携により、被害を軽減していくための戦略について、研究などを通じて構築していくことを目指しているそうですよ。
定期的に大学の教員に気軽に災害に関する質問ができる「げんさいカフェ」や市民団体や一般市民に向けて、最先端の減災研究について解説する講演会「防災アカデミー」を毎月開催しています。
(出典:名古屋大学減災連携研究センター)
名古屋大学減災連携研究センターでは、減災を学ぶために作った施設「減災館」も運営しています。
「減災館」では、「みて、さわって、減災を学ぶ」をコンセプトに大地震が起こった時の建物の揺れを体感したり、地盤の変化や地理的特徴を学んだり「減災」を体感的に学ぶことができるそうですよ。
ぜひ一度足を運んでみてくださいね。
・神戸大学減災デザインセンター(CResD)
神戸大学の減災デザインセンター通称Center for Resilient Design(CResD)では
”災害に対して回復力、復元力(レジリエンス | Resilience)を発揮できるしなやかな都市は
同時に住みやすい都市(リバブルシティ | Livable City)でなければならない”と定義し、
「デザイン」という観点から減災社会を実現していくことを研究しています。
実験企画「078Kobe のこいのぼり ver2 ードローンがもたらす減災の未来」では、こいのぼりを吊り下げたドローンでリアルタイムにドローンから人々に語りかける実験も成功を収めたそう。
ただの実験だけでなく、見た目からも楽しめる企画で参加しやすいのが特徴ですね。
(出典:神戸大学減災デザインセンター)
このように、デザイン的な観点から減災を地域社会に息づくものにしていく研究を行っていくそうです。
まとめ:災害は避けられない。「減災」のための活動がどれだけできるか
いかがでしたか?
「減災」は、小さなことの積み重ねです。
災害が起きる前から、私たちができることはたくさんあります。
日頃やるべきことを意識し、行動に移していきましょう!