最終更新日:2023/03/01 (公開日:2018/09/07)
【南海トラフ】奈良県に予想されている津波や震度は?災害の特徴と対策もご紹介
地震、津波、台風、土砂災害…。「災害大国」ともいわれる日本列島では、いつどこで災害に遭遇してもおかしくありません。 災害への備えは、地域ごとの地理的特徴と社会特性を知り、災害の種類ごとにどんな影響がおきるのかを正確に把握するところからスタートします。 ここでは奈良県における地震・災害、風水害、土砂災害の特徴を整理し、それぞれの災害についての対策のポイントを紹介します。
目次
奈良県で想定される南海トラフ地震の影響
地震災害には、陸域の浅いところで活断層が活動することにより発生する直下型の地震と、海域のプレートが跳ね上がって発生する海溝型の地震とがあります。奈良県における直下型地震では、奈良市、天理市を縦断するようにのびている奈良盆地東縁断層帯や、金剛山地に沿って大阪府との境に延びる中央構造線断層帯が、今後30年以内に発生する確率が高く、また都市部の直下に位置するため、もっとも影響の大きい地震とされています。 そのほかにも、奈良県付近には、生駒断層帯や木津川断層帯など、多くの断層帯があり、県内のいつどこで地震がきてもおかしくありません。
震度分布(揺れやすさ)
<奈良盆地東縁断層帯の場合の揺れやすさ>
奈良県でもっとも大きな影響をあたえる奈良盆地東縁断層帯の揺れやすさを表す震度分布図は以下のとおりです。 奈良市など市街地で最大震度7、県内のかなりの部分が震度5強以上の強い揺れに見舞われると想定されています。
<中央構造線断層帯の場合の揺れやすさ>
奈良県で大きな影響をあたえる中央構造線断層帯の揺れやすさを表す震度分布図は以下のとおりです。 御所市などの大阪府に隣接する市の多くで最大震度7、県内のかなりの部分が震度6弱以上の強い揺れに見舞われると想定されています 。
下の図は、警固断層帯だけでなく、他の断層帯の地震もあわせて一定の基盤で県内全体での揺れやすさを想定した震度分布図です。
液状化
大きな揺れにより地盤が液状化を起こすと、水道管やガス管などの地中のパイプが破損する被害が発生します。 下の図は、福岡県内の基盤を一定にし、県内での液状化の起こりやすさを表した液状化危険度分布図です。どちらも奈良盆地を中心とした地域で危険度が高くなっています。
建物倒壊、地震火災被害
直下型の地震は比較的浅いところで発生するため、マグニチュードは小さめでも大きな揺れになり、建物倒壊などの危険も大きくなります。 県内で最も被害の大きい奈良盆地東縁断層帯のケースでは地震動による全半壊棟数が19万棟に達し、被害はすべての市町村に及びます。 特に奈良市、大和郡山市、天理市、橿原市では全半壊棟数が1万棟を超え、崩れた建物から出火し、広範囲で大規模な火災が起きると予測されています。
人的被害
建物の倒壊や火災、斜面崩壊などにより、おおぜいの死者や負傷者が発生します。 奈良盆地東縁断層帯地震では、奈良市を中心に、死者数が5000人近く、負傷者が1万9000人以上発生すると予測されています。 また、被災により全県で食料不足や、断水などが予想され、避難所での生活を余儀なくされる人は地震発生1週間後に約44万人にのぼるとされています。
インフラ被害
大きな揺れにより、地中に埋められた管渠が損傷し、上下水道、電力、通信、都市ガスなどのインフラ施設にも大きな被害が発生します。 また、高速道路などの道路被害、鉄道被害などの公共施設の被害も想定され、移動手段にも支障が出ます。 市民生活への影響がもっとも大きくなるのは警固断層帯断層の地震で、以下のような大規模なライフライン停止が予測されています。
- 停電など:約48.6万世帯
- 通話障害:約6万世帯
- 食料・飲料水:約43万世帯に影響
- 都市ガス:約25.6万世帯に影響
- 医療:約600人の医師不足
その他、エレベーター停止による閉じ込め被害が発生し、帰宅困難者は市街地を中心に県内全体で発生する可能性があります。
奈良県における海溝型地震/南海トラフ地震
奈良県は海に面していないため、海溝型地震による津波被害を受ける可能性はありませんが、巨大な海溝型地震である南海トラフ地震の影響を強く受ける可能性もあります。県内全域が、南海トラフの地震で著しい地震災害が生じるおそれがあり、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。
奈良県で発生する海溝型地震で最も被害が大きくなる東南海・南海地震同時発生のケースでの揺れやすさを表す震度分布図、液状化危険度分布図は以下のとおりです。
奈良市など市街地で最大震度7、県内のかなりの部分が震度5強以上の強い揺れに見舞われると想定されています。
台風被害
奈良県で気をつけなければならない災害は、地震だけではありません。 過去には、台風や大雨による風水害も、大規模な被害が発生しています。
台風は、7月から9月を中心に接近したり上陸したりするものが多く、奈良県は毎年2~3回は台風の襲来に見舞われます。 台風が来ると、暴風や浸水で大きな被害が発生する場合があります。過去には次のような大型台風による被害がありました。
- 2011年 台風12号(紀伊半島大水害):死者・行方不明者24名、重傷者5名、家屋全半壊120棟など
- 2013年 台風18号:重傷者1名、床上浸水19棟、床下浸水93棟
- 2017年 台風21号:重傷者1名、家屋全半壊7棟、床上浸水119棟、床下浸水387棟
集中豪雨、大雨被害
奈良県における大雨は、梅雨前線や寒冷前線が多くなっており、暖気と寒気の移流による大雨も発生しています。 奈良盆地を中心とする平野部では、降水量が全国平均を下回る少雨地帯であるのに対し、南部山地では2000mm以上の降水があり、特に南東部の大台ケ原山地では5000mm以上に達する日本屈指の多雨地帯となっています。近年だけでも、次のような大雨災害が次々と発生しています。
- 平成24年6月 梅雨前線:大和高田市で床下浸水25棟、安堵町で床下浸水1棟
- 平成25年6月 梅雨前線停滞:大和高田市で床上下浸水44棟、桜井市や葛城市でも浸水被害
- 平成29年9月 寒冷前線停滞:床上下浸水118棟、道路冠水による車両浸水6か所10台
土砂災害
毎年発生する自然災害の中で、死者や行方不明者が発生する割合がもっとも高いのは、実は土砂災害です。 阪神・淡路大震災と東日本大震災の特異ケースを除けば、自然災害による死者・行方不明者のうち4割を土砂災害が占めています。
土砂災害は、がけ崩れ、土石流、地すべりの順に発生しやすくなっています。
奈良県でも、多くの土砂災害が発生し、甚大な被害が起きています。 過去には平成23年紀伊半島大水害で県内1800か所で土砂移動現象が発生しました。 今後、土砂被害が拡大する可能性のある地区は警戒区域として指定されています。
【参考】土砂災害警戒区域(2019年6月28日時点)
- 桜井市:889か所(うち特別警戒区域 774か所)
- 宇陀市:1799か所(うち特別警戒区域 805か所)
- 五條市:1171か所(うち特別警戒区域 463か所)
奈良県 土砂災害警戒区域等の指定状況及び基礎調査結果の公表状況(2019年6月)
奈良県内の各市町村の土砂災害警戒区域や土砂災害危険度情報は「奈良県土砂災害・防災情報システム」から確認することができます。
奈良県における防災対策のポイント
地震への備え
地震・津波は突然発生し、破壊力が非常に大きいため、何をおいても命を守るための対策をたてておくようにしましょう。代表的なのは揺れを抑える対策です。自治体によって耐震診断などに助成金を出している場合もあるので、問い合わせてみて積極的に活用しましょう。
- 耐震補強:壁や屋根、天井、照明器具など
- 家具や家電製品の固定、棚の中身の飛び出し対策、ガラス飛散防止対策
また、大規模な地震の場合はどんなに備えていても必ず被害が発生すると覚悟して、長期間の被災生活を想定した備えをしておくことも重要です。
- 停電対策:バッテリーや蓄電器、簡易発電機などの準備
- 断水対策:飲水や生活用水の確保
- 下水対策:下水道損傷に備えた簡易トイレの確保
- 備蓄対策:食料、生活必需品の備蓄
- 避難対策:大規模火災時の避難場所、避難方法の確認、非常持出品の整理
風水害への備え
風水害の場合は、気象庁からあらかじめ予報が出されるため、できるだけ早く正確な情報をつかんで、災害が発生する前に避難できるようにすることがもっとも重要なポイントとなります。 ふだんから気象関係のアプリやホームページにアクセスして、どんな情報がどこにあるか、どのくらいの状態になったら避難などの対応が必要かなど、気象情報を正しく読み取れるようになっておきましょう。
土砂災害への備え
土砂災害は前触れなく発生します。
大雨で地盤が緩んでいるときに起きやすいですが、はっきりとした兆候がみつけにくいことも多いため、崩れることに気づいてからでは助かりません。
土砂災害の場合は、土地の危険性についてあらかじめ知っておくことがもっとも重要なポイントになります。
土砂災害の危険性については、自治体が発表している土砂災害危険度情報(土砂災害ハザードマップなど)が参考になります。
ホームページで公開されていますので、あらかじめ確認しておきましょう。
(⇒奈良県土砂災害・防災情報システム)
また、大雨のときには、気象庁と都道府県から土砂災害警戒情報や土砂災害に関する避難情報も発表されます。
もし、該当する地域にいる場合はできるだけ早く避難してください。
まとめ
災害はいつどこで発生するかわかりません。
むやみやたらと恐れて根拠のない都市伝説に引っかからないようにしましょう。 一人ひとりが災害に対する正しい知識を身につけ、「きちんと怖がる」ことが、災害と向き合う第一歩です。
「まさか自分が被災するなんて」とならないよう、良質な情報を集め、できることから備える行動を起こしましょう。