最終更新日:2022/09/03 (公開日:2018/09/07)
広島県で気をつけるべき災害とは 広島県における災害の特徴と対策方法
地震、津波、台風、土砂災害…。「災害大国」ともいわれる日本列島では、いつどこで災害に遭遇してもおかしくありません。
災害への備えは、地域ごとの地理的特徴と社会特性を知り、災害の種類ごとにどんな影響がおきるのかを正確に把握するところからスタートします。
ここでは、広島県における地震・津波災害、風水害、土砂災害の特徴を整理し、それぞれの災害についての対策のポイントを紹介します。
目次
広島県で想定される地震・津波災害
地震災害には、陸域の浅いところで活断層が活動することにより発生する直下型の地震と、海域のプレートが跳ね上がって発生する海溝型の地震とがあります。
広島県に影響する直下型地震と海溝型地震について、発生のしやすさと起こりうる被害想定についてみていきましょう。
広島県における直下型地震
広島県における直下型地震では、四国における讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部地震が、今後30年以内に発生する確率が高く、都市部の直下ではないものの地理的要因から、影響の大きい地震とされています。
そのほかにも、広島県内には、五日市断層帯や断層帯、岩国断層帯など、多くの断層帯があります。また平成 12 年(2000 年)鳥取県西部地震のように活断層が確認されていない地域において起きた地震でも、広島県は大きな被害を受けており、県内のいつどこで地震がきてもおかしくありません。
震度分布(揺れやすさ)
<讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部地震の場合の揺れやすさ>
広島県で大きな影響をあたえる讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部地震の揺れやすさを表す震度分布図は以下のとおりです。
福山市などで最大震度6強、県内のかなりの部分が震度4以上の強い揺れに見舞われると想定されています。
震度分布図 広島県地域防災計画(震災対策編・津波災害対策計画)https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/4/bousaikeikaku-tunami.html
建物倒壊、地震火災被害
直下型の地震は比較的浅いところで発生するため、マグニチュードは小さめでも大きな揺れになり、建物倒壊などの危険も大きくなります。
讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部地震では、三原市などを中心に全壊する木造建物が7600棟以上になると想定されています。また、崩れた建物から出火し、広範囲で大規模な火災が起きると予測されています。
人的被害
建物の倒壊や火災、斜面崩壊などにより、おおぜいの死者や負傷者が発生します。
讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部地震では、三原市を中心に、死者数が2000人近く、負傷者が6000人以上発生すると予測されています。
また、被災により食料が不足するのは全県で約23.5万食、断水人口は約4.6万人、避を必要とする人は約14.5万人にのぼるとされています。
広島県における海溝型地震
広島県は瀬戸内海に面しており、海溝型地震としては、西日本の太平洋側一帯で発生する確率が高いとされる南海トラフ地震がもっとも大きな影響を与える地震となります。
津波の高さ、到達時間
海溝型の地震でもっとも顕著となるのは津波による被害です。広島県において津波の被害がもっとも大きいのは南海トラフ地震で、沿岸部の低地の多くで浸水し、そのうち86%の地域が30㎝以上浸水するとされています。
広島県地域防災計画(震災対策編・津波災害対策計画)https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/4/bousaikeikaku-tunami.html
過去には、東北地方太平洋沖地震の際には広島で0.2m、呉で0.3mの津波が観測されました。
津波はものすごい量の海水が壁のようになり、桁違いの圧力であらゆるものを一気に飲み込んで、まきこまれたガレキと一緒になってすべてを押し流します。2mの津波で木造家屋は完全に破壊されてしまうといわれています。
津波による人的被害、建物被害
広島県の津波被害は、南海トラフ地震がもっとも多いと予測されています。
人的被害では、沿岸部を中心に1万5000人程度の死者が発生し、建物被害では、多くの建物が全半壊すると予測されています。
なお、人的被害については、津波の到達までの時間を活用し避難をしっかりと行えば、被害は抑えられると考えられます。
震度分布(揺れやすさ)
<南海トラフ地震の場合の揺れやすさ>
広島県でもっとも大きな影響をあたえる南海トラフ地震の揺れやすさを表す震度分布図は以下のとおりです。
三原市などで最大震度6強、県内のかなりの部分が震度5弱以上の強い揺れに見舞われると想定されています。
広島県地域防災計画(震災対策編・津波災害対策計画)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/4/bousaikeikaku-tunami.html
液状化
大きな揺れにより地盤が液状化を起こすと、水道管やガス管などの地中のパイプが破損する被害が発生します。
下の図は、広島県内での液状化の起こりやすさを表した液状化危険度分布図です。沿岸の広い範囲で危険度が高くなっています。
液状化危険度分布図
広島県地域防災計画(震災対策編・津波災害対策計画)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/4/bousaikeikaku-tunami.html
建物倒壊、地震火災被害
南海トラフ地震では、広島市などを中心に全壊する木造建物が6万9000棟以上になると想定されています。また、崩れた建物から出火し、広範囲で大規模な火災が起きると予測されています。
人的被害
建物の倒壊や火災、津波、斜面崩壊などにより、おおぜいの死者や負傷者が発生します。
南海トラフ地震では、広島市を中心に、死者数が1万4000人近く、負傷者が2万2000人以上発生すると予測されています。
また、被災により食料が不足するのは全県で約57万食、断水人口は約104万人、避難を必要とする人は約38万人にのぼるとされています。
インフラ被害
大きな揺れにより、地中に埋められた管渠が損傷し、上下水道、電力、通信、都市ガスなどのインフラ施設にも大きな被害が発生します。
また、高速道路などの道路被害、鉄道被害、港などの公共施設の被害も想定され、移動手段にも支障が出ます。
市民生活への影響がもっとも大きくなるのは南海トラフ地震で、以下のような大規模なライフライン停止が予測されています。
l 停電など:11万世帯
l ガス:15万世帯
l 情報通信:約7.6万世帯
l 食料・飲料水:約57万食不足
l 医療需要過不足:約-1200
その他、エレベーター停止による閉じ込め被害が発生し、帰宅困難者は市街地を中心に県内全体で約16.5万人発生する可能性があります。
広島県における風水害
広島県で気をつけなければならない災害は、地震だけではありません。過去には、台風や大雨による風水害も、大規模な被害が発生しています。
出典:広島市HP
※ここの写真は、各都道府県ごとに、実在の被害写真を入れてください。
台風被害
台風は、7月から9月を中心に接近したり上陸したりするものが多く、広島県は毎年2~3回は台風の襲来に見舞われます。
台風が来ると、暴風や浸水、高潮や高波などで大きな被害が発生する場合があります。過去には次のような大型台風による被害がありました。
l 平成5年7月 台風5号:家屋全壊1戸など
l 平成17年9月 台風14号:家屋全壊4戸、一部損壊44戸など
l 平成18年9月 台風13号:死者1名、行方不明者1名、家屋全半壊10戸など
集中豪雨、大雨被害
広島県における大雨は、梅雨前線によるものが多くなっています。太平洋高気圧が強くなり、前線が西日本付近や日本海南部に 停滞することが多くなり、前線の活動が活発となって大雨の降ることが度々あります。
近年だけでも、次のような大雨災害が次々と発生しています。
l 平成22年7月庄原市などで豪雨:死者1人、全半壊24戸、一部半壊6戸など
l 平成26年8月広島市、安芸高田市、三好市、福山市などで豪雨(2014年):死者77人、全半壊150棟以上、一部損壊175戸など
- 平成30年7月西日本豪雨(2018年):死者108人・行方不明者6人、全半壊4000戸以上、一部損壊1898戸など
広島県における土砂災害
毎年発生する自然災害の中で、死者や行方不明者が発生する割合がもっとも高いのは、実は土砂災害です。
阪神・淡路大震災と東日本大震災の特異ケースを除けば、自然災害による死者・行方不明者のうち4割を土砂災害が占めています。
出典:広島市HP
※ここの写真は、各都道府県ごとに、実在の被害写真を入れてください。
土砂災害は、がけ崩れ、土石流、地すべりの順に発生しやすくなっています。
広島県は
近年の土砂災害で特に被害が甚大だった土砂災害は以下のとおりです。
・平成26年8月 広島土砂災害
広島市内の各所で土石流,がけ崩れが発生。犠牲者77名(うち災害関連死3名),負傷者68名,家屋全壊179棟,半壊217棟,一部損壊189棟,床上浸水1,084棟,床下浸水3,080棟という大きな被害を出した。
・平成30年7月 西日本豪雨
県内で1,242箇所もの土石流,がけ崩れが発生。犠牲者126名(うち災害関連死17名・土砂災害による犠牲者87名),行方不明者5名,負傷者146名,建物東15,908棟(全壊1,152棟,半壊3,614棟,一部損壊2,146棟,床上浸水3,165棟,床下浸水5,831棟)(平成31年2月28日時点)という被害を出した。
広島県における防災対策のポイント
地震・津波への備え
地震・津波は突然発生し、破壊力が非常に大きいため、何をおいても命を守るための対策をたてておくようにしましょう。代表的なのは揺れを抑える対策です。自治体によって耐震診断などに助成金を出している場合もあるので、問い合わせてみて積極的に活用しましょう。
l 耐震補強:壁や屋根、天井、照明器具など
l 家具や家電製品の固定、棚の中身の飛び出し対策、ガラス飛散防止対策
また、大規模な地震の場合はどんなに備えていても必ず被害が発生すると覚悟して、長期間の被災生活を想定した備えをしておくことも重要です。
l 停電対策:バッテリーや蓄電器、簡易発電機などの準備
l 断水対策:飲水や生活用水の確保
l 下水対策:下水道損傷に備えた簡易トイレの確保
l 備蓄対策:食料、生活必需品の備蓄
l 避難対策:津波や大規模火災時の避難場所、避難方法の確認、非常持出品の整理
風水害への備え
風水害の場合は、気象庁からあらかじめ予報が出されるため、できるだけ早く正確な情報をつかんで、災害が発生する前に避難できるようにすることがもっとも重要なポイントとなります。
ふだんから気象関係のアプリやホームページにアクセスして、どんな情報がどこにあるか、どのくらいの状態になったら避難などの対応が必要かなど、気象情報を正しく読み取れるようになっておきましょう。
土砂災害への備え
土砂災害は前触れなく発生します。大雨で地盤が緩んでいるときに起きやすいですが、はっきりとした兆候がみつけにくいことも多いため、崩れることに気づいてからでは助かりません。
土砂災害の場合は、土地の危険性についてあらかじめ知っておくことがもっとも重要なポイントになります。
土砂災害の危険性については、自治体が発表している土砂災害危険度情報(土砂災害ハザードマップなど)が参考になります。ホームページで公開されていますので、あらかじめ確認しておきましょう。(⇒土砂災害ポータル広島 https://www.sabo.pref.hiroshima.lg.jp/portal/top.aspx)
また、大雨のときには、気象庁と都道府県から土砂災害警戒情報や土砂災害に関する避難情報も発表されますので、該当する地域にいる場合はできるだけ早く避難してください。
気象庁 土砂災害警戒情報・大雨警報(土砂災害)の危険度分布についての解説ページ
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html
まとめ
災害はいつどこで発生するかわかりませんが、むやみやたらと恐れて根拠のない都市伝説に引っかからないようにしましょう。
一人ひとりが災害に対する正しい知識を身につけ、「きちんと怖がる」ことが、災害と向き合う第一歩です。
「まさか自分が」とならないよう、良質な情報を集め、できることから備える行動を起こしましょう。