最終更新日:2022/09/02 (公開日:2019/08/14)
BCPは「災害想定」が第一歩!BCP策定のポイントを解説
企業のリスク管理の手法として「BCP」が注目を集めています。
BCPとは、企業の主な事業を停止せざるを得ないリスク要因が発生した場合に、できるだけ事業を停止しないようにする、または停止してもできるだけ早い復旧のためにあらかじめ策定しておく計画を指します。
BCPは法的に策定する義務はありませんが、災害大国である日本だからこそ、災害を始めとしたリスクに立ち向かう企業としての責務として、策定をする、または策定を検討する企業が増加しています。
ここでは、災害大国だからこそBCPは災害想定が重要であること、それを踏まえたBCP策定のポイントをご紹介します。
BCP策定で何を重視するかを悩んでいる人も、ぜひ参考にしてください。
目次
BCPで災害想定が重要な理由と想定すべきこと
BCPは、事業を停止する要因に対してあらかじめ事業を停止しない、または停止しても即急な復旧を目指すためにあらかじめ策定しておく計画を指します。
事業を停止する要因はさまざまありますが、災害大国である日本は災害が事業停止の要因となる場合も多いです。
よって、BCPを初めて策定したい場合や、特にリスク要因が分からない企業の場合は、災害想定のうえでBCPを策定するのが有効といえます。
また、災害と一言に言っても自然災害から人的災害まで、いろいろな種類があります。
すべての災害を想定してBCPを策定していくのは、最初は得策ではありません。
まずは、発生する可能性が高い災害にしぼりこんで想定し、BCP策定に活かすようにしましょう。
BCP策定のために災害を想定する場合、以下2つの範囲で優先順位を決めましょう。
- 国での災害
- 地方ごとの災害
それぞれの災害想定について解説します。
国での災害
「首都直下型地震」「南海トラフ大地震」など、近年大きな災害の発生が予測されているのは、テレビやインターネットなどのメディアで目や耳にする人も多いでしょう。
このような国での災害であらかじめ近年の発生が予測されているものを想定し、BCPに活かすのも有効です。
2019年8月現在、内閣府の「国での災害被害想定」のページを参照すると、首都直下型、東海地震、東南海地震、日本海溝の各地震、利根川の大規模水害が災害被害として想定されています。
当然時間の経過や環境の変化などによって、国で想定される災害は異なってきます。
こまめに内閣府や気象庁のサイトをチェックしておき、最新情報を得ておくことが国での災害を想定し、BCPに活かす近道になります。
地域での災害
島国である日本は、地域ごとに風土や環境が異なります。
そのため、それぞれの地域ごとで発生する可能性のある災害も異なってくるのが特徴です。
国全体で起きるであろう災害被害想定だけでなく、企業の本社や支社、関連施設のある地域ごとに発生する可能性のある災害を把握し、その災害を想定したBCPを策定しておくのも、重要なポイントになります。
地域ごとの災害想定も、同じく内閣府の「地域での災害被害想定」ページにて公開されています。
地域での災害も季節や時期によって想定内容は異なってくるので、BCPの策定や改善時こまめにチェックして取り入れるようにしましょう。
参考:内閣府防災情報のページ 事業継続 地域での災害被害想定
災害想定によるBCP策定の手順
BCPは事業の停止を防ぐ、または事業が停止してもできるだけ早い復旧を目指すためにあらかじめ立てておくのが前提です。
事業停止のリスクは多々ありますが、災害はどの企業にも突然起きる可能性が高くなっています。
防災への取り組みは行っているけれどもBCPにまでまだ手が回っていない、という企業も含めて、まずは災害想定のBCP策定をしておくと良いでしょう。
災害を想定したBCP策定の手順は以下の通りです。
- 基本指針や目標を決める
- 災害による被害想定をする
- 危機対策本部などの組織運営や担当者を決める
- 優先させる業務を決める
- 従業員などの招集体制を決める
- 事前の対策と課題を整理
それぞれの手順を順に解説していきます。
災害想定のBCP策定手順その1:基本指針や目的を決める
基本指針やBCPの目的をまずは決めます。
災害想定の場合も含めて、基本指針や目的は今後のほかのBCPを策定するうえでも共通する事項も多いため、最初にまとめておくとBCP策定の根本作りとして役立ちます。
基本指針やBCPの目的の例として、以下のようなものがあります。
- 災害発生時に従業員や関係者の命を守る
- 企業や従業員、関係者の財産を守る
- 事業のできるだけ早い復旧を目指す など
さらに、基本指針やBCPの目標は優先順位をつけます。
上の例に挙げると、従業員や関係者の命を守るのが第一優先、その後の優先順位として事業を継続する、今後の事業予定を滞りなく進める、事業環境を即急に復旧させる…というようにです。
優先順位をつけることで、災害が発生したときにも優先すべき事項が整理されるため、冷静かつ適切な行動につなげられます。
災害想定のBCP策定手順その2:災害による被害想定をする
災害に対するBCP策定には、災害による被害想定が不可欠となります。
被害想定のポイントは、発生する災害の種類、発生する時刻などによって異なりますので、まずは一番発生する可能性の高い状況における被害想定を行いましょう。
災害の種類は、前述の国の災害想定や地域の災害想定を踏まえて、一番発生確率の高いものを選んで策定します。
また、時刻は昼間など業務中をまずは設定、その後複数の災害想定をするうえで、朝や夕方などの通勤時間帯なども想定状況に含んでいくようにすると、スムーズな被害想定ができます。
被害想定は、人的被害、建物被害、公共機関やライフラインの停止による被害に加えて、帰宅困難者への対応についても盛り込むようにします。
また、企業や施設が指定避難所になっているなど地域住民の受け入れを行っている場合は、同じく対応や組織について盛り込むようにしましょう。
災害想定のBCP策定手順その3:危機対策本部などの組織運営や担当者を決める
実際に災害が発生した場合、BCPは企業全体で行う取り組みです。
けれども、BCPそのものは全体で行うものの、危機対策本部などの組織運営や担当者などは同じく企業の災害対策として行われている、防災と同じく設定する必要があります。
初めてBCPを策定するときには、細かい組織や担当者を決めようとするととん挫する可能性があります。
まずは必要最低限の組織と担当者を決めるようにしましょう。
災害想定のBCP策定手順その4:優先させる業務を決める
企業や事業所によっては、複数の業務を展開している場合があります。
BCPでは、事業を停止させないために、優先させる業務を決めなければいけません。
単一事業の企業や事業所はその事業を選べば問題ありませんが、複数の業務を展開している場合、事業停止を避けるために中核となっている事業を優先させるのが重要になります。
災害想定のBCP策定手順その5:従業員などの招集体制を決める
災害発生~その後事業の継続のためには、業務に従業員や関係者などの人力が必須となります。
ところが、災害発生から少し経っても公共交通機関がストップしていたり、従業員や関係者の安全が確保できなかったりすることもあります。
よって、安全の確保を優先しつつ、災害発生後の従業員などの収集体制を決めましょう。
収集については、従業員の所属や役職のほか、企業のオフィスや施設への距離、通勤手段なども考慮するポイントになります。
例えば、普段電車で通勤している従業員でも、隣の県からの場合と、一駅間の場合もあります。
まずは安全の確保を最優先して来られない場合は自宅待機、来られる場合は安全を確保しつつ、徒歩や自転車など何の手段で収集するかを決めましょう。
自宅待機の場合も、あらかじめリモートツールやチャットツールなどを導入しておく、システムなどをクラウド化しておくなどしてテレワークができる体制を作っておくと、自宅にいながら業務を進められるため、事業継続に効果的につなげられます。
災害想定のBCP策定手順その6:事前の対策と課題を整理する
最後に災害想定で策定したBCPの事前の対策と課題を洗い出し、整理します。
まずは災害を想定したBCPを実行する場合に不足しているもの、改善点を書き出します。
例えば、災害想定によるBCPでは、基本方針や目的として第一優先するのは「従業員と関係者の命を守ること」と決めることも多いです。
従業員や関係者の命を守るために、企業内で備蓄が不足していないか、安否確認はどのように行うかなどもチェックしBCPを策定しますが、中で備蓄が不足している、安否確認のための具体的なツールがないなどの問題点に気づいた場合は、その改善に乗り出します。
BCPは、ただ策定するのではなく訓練や協議を行って改善していくのが重要です。
策定と改善のサイクルを繰り返すことで、よりリスクに強いBCP作りにつながっていいます。
災害想定のBCP策定で災害に強い企業になろう
BCP策定のなかでも、災害想定のBCPを作るうえで覚えておきたいポイントと手順を紹介しました。
災害想定のBCPは、災害大国である日本の企業としては、やっておくべき施策と言えます。
今まで防災への取り組みを行っていた企業は多いですが、BCPの策定まではなかなか手が回らない、という企業も多いでしょう。
まずは、災害を想定したBCPを策定しておくことで、今後どの企業にも起こる可能性の高いリスクである、災害への備えにつながります。
さらに、災害想定のBCP策定をきっかけに、災害だけでなく事故やサイバーテロなどほかのリスクにも強い企業作りにつなげられるでしょう。