最終更新日:2022/09/03 (公開日:2019/08/02)
BCPと防災が鍵!企業が考える災害対策とは
近年、首都直下型地震や南海トラフ大地震などの震災が予測されています。
さらに、台風や豪雨など季節や気象条件に応じた災害もいつ起きるか分かりません。
個人として、災害に対する備えを行っておくことは大切ですが、企業や事業者として、従業員や会社を災害から守るための対策を行っておくことも必要です。
そこで今回は、企業が考える災害対策方法として「BCP」と「防災」について解説します。
企業として災害対策をどのように行っておくべきか悩んでいる人も、ぜひ参考にしてください。
企業が行う災害対策は「BCP」と「防災」の2つ
いつ起きるか分からない災害に対して、個人や家庭で備蓄をしたり、非常持ち出し袋を用意したりといった取り組みを行う人も増えてきました。
これと同じく、企業としても災害から企業、従業員を守るために災害対策を行っておかなければいけません。
企業が行う災害対策は大きく分けて事業継続の観点から行う「BCP」と従業員や顧客の命を守るために行う「防災」があります。
さらに、BCPと防災両方を合わせた企業として行う災害対策として「企業防災」と呼ばれています。
企業が行うべき、「BCP」と「防災」それぞれの災害対策についてい見てみましょう。
企業の行う災害対策「BCP」とは
BCPとは、「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」を指します。
災害が発生すると、事業所や工場などの被災、さらに従業員の負傷など事業を停止せざるを得ない状況になってしまうことも多いです。
このように、災害発生時にもできるだけ事業を停止しなくても済むように、または事業を停止してしまった場合でもただちに復旧するための施策や計画を、あらかじめ立てておいて対策をしておくことが「BCP」です。
BCPは災害対策としてはもちろん、企業の事業を停止せざるを得ない要因(テロやパンデミック、製品のリコール、大事故など)を含めたすべてへの対策方法を指します。
企業の行う災害対策「防災」とは
災害が発生する前に、企業として従業員や顧客などの個人の命を守るために行っておく取り組みが「防災」です。
防災に対しては、企業だけでなく家庭や個人、団体や施設などでも行われています。企業の防災への取り組みとは、根本は家庭や個人で行っている災害への対策方法であることは変わりません。
また、近年では「災害発生自体を防ぎきれない」大規模な災害も発生するようになりました。
災害発生時に、完全に防ぎきる防災とともに災害をある意味受け入れ、発生した時に被害を最小限に食い止める「減災」の取り組みも同時に行われています。
企業が行う減災も、防災の取り組みの一環と言って良いでしょう。
企業が災害対策として「BCP」でしておくべきこと
企業が災害対策としての「BCP」策定で、やっておくべきことは以下の通りです。
- 企業や事業の規模、内容に応じたBCPでやるべきことをまとめる
- BCPを策定する
- サイクルに従って継続的改善を行う
企業や事業の規模、内容に応じたBCPでやるべきことをまとめる
日本には大企業から中小企業、事業主といろいろな事業所の規模があります。
さらに、製造業、小売業、建設業と事業の内容も企業や事業書によってさまざまです。
企業の規模や事業内容に合わせて、BCPでやるべきことも企業や事業所ごとに異なってきます。
そのため、まずは災害などが発生したときに「事業を停止させない・継続させる」ために必要なものは何かを、具体的に考えましょう。
データなどのバックアップシステム、災害発生時のオフィスや工場などの確保、従業員を始めとした要員の確保など、取り組んでおくべきことは企業や事業所によって異なります。
また、近年BCPとは企業が災害を始めとした危機管理施策として取り組んでおくべき、という意見も多くなってきましたが、BCPの策定自体が法律で義務化されているわけではありません。
防災と同じく、企業としてBCPで取り組むべき範囲や内容が明確化されているわけでもないため、まずは事業内容や企業の規模に応じて、できる範囲で策定しておいても構いません。
資金面やノウハウ不足などで企業としてBCP策定ができない場合でも、一定の範囲だけでの対策でも問題ないのです。
BCPは策定するだけでなく、マニュアル保全や訓練教育、是正と改善を繰り返していくのが重要です。
徐々に企業としてBCPをより良いものへ昇華していくことが前提、と覚えておきましょう。
BCPを策定する
流れに沿って実際にBCPを策定していきます。
具体的な流れは以下の通りです。
- 事業者や経営者側が方針を策定する
- 策定した計画(BCP)に沿ってマニュアルの作成、組織の運用や実践を行う
- 従業員に対して必要な訓練や教育を行う
以上の流れからも分かる通り、BCPはBCPの担当者が中心となって取り組むのではなく、従業員や関係者も含めて、企業全体で取り組む計画です。
経営者や事業者側が策定した方針を元に、マニュアル作成や保全、組織の運用をしたうえで、従業員に対してはBCPを元にした訓練や教育を随時行い、改善点を模索していきます。
サイクルに従って継続的改善を行う
BCPはただ策定し、一回実践するだけでは不十分です。
繰り返しの運用や訓練の実践を経て、改善点や対応状況の保守点検、是正を都度必ず行っていくことで、徐々に災害を始めとした危機管理に強い企業として成長していけます。
必要に応じて経営者側や事業者側がBCPの見直しを行い、また方針を再策定し…のサイクルで行い、継続的に改善を行いつつBCPは運用していくことになります。
企業が災害対策として「防災」でしておくべきこと
企業が災害対策として行う、防災や減災の取り組みは以下の通りです。
- 生命の安全確保への対策
- 二次被害の防止
- 地域との共生
生命の安全確保への対策
防災の一番の目的とは、災害を未然に防ぐ、または災害発生時に最小限の死傷者におさえることです。
これは、企業も個人や家庭で行う防災の目的と変わりません。
災害発生時、BCPにおける優先順位は「事業の継続」が一番ですが、防災は「人命救助」が最優先です。
よって、企業としては従業員や顧客などの安全確保のための防災の取り組みを行います。
普段から防災訓練を行う、災害発生時にどのような行動をすべきかのマニュアルを策定しておく、また防災に関する担当者と運営組織を決めておくなど、命を優先とした計画や取り組みを行い、企業として災害に備えておきましょう。
二次被害の防止
二次被害を防ぐための防災、そして減災への取り組みも企業防災の一環になります。
災害発生時、企業として適切な指示や行動ができるように備えておきましょう。
- 災害それぞれに対する適切な行動を行う
- 帰宅困難者への適切な指示を出す
- 業務の停止と再開について
災害それぞれに対する適切な行動を行う
「BCP」は災害も含めて事業が停止する可能性の高い要因に対しての施策を行います。
一方で「防災」は災害に特化した企業としての対策方法であり、災害の種類によって対応方法が異なります。
災害は地震や台風、豪雨といった自然災害から火災などの人的災害まで多くあります。
それぞれの災害に対する適切な行動を従業員への周知徹底が必要です。
例えば、地震が発生したときは「頭を守って机の下に隠れる」などが適切な行動です。
台風や豪雨などのある程度予測できる災害の場合は、必要に応じて従業員に自宅待機指示を出すといったことも企業としての防災の取り組みになります。
帰宅困難者への適切な指示を出す
災害発生時は公共交通機関もストップしてしまうため、従業員の中でも帰宅困難者は多数出ることになります。
帰宅困難者になる従業員の中でも、徒歩で帰宅できる従業員、徒歩での帰宅が困難な従業員に分かれることになるでしょう。
徒歩で帰宅できる従業員に対しては、正確な情報を徹底したうえで安全確保を行い、必要に応じて帰宅指示を出します。
また、帰宅困難になった従業員の中で徒歩での帰宅が困難、または危険と判断し社内に残った方が安全な場合は、オフィスに在留させるための判断などが必要になります。
そのための帰宅支援セットの配布や、残留者のための社内備蓄を行うなども企業としての防災対策のひとつです。
業務の停止と再開について
防災の取り組みの中で、BCPと共通することもあります。
そのひとつが、災害発生後の業務停止と再開についてです。
災害発生後は、二次被害を防ぐために危険と判断したら従業員は出勤せず、自宅待機を命じることもあるでしょう。
従業員が出勤しないことで業務停止となる場合がありますが、そのときにもあらかじめ「クラウドシステムを作っておいてどこでもアクセスできるようにする」などの対策を行っておけば、自宅でもある程度の業務が継続できるようになります。
このように、取り組みの中には防災とBCP両方を充足できるものもあるのです。
防災の取り組みとしては、災害の状況を判断し自宅待機や業務停止、再開の指示も適切に行います。
地域との共生
企業における防災の取り組みは、従業員や顧客の生命の安全確保だけでなく、社会に参加している一企業としての責任を果たすことも重要です。
地域全体で大規模な災害が起きた場合には、企業として地域と共助のための行動や取り組みを行いましょう。
ど例えば、必要に応じて備蓄品の配布、一次避難所としてのオフィスの開放、給水施設やトイレ施設として開放するなどが該当します。
企業としてBCPと防災を災害対策として行っておこう
企業における災害対策は、BCPと防災があります。
特に防災に関してはほとんどの企業が何かしらの取り組みを行っていることが多いですが、BCPについては対策ができていない、という企業も少なくありません。
BCPと防災両方の特徴ややるべきことを把握しておき、企業としての災害対策を行っておくことも、社会責任を果たす上で重要です。