最終更新日:2022/09/03 (公開日:2020/02/05)
市民参加が鍵!防災ガールが選ぶ 「津波防災対策」自治体ランキング
来たる9月1日は「防災の日」。私たち防災ガールは地震や火災をはじめ様々な自然災害について学び発信してきましたが、今回は昨年からスタートした津波防災のプロジェクト#beORANGEにちなんで全国沿岸部139市町村の津波防災対策を調べ一定の評価基準を作りランキング化させました!
津波防災対策ランキングを作ることになったワケ
私たちは2年間をかけて様々な沿岸部の市町村を回らせていただき、全地域の「地域防災計画」を読ませていただきました。(直接話を聞いたり、お電話させていただいた地域の方はありがとうございました!)
意識高く使命感を持って働かれている行政担当者は他地域と情報共有されて行動に移されていますが、「他者比較するすべを知らず、どこまで対策したらいいかわからない」という暗闇の中を走っているような状態が続いているところもあるという課題をヒアリングを通して知りました。
そこで、全国の津波が想定されている地域を対象として、同じ基準で見たときにそれぞれがどのように評価できるかまとめることで、想定されている津波に対して自分が暮らす市町村がどんな対策をしているのか知ってもよし、引っ越す時の判断基準にしてもよし、行政担当者は自分の地域を改善するための情報源にしてもいいとおもっています。
津波防災対策 自治体ランキングTOP10発表!
栄えある初年度第一位を獲得したのは「神奈川県葉山町」です!おめでとうございます!
続いて第二位から千葉県鋸南町、宮崎県日向市、静岡県浜松市、高知県安芸市、徳島県松茂町、千葉県南房総市、神奈川県横須賀市、神奈川県鎌倉市、神奈川県藤沢市となりました。おめでとうございます!
ダントツ1位の葉山町!市民参加が積極的な地域が上位をせめぎ合い
津波防災に関してはハード面の対策は各地域で実施されていますが、市民を巻き込んだ「ソフト面対策」を手厚く実践している地域はまだまだ少ないのが現状。独自の対策方法を生み出し、市民活動の支援をしていたり、メディアを巻き込んだりと創意工夫している地域が上位にランクインしているようです。
気になる他の自治体の得点は?
この調査では、南海トラフ地震で被災が想定されている139市町村の地域防災計画と津波避難計画をもとに、<インターネット上で閲覧・ダウンロードが可能か>といった利便性や、<具体的な施策への言及がなされているか>といった実効性などを調査(1次審査)。
さらに、その内の上位10自治体に対して、住民を巻き込んだ施策が講じられているかという、住民参加の視点に基づく採点を実施し(2次審査)、合計24の指標を用いて総合的に分析しました。
1次審査の得点分布とランキングはこちらです!
◆1次審査 各自治体得点分布
※不明はHP等に地域防災計画の掲載なしもしくは検索できず
70点以上の自治体はそれぞれ基本的な対策や計画はされていますが、地域にあった対策やそれぞれがより注意すべき点を工夫し対策して行くことでより点数を伸ばせそう。しかし60点以下となってしまった地域はこれから来る災害に向けて今一度見直すべきところがあるかもしれません。
◆1次審査 トップ45市町村一覧
さらに上位45位にまで入った自治体はやはり巨大津波が想定されている地域、またはサーフスポットであったり、漁業の盛んな「海」と共に生活が成り立つ住民の多い場所。自治体だけに任せることなく市民も、協働していくことがこれからは必要になってくると思います。
私たちの津波対策ランキング採点基準はこちら!
津波防災ソフト面対策 自治体ランキングをつくるにあたる採点基準、採点方法は以下の方法を使いました!
□ 評価対象は、対象自治体の地域防災計画(以下「防災計画」)及び津波避難計画のみ
□ 2段階評価を採用。1段階目は、津波防災のソフト面対策につき、オープン化・多重化が図られているか否かを独自の採点基準により評価。2段階目は、1段階目の採点結果上位10自治体のみを対象に、ソフト面対策における住民の関わり方を、シェリー・アーンスタイン(アメリカの社会学者)による「住民参加の階段」(Step of Citizen Participation)を参考に、6段階評価で採点。
□ 最終的なランキングを決する総合点は、(1段階目の点数×1/2+2段階目の点数)の合計点により算出。
□ 1段階目及び2段階目の採点基準及び配点の内訳は以下のとおり。
具体的な採点基準と配点
基礎点 計30点(部分点なし)
① 防災計画が作成済みである 15点
② 防災計画の直近のアップデートが、平成24年4月以降[1]である 5点
③ 防災計画がインターネット上で閲覧・ダウンロード可能である 10点
加算点(評価対象:地域防災計画に加え、各自治体の津波避難計画) 70点
① 検索容易性(計10点)
・ファイルが分割して掲載されている(5点・部分点なし)
・目次が分割して掲載されている(5点・部分点なし)
② ソフト面対策の充実度(計35点)
・津波避難ビル・タワーへの避難の実効性を担保する具体的な施策への言及がなされている(5点)
・コミュニティ形成に関する施策への言及がなされている(5点・部分点なし)
・ソフト面対策の普及啓発の実効性に関して、具体的な施策への言及がなされている(10点・部分点なし)
・その他、ソフト面対策の具体的な施策への言及がなされている(1施策3点で15点満点)
③ 観光客と外国人への対応想定の有無(計15点)
・対応の必要性への言及がなされている(5点・部分点なし)
・具体的な施策への言及がなされている(1施策2点で10点満点)
④ 地域に根ざした津波避難計画の有無(計10点)
・津波避難計画がインターネット上で閲覧・ダウンロード可能である(5点・部分点なし)
・地形や文化的背景、地域柄などを踏まえた計画が策定されている(2点・部分点なし)
・その他、計画の実効性を担保する具体的な施策への言及がなされている(1施策1点で3点満点)
[1] 災害対策基本法改正(平成24年6月27日)のタイミングを基準とすることも考えられたが、あくまで基礎点の評価においては、平成23年3月から平成24年3月の間に策定又はアップデートされたものが東日本大震災の知見が十分に反映されていない可能性があることを踏まえつつ、震災から約1年後を基準とした。
津波防災”ソフト面対策”が重要なワケ
日本の津波防災の課題
東日本大震災以降、日本全国で「防災」への注目度は高まり、特に、津波防災については、東北地方の太平洋沿岸を襲った津波によって多くの尊い人命が失われたことを受け、「津波対策の推進に関する法律」が制定されるなど、その重要性が叫ばれています。
ハード面とソフト面の両面からの津波防災対策の整備が推進されているものの、特に住民参画や防災計画の利活用などソフト面での対策については、手法が多岐にわたっており、しかもその成果が測りづらいため、ハード面の対策に比べて計画や実行の優先順位を上げにくいことが、多くの自治体で課題となっています。
極めて大きな被害が想定されている南海トラフ地震をはじめ、私たちは、多くの命を奪いかねない津波という危機が常にすぐそばにあるなかで、国や各自治体の施策だけに頼るのではなく、防災に対して主体的に参加し、優れた取り組みに賛同していくこと、官民がそれぞれの強みを活かしあい、協力していく体制の必要性はますます高まっていると考えています。
これまでの津波防災を変える「# beORANGE」という取組
私たち一般社団法人防災ガールは、日本財団との共催で、2016年から津波防災の新しい合図「オレンジフラッグ」を普及啓発するプロジェクト#beORANGE(ハッシュビーオレンジ)を進めています。
「オレンジフラッグ」は、津波の危険性がある際に海辺や沖に出ている人に避難を促します。津波避難は1分1秒を争いますが、海辺ではサイレンの音が聞こえにくく、また危険を認知しても避難先がわからず、迅速に行動するのが難しいという課題があります。そこで避難を加速化させるためのオレンジフラッグの普及が望まれています。
#beORANGEでは、昨年度全国73市町村、165本のオレンジフラッグを設置。今年は宮崎県を中心にオレンジフラッグの設置/普及/啓発を実施しています。
<オレンジフラッグの意味> 1.陸でオレンジフラッグを振る人が見えたら「津波が来たぞ、早く上がれ」 2.高台や津波避難ビルにオレンジフラッグが掲げられているのが見えたら「ここが安全だ早く登れ」
#beORANGE サミット2017を開催します
2017年10月20日には全国沿岸部139市町村の防災担当の方々や防災に携わる方が集まり、津波防災ソフト面対策に関して情報交換し学ぶ「#beORANGE サミット2017」を開催。
11月5日の津波防災の日を目前とし、全国の防災に携わる人でチームとなって課題解決していくための第一歩とすべく企画しました。
参加を希望される方は以下メールアドレスまでご連絡いただければと思います。
※優先的に行政担当者の席を確保いたします。応募多数の場合は抽選となります。
◆お問い合わせ先
#beORANGE運営事務局 info@beorange.jp