2019.07.17

英語版を始めとした外国人への防災・減災の取り組み紹介

written by morino

近年、日本へ観光や労働を目的に多くの外国人が流入するようになりました。

訪日外国人の増加は観光特需や労働力不足の解消など、日本経済への良い影響もある一方、外国人と日本人との間にある文化や考え方の相違が悪影響となってしまうこともあります。

そのひとつが、「災害に対する考え方や発生時の行動」です。

災害大国である日本に住む日本人と、災害が発生することがまれな外国人との間では、防災や減災に対する意識が全く違います。

今後も日本国内の外国人は増加することが予測されているため、防災・減災への取り組みも外国人ありきのものを行う必要があるでしょう。

これを受けて、外国人向けの英語を始めとした防災や減災に関する取り組みも増えてきました。

そこで今回は、英語版のパンフレットなどを始めとした外国人への防災・減災への取り組みの必要性と、事例を紹介します。

身の回りに外国人の方がいて、防災や減災に関することを英語で伝えたいときにもぜひ参考にしてください。

防災・減災への取り組みを英語で行う重要性

防災・減災への取り組みを、英語を始めとした外国語を含んで行われることも多くなりました。
なぜ防災・減災への外国人への取り組みが重要なのかは、以下の3つの理由があります。

  • 今後も外国人の国内流入が増加するから
  • 定住する外国人が増加したから
  • 災害に対する認識や文化の違いがあるから

今後も外国人の国内流入が増加するから

近年、日本の施設や文化財がユネスコ世界文化遺産に、名所が自然遺産に続々と登録されています。
さらに、和食もユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本が観光国として人気が高まってきています。

元々日本で外国人からの観光人気の高いものといえば京都や奈良などの古都、浅草の雷門など日本らしいものでした。

その一方で、インターネットの普及を受けて、日本のアニメや漫画、アイドルなどのサブカルチャーに代表する、ソフト面での情報が海外にも多く配信されるようにもなったのです。

これに加えて、中国やベトナムなどの日本近隣諸国の経済成長が著しい影響を受けて、アジア近隣諸国からの日本への観光需要が高くなっているのも手伝い、日本を訪れる外国人観光客は年々増加しています。

日本政府観光局の統計によると2019年3月の訪日外国人数は276万人。
前年度の3月の260万人を約16万人、5%上回って3月度としては過去最高を記録しています。

参考:日本政府観光局

ところが観光など、日本に短期間滞在する外国人の場合は災害発生時に情報が入りづらく、災害弱者になりやすい傾向にあります。

特に外国人の中には、「簡単な日本語は理解できても、複雑な日本語は理解できない」「日本語はある程度話せるが、読み書きができない」という場合が多いです。

これは、英語はアルファベット、中国語は漢字のように単一表記なのに対して、日本語の表記がひらがな、カタカナ、漢字と複数あって複雑なのもひとつの要因でしょう。

これらの理由から、今後さらに増加する外国人観光客のために、英語を始めとした言語を使った防災や減災の取り組みが必要となるのです。

定住する外国人が増加したから

観光需要だけでなく、労働力として日本に定住する外国人も増加しています。

少子高齢化の影響を受けて、日本では労働力が不足し、特に建設や介護、農業などの面で外国人労働者に頼らざるをえない現状もあります。

総務省発表の2019年1月1日時点の人口動態調査では、日本人の人口は1億2477万6364人と前年から43万3239人減。
一方で外国人は16万9543人増えて過去最多の266万7199人となっています。

参考:総務省 2019年1月1日時点の人口動態調査

日本の労働力不足を補うために、外国人の在留労働者の割合も増加傾向にあるのに加えて、近年自国に技術を持ちかえるために、近隣アジア諸国からの技能実習のために日本を訪れる人も多くなりました。

今後も日本国内に定住し、働く外国人労働者は増加するでしょう。
そして日本に定住する外国人の場合、災害に合うと自宅や職場で生活できなくなる場合もあります。

よって、仕事や技術研修などで日本に定住している外国人に対して、日本人と同じように英語を使うなどして防災や減災の取り組みを行っていく必要があるのです。

災害に対する認識や文化の違いがあるから

日本に長く住んでいる外国人も多いですが、災害に対する認識や考え方は根本から異なる場合が多いです。
これは、日本人は災害が多発する環境に生まれながら住んでいるということも影響しています。

例えば、日本人なら震度2~3程度の地震が起きてもあわてることはありませんが、外国人の場合、「地震慣れ」していないためにパニックになるなどの可能性もあります。

そもそも「防災」の目的は災害発生自体を防ぐために前もって備えること、「減災」は防ぎきれない災害発生時、被害を最小限に食い止める目的のために準備することです。

「災害が発生する前に備える」「発生ありきで二次被害が出ないように準備しておく」という考え方も、災害と隣り合わせの土壌に住む日本人ならではの考え方と言えるでしょう。

一方で、外国人は防災や減災という考え方を持っていない場合も少なくありません。
災害発生時には適切に対応できない外国人が多くなってしまいますが、その分だけ二次被害が出る可能性も高くなります。

以上から英語による案内など、外国人への防災や減災の取り組みを行い、災害への理解を深めてもらうことも、二次被害を防ぐことにつながり、ひとつの防災や減災と言えるでしょう

覚えておきたい、外国人のための英語などを使った防災・減災の取り組み

今後外国人がより増加することを受けて、外国人にも防災・減災に対する意識を持ってもらうことが重要と分かりました。
外国人のために取り入れたい、英語などを使った防災・減災の取り組みを紹介します。

防災標識やマニュアルなどの英語を始めとした多言語化

非常口、指定避難所など、防災に関する施設や設備を表示した「防災標識」があります。
防災標識にはイラストや記号が付属していますが、そもそもの標識の意味が分からないと迅速な避難ができません。

さらにイラストや記号の意味が分からなくても、下に書いてある日本語を読めば理解はできますが、外国人の場合は日本語が読めないことも多いのです。

これは標識だけでなく、防災や減災のマニュアルについても同様です。
さらに実際の災害発生時に外国人が正しい情報を手に入れるための、SNSや災害情報なども含まれます。

以上から、防災標識やマニュアル、災害情報などを英語を始めとした多言語化し、用意しておくのが重要です。

防災標識やマニュアルなどの英語を始めとした多言語化の事例

東京都防災ホームページで発行している、東京都民や東京都で働く人を対象にした防災ブックが「東京防災」です。

こちらは現在日本語版のほか英語版、中国語版、韓国語版がリリースされています。

参考:「東京防災」多言語対応

また世田谷区や目黒区など、地方自治体ごとで英語版など多言語対応をする場合も増加してきています。

実際の災害現場での対応のため「共助」の姿勢を作る

減災においては、災害発生時国や自治体からの支援である「公助」だけでなく、自分で自分の命を守る「自助」や周りの人と助け合う「共助」が必須となります。

災害時の適切な行動などを書いたマニュアルを用意しておくなど「防災」の対策をしていても、実際に発生した災害によってはマニュアルが全く役に立たないこともあります。

この場合に、被害を最小限に食い止めるための「減災」はより効果を発揮するでしょう。

減災の自助や共助を実践するために、あらかじめ周辺で働く・住んでいる外国人とコミュニケーションをとり、防災訓練などの取り組みを共に行っておくのが大切です。

自治会や町内会、企業や店舗などで、普段から自分たちの近所でどんな外国人が住んでいるか・働いているかなども把握しておきましょう。

実際の災害現場での対応のため「共助」の姿勢を作る事例

埼玉県では、県公式サイトで外国籍住民も参加できる市町村の防災訓練情報を公開しています。
漢字を使わない「やさしいにほんご」表記での案内も行っています。

参考:埼玉県 外国籍住民も参加できる市町村の防災訓練

災害に対する外国人のニーズを把握しておく

減災のためには、外国人が実際に災害発生時どのような行動をするのかを自治体や企業、団体側があらかじめ予測し、避難先での受け入れや誘導をスムーズにできるように取り組みをしておくのも重要になります。

また、避難先で宗教上のお祈りなど、外国人ならではのニーズが出る場合もあります。

避難先で支給される支援物資でも、特定の食材を口にできない場合もあるでしょう。
これも地域にどのような外国人がいるかをあらかじめ把握しておくのが大切です。

災害時の外国人ニーズを把握した取り組み事例

「一般財団法人 自治体国際化協会多文化共生部多文化共生課」では、1995年の阪神大震災発生時から「多文化共生における災害対応」を多く行ってきた実績があります。

宗教上アルコールがNGの場合、アルコールフリーの除菌シートを用意する、外国人避難者のために礼拝スペースを避難所に設ける、などの取り組みを行ってきました。

参考:一般財団法人 自治体国際化協会多文化共生部多文化共生課 災害時における外国人支援 

英語を始めとした多言語化が外国人への減災の取り組みにつながる

日本では、今後より多くの外国人の増加が見込まれます。

外国人の働く企業、外国人利用の多い店舗、住んでいる地域の自治団体など、外国人と災害発生時共助の関係となる場所や施設は多岐にわたります

国や自治体だけでなく、それぞれの施設や団体、場所ごとで外国人へ対する、英語を始めとした多言語化など積極的な防災や減災の取り組みを行うのがより重要といえるでしょう。

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