最終更新日:2023/03/20 (公開日:2018/09/07)
【福島県】自然災害の特徴と対策ポイント
地震、津波、台風、土砂災害…。「災害大国」ともいわれる日本列島では、いつどこで災害に遭遇してもおかしくありません。
福島県も、2011年の東日本大震災をはじめとする大きな自然災害に何度も見舞われてきました。
災害への備えは、地域ごとの地理的特徴と社会特性を知り、災害の種類ごとにどんな影響がおきるのかを正確に把握するところからスタートします。
ここでは、福島県における地震・津波災害、風水害、土砂災害の特徴を整理し、それぞれの災害についての対策のポイントを紹介します。
目次
福島県で想定される地震・津波災害
地震災害には、陸域の浅いところで活断層が活動することにより発生する直下型の地震と、海域のプレートが跳ね上がって発生する海溝型の地震とがあります。
福島県に影響する直下型地震と海溝型地震について、発生のしやすさと起こりうる被害想定についてみていきましょう。
福島県における直下型地震
福島県における直下型地震では、福島盆地西縁断層帯地震が、人口や産業の集中が進む市街地のある福島盆地の西縁部直下で発生し、社会経済活動全体に大きな影響を与える地震とされています。
そのほかにも、福島県内には、会津盆地西縁断層帯地震や双葉断層地震など、多くの断層帯があり、県内のいつどこで地震がきてもおかしくありません。
福島盆地西縁断層帯地震における震度分布(揺れやすさ)予測
福島県でもっとも大きな影響をあたえる福島盆地西縁断層帯地震の揺れやすさを表す震度分布図は以下のとおりです。
福島盆地西縁断層帯地震における液状化予測
大きな揺れにより地盤が液状化を起こすと、水道管やガス管などの地中のパイプが破損する被害が発生します。
下の図は、福島盆地西縁断層帯地震発生時の福島県内での液状化の起こりやすさを表した液状化危険度分布図です。沿岸部や山間部で危険度が高くなっています。
福島盆地西縁断層帯地震における建物倒壊、地震火災被害予測
直下型の地震は比較的浅いところで発生するため、マグニチュードは小さめでも大きな揺れになり、建物倒壊などの危険も大きくなります。
福島盆地西縁断層帯地震では、福島市などを中心に、木造大破棟11,000棟強、非木造倒壊棟約500棟にのぼると想定されています。
また、崩れた建物から出火し、広範囲で大規模な火災が起きる可能性があります。最大で100箇所近くの出火、1600棟を超える焼失が予測されています。
福島盆地西縁断層帯地震における人的被害予測
建物の倒壊や火災、斜面崩壊などにより、おおぜいの死者や負傷者が発生します。
福島盆地西縁断層帯地震では、福島市を中心に、死者数が最大で840名、負傷者が4300人以上発生すると予測されています。
また、被災により避難所での生活を余儀なくされる人は約5万人を超えるとされています。
福島盆地西縁断層帯地震におけるインフラ被害予測
大きな揺れにより、地中に埋められた管渠が損傷し、上下水道、電力、通信、都市ガスなどのインフラ施設にも大きな被害が発生します。
また、高速道路などの道路被害、鉄道被害、港などの公共施設の被害も想定され、移動手段にも支障が出ます。
東北地方の流通・経済の生命線である東北新幹線・東北自動車道が地震により寸断された場合、福島県だけでなく東北地方全体の機能停止に結び付く危険性もあります。
市民生活への影響がもっとも大きくなるのは福島盆地西縁断層帯地震で、以下のような大規模なライフライン停止が予測されています。
l 停電など:約9,500件
l 断水:約12万件
l 情報通信:約9,300回線
その他、交通混雑が激しい平日朝夕の時間帯に地震が発生した場合などは、市街地では通勤・通学者を中心とする死傷者の発生規模がさらに拡大したり、エレベーター停止による閉じ込め被害が発生したりすることも想定されます。
福島県における海溝型地震
福島県における海溝型地震としては、日本海溝沿いの地震として、福島県沖地震がもっとも大きな影響を与える地震と想定されています。
福島県沖地震は、今後30年間に発生する確率が50%程度と高くなっています。
また、福島県近辺の宮城県沖のプレート間地震や茨城県沖の地震も、発生確率が80%から90%程度と非常に高く、発生した場合福島県にも大きな影響を与えると想定されます。
海溝型地震は100年から200年ほどの短い周期で何度も発生するため、一度発生したから大丈夫というものではなく、注意が必要です。
福島県沖の地震では、2016年11月22日に福島県の中通り、浜通りなどで震度5弱を観測する地震が発生しました。津波も観測され、青森県から千葉県までの6県で最大51万人に避難指示や避難勧告が出されました。
今後も同様に、津波を伴う大規模な地震が発生することが想定されます。
福島県沖地震における震度分布(揺れやすさ)予測
福島県沖地震が発生すると、沿岸部を中心に最大で震度6弱の揺れに見舞われると予測されています。
福島県沖地震における津波の予測
海溝型の地震でもっとも顕著となるのは津波による被害です。
福島県において津波の高さがもっとも大きいのは福島県沖地震で、地震発生後20~40分程度でいわき市沿岸部に第一波が到達し、最大で6.1mの高さとなって、岸保全施設前面の海浜、港湾、漁港の岸壁や護岸背後地への浸水可能性があるとされています。
津波はものすごい量の海水が壁のようになり、桁違いの圧力であらゆるものを一気に飲み込んで、まきこまれたガレキと一緒になってすべてを押し流します。2mの津波で木造家屋は完全に破壊されてしまうといわれています。
なお、福島第一原子力発電所・福島第二原子力発電所については、東日本大震災と同程度の津波高さに対応する仮設防波堤が設置されています。また、これを越える津波による被害が生じた場合にも備えて予備設備なども準備されています。仮に予備設備などを含めすべての冷却機能が失われ核燃料が高温となった場合には、放射性物質の放出等が想定されますが、発生確率はとても小さいと考えられます。
福島県沖地震における被害予測
海溝型地震では、直下型地震と比較すると激甚な被害は少ないものの、被害の範囲が広範にわたるという特徴があります。
福島県沖地震では、いわき市から南相馬市に至る沿岸部の広い範囲で、最大350名近くに及ぶ死者と1,600名を上回る負傷者が発生する被害が予測されています。
また、5,000棟にも及び建物の大破・倒壊被害が想定されています。
東日本大震災発生時の福島県の被害状況
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本海溝のプレートが広範囲に揺れる超巨大地震でした。
福島県内では、東日本大震災関連で4,088人の方が亡くなりました。このうち、地震などの直接被害ではなく、その後の避難生活での体調悪化や過労などの間接的原因で亡くなった「災害関連死」が2259人と半数を超えています。
また、家屋被害は全壊1万5,000棟以上、半壊8万棟以上と、甚大な被害となりました。
東日本大震災のような巨大な地震が今後また発生する確率は大きくないですが、津波を伴う海溝型地震は広域での影響を及ぼしやすいので、いつどんな規模の地震が発生するかわからないことを肝に銘じておきましょう。
福島県における台風などの風水害
福島県で気をつけなければならない災害は、地震だけではありません。過去には、台風や大雨による風水害も、大規模な被害が発生しています。
台風被害
台風は、7月から9月を中心に接近したり上陸したりするものが多く、福島県でも毎年のように台風の襲来に見舞われています。
台風が来ると、暴風や浸水、高潮や高波などで大きな被害が発生する場合があります。
例えば、東日本大震災が発生した2011年の9月に福島県を襲った台風15号では、巨大地震により緩んだ地盤のところへ総雨量300mm、最大3時間累計雨量が81mmを超える大雨が重なり、大きな被害をもたらしました。
集中豪雨、大雨被害
台風だけでなく、前線の活発化による集中豪雨の被害も多くなっています。
2011年の7月27日から30日にかけて新潟県と福島県で発生した「平成23年7月新潟・福島豪雨」では、県内の会津地方西部を中心に大きな被害が発生しました。
また2015年9月9日から11日にかけて大きな被害を出した「関東・東北豪雨」では、特定の箇所に降雨が集中する「線状降水帯」が次々と発生し、記録的な大雨となりました。
福島県における地震など土砂災害
毎年発生する自然災害の中で、死者や行方不明者が発生する割合がもっとも高いのは、実は土砂災害です。
阪神・淡路大震災と東日本大震災の特異ケースを除けば、自然災害による死者・行方不明者のうち4割を土砂災害が占めています。
土砂災害には、がけ崩れ、土石流、地すべりがあり、福島県でも、多くの土砂災害が発生し、被害が起きています。
福島県における防災対策のポイント
①地震・津波への備え
地震・津波は突然発生し、破壊力が非常に大きいため、何をおいても命を守るための対策をたてておくようにしましょう。代表的なのは揺れを抑える対策です。自治体によって耐震診断などに助成金を出している場合もあるので、問い合わせてみて積極的に活用しましょう。
l 耐震補強:壁や屋根、天井、照明器具など
l 家具や家電製品の固定、棚の中身の飛び出し対策、ガラス飛散防止対策
また、大規模な地震の場合はどんなに備えていても必ず被害が発生すると覚悟して、長期間の被災生活を想定した備えをしておくことも重要です。
l 停電対策:バッテリーや蓄電器、簡易発電機などの準備
l 断水対策:飲水や生活用水の確保
l 下水対策:下水道損傷に備えた簡易トイレの確保
l 備蓄対策:食料、生活必需品の備蓄
l 避難対策:津波や大規模火災時の避難場所、避難方法の確認、非常持出品の整理
特に沿岸部においては津波対策が重要です。津波からの避難は一刻を争います。ふだんから高台や津波避難タワーなど、津波から逃れるための場所を確認し、いざというときにすばやく逃げることができるよう、避難訓練にも参加しておきましょう。
②風水害への備え
風水害の場合は、気象庁からあらかじめ予報が出されるため、できるだけ早く正確な情報をつかんで、災害が発生する前に避難できるようにすることがもっとも重要なポイントとなります。
ふだんから気象関係のアプリやホームページにアクセスして、どんな情報がどこにあるか、どのくらいの状態になったら避難などの対応が必要かなど、気象情報を正しく読み取れるようになっておきましょう。
③土砂災害への備え
土砂災害は前触れなく発生します。大雨で地盤が緩んでいるときに起きやすいですが、はっきりとした兆候がみつけにくいことも多いため、崩れることに気づいてからでは助かりません。
土砂災害の場合は、土地の危険性についてあらかじめ知っておくことがもっとも重要なポイントになります。
土砂災害の危険性については、自治体が発表している土砂災害危険度情報(土砂災害ハザードマップなど)が参考になります。ホームページで公開されていますので、あらかじめ確認しておきましょう。
また、大雨のときには、気象庁と都道府県から土砂災害警戒情報や土砂災害に関する避難情報も発表されますので、該当する地域にいる場合はできるだけ早く避難してください。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html
まとめ
災害はいつどこで発生するかわかりませんが、むやみやたらと恐れて根拠のない都市伝説に引っかからないようにしましょう。
一人ひとりが災害に対する正しい知識を身につけ、「きちんと怖がる」ことが、災害と向き合う第一歩です。
「まさか自分が」とならないよう、良質な情報を集め、できることから備える行動を起こしましょう。