2020.02.01

災害食を通じて災害弱者を救う!後編|エコ・ライス新潟×阪大生

written by Minori Seko

~防災を学ぼう~大阪大学連載記事4本目!

現役阪大生の4人が、多くの人々の“命”を救う“災害食(非常食)”をテーマにエコ・ライス新潟豊永さんに取材をしてきました!

前編では、非常食から“災害食”という新しい考え方に変わりつつある現場のお話、災害食の開発秘話などを伺いました。

災害現場に自ら赴いて災害食を“届ける”活動をフリーランスで行うことにこだわるワケはなんなのか…前編に引き続き後編です!

 

(取材も中盤になると、だんだんと打ち解けた雰囲気に)

【フリーランスでの支援にこだわる理由とは…?】

吉本「災害時の支援というと、日本赤十字とかも思い浮かぶんですが、そういう機関と連携とかされているんですか?」

 

豊永「基本的に連携はしていなくて、フリーランスでやってるんです。それにはいくつか理由があるんですけど、ひとつとしては組織に所属すると組織のGOサインがでないと支援ができないんですよ。災害時の物資は要請主義だから、時間がかかって届くころにはもういらなくなっちゃってるんですよね。」

 

瀬古「災害時に迅速かつ臨機応変に行動するためにフリーランスである必要があるということですね。」

 

豊永「あとは(被災地には)透析患者は必ずいるんですよ、アレルギー患者も1歳未満だと6人にひとりは必ずいる。そういうところに空振りでもいいからとりあえず行くというのもひとつですね。変な言い方ですけど、一番ケアされないのはアレルギー患者なんです。透析患者のような内部障がいの方は、数日ごとに病院にいくので、(存在を)キャッチされやすいんです。でも、アレルギーの人の親御さんって、外面的にはわからないでしょ。病気と違って定期的に(病院に)行くとかもないし、すごく捕まえるのが難しいんですよ。

 

瀬古「たしかに、友人の間とかでアレルギー持ちって聞くことは多いけど、実際に見た目ではわからないですもんね」

 

豊永「若いお母さんとか、経済力とか政治力とか、力をもたないし。でもそういう人たちを支援したいんですよね、私たちは。私たちはフリーでやったほうが、こういったひとたちのところにピンポイントで手渡しして届けられる、確実に支援につながると考えているんです」

 

混乱時における災害弱者をとりまく環境は厳しい。
ただ単に食べるものを届けるだけではなく、食べてもらうためにはどうするのか。
配布方法の工夫や、梱包資材を2次活用できるように工夫を行うことで、避難者がより衛生的で快適に避難生活を送り、必要な人にきちんと災害食がとどくよう配慮されている。

 

豊永「東日本(大震災)のときもそうだったけど、みんな我慢強いから私だけ特別なものをくださいって言えないんですよ。でもそういういわゆる弱い立場の人がやっぱ助けてくださいっていえるためにはこういうケアをしなくちゃいけないんです。ただ単に食べるものがあればいいんじゃなくて、モノを食べてもらうためにどうするかっていうことを形にしたんです。」

 

災害時の支援に加え「みんなが食べられるもの」を日常から食べ回転備蓄していくことで、非常時にも要配慮者がつらい思いをしなくてすむという思いから日常生活におけるローリングストックの認知度をあげるために様々な活動を行っている。

 

アレルギー対応のライスクッキーは、災害食としての役割に加え誤配や誤食による事故を防ぎ子供たちがみんなで同じものを楽しんで食べることができるという利点も大きい。
公立保育園ではおやつとして提供されており、大手コーヒーチェーンや航空会社の機内食としても採用されているそうだ。

 

(アレルギー対応のライスクッキー。中越地震の教訓を伝える「おぢや震災ミュージアム そなえ館」)でも展示されている)

 

小学生が田んぼで育てたお米からアルファ米を作って、発展途上国に送ることで、災害食を身近に感じてもらうというように、教育面からも継続的に普及活動を行っているそうです。

 

【行政には頼れない備蓄、いまこそ備蓄を!】

阪大生「ここまでのお話に加えて、地域防災計画などを見ると行政の備蓄は、民間が備蓄をしている前提の計画になっているように思うのですが、やはり行政に頼るのではなく、一般市民も備蓄に対して関心をもつことが必要なのでしょうか?」

 

豊永「(災害時には)基本的に避難所に自分で災害食をもって逃げるというのが一番いいんですよね。行政は命と財産を守ることが第一義だから、基本的には自分でもって逃げるという自助が一番だね。まぁ、そういってもね、なかなか関心もってもらえないんだけどね(笑)」

 

大崎「私たちも、(今回伺って)はじめて知ることばかりで。備蓄をやらなきゃいけないとは思ってるんですけど…」

 

豊永特にアレルギーとか透析とか、食事制限があるような人はちゃんと備蓄しないとだめ。東日本(大震災)のときに、ある大手食品メーカーのアレルギー対応の工場が被災して、被災地だけじゃなくて、全国のアレルギー児をもつお母さんたちがパニックになったんだよね。」

 

妻鹿「被災地以外の、親御さんもパニックになったんですか?」

 

豊永「今まで、買っていたアレルギー対応食品の代わりに全部手作りしなくちゃいけなくなって。食品だけじゃなくて包装資材とか物流とかなにかが欠けると、もう作れない、届かない。だから大規模な災害があると、そういう物資ってすぐに尽きてしまうんですよ。」

 

瀬古「災害の当事者になったときのことしか、考えていなかったんですけど、当事者じゃなくても困ることがあるんですね。盲点でした。」

 

豊永「そうなんだよね。特に、見た目で分からない内部障がいの人は行政からのケアを受けにくい。だからそこ、それぞれが自分の身を守るために日ごろからみんなが食べられるものを食べたり、備蓄をしていくことは必要だし、社会的意義があると思うね」

 

一同「備蓄….本当に必要ですね」

 

豊永「これからインバウンドもどんどん増えてくるし、そういう意味でも日ごろからローリングストックをしておくことは大切だよね」

(みんなのごはん ハラールとアレルギーに対応している。6か国語で表記されており、各言語で解説した動画で調理法を見ることができるインバウンドにも対応した商品)

 

【災害食市場の拡大と弊害、どのように備蓄していけばよいのだろうか】

吉本「備蓄を実際に進めていくにあたって、いま災害食市場にあるものはかなりえりすぐられているものなんでしょうか?」

 

豊永「いろいろな食品とか調べてね、最近美味しいもの(災害食)とか出てきてるとおもうんですけど、東日本(大震災)を経て、(防災関連のものは)お金になるってわかっちゃって、かなり怪しいものもでてきてるんですよ。実際に10年たった後に劣化してないか調べるんだけど、おととしくらいから5年たったら腐ってるとか、油やたんぱく(質)が変敗しちゃっているとかですごい大問題になってるんです。 」

 

瀬古「え、そうなんですか!全然知らなかったです。」

 

豊永「社会的になぜそれが問題にならないかというと、行政で備蓄しているからなんですね(笑)行政は問題を起こしたくないからそれを捨てちゃうんですよ。それでいわゆる出入り禁止になっている業者とかもいっぱいあるんですね。お金儲けのことだけを考えてそういうことになると結局最終的に被災して、みんなで食べようっていうときに食べられないという形になってしまうんです。大手の食品メーカーはね品質管理はいやっていうほど厳しいんですけど、そうじゃないところでもうけることだけを考えているところはあぶないんですよね。だから、私たちは(品質に絶対の自信をもてる)お米しかやらないって決めてるんですよ」

 

瀬古「怪しいものとかもいろいろでてきているんですね。素人目にはなかなか見分けがつかないけれど、短いスパンで消費をしていくローリングストックだったら、劣化する前に食べられるし、リスクも回避できそうですね。」

 

吉本「今回、“災害食”と“ローリングストック”という概念を知って、従来の“備蓄”とは大きく考え方が変わってきていること、より日常生活+αの工夫で備蓄ができることわかりました。この考え方がもっと広がる一助になればと思います!」

 

豊永「いや、ほんとにね。こういう考え方を広めていったりとか、社会を変革させていくのは、みなさんみたいな学生さんだと思うのでね。頑張ってください。」

 

一同「災害支援に対する熱い想いとそれを実行する行動力に圧倒されました!素敵なお話ありがとうございました!」

【まとめ】

豊永さんのご協力により、進化をとげる“災害食”の姿を知り、これまで考えているようで考えていなかった“備蓄”について学ぶことができました。

15年前の中越地震での経験から、災害時に混乱の中で取りこぼされて十分なケアを受けられない弱者を支援するための食品開発を行い、災害時には必要とするひとのところまで届ける

なかなか弱者の声が届かない状況において豊永さんの活動により、命だけではなく精神的苦痛からも解放された被災者の方は大勢いたと思います。

「悲しい思いをする人が少しでも減るように、できることをしたい」と、災害時だけではなく、日常から要配慮者向けの災害食の認知度をあげるために規制や法令の壁と向き合いながら巧みな戦略の下で普及活動を行っていらっしゃいます。

ほんとうに困っている人を助けるためにできることはなにかという熱い想いをもち支援を行う中で、あがってくる課題一つ一つに真摯に向き合う
想いを実現しながらも事業として持続させるためのバランス感覚も持ち合わせ次の挑戦を続ける姿勢は、これから社会に出る身として見習うところばかりでした。

災害が増えつつある日本で、自分やまわりの大切なひとを守るためにできることはなにか改めて考えさせられました。
豊永さん、ありがとうございました!

【カップ麺からでも…ローリングストックを始めよう!】

(おぢや震災ミュージアムそなえ館の売店 多くの種類の災害食が販売されている)

備蓄の必要性を感じながらも、実際に食料を備蓄するという行動に移すのはなかなか難しいものです。

備蓄する食べ物はといえば、従来は、一般の食品より少し高価であまりおいしいとは言えないものというイメージでした。しかし、進化を続け美味しいものが増えているだけではなく、“備蓄”そのものの考え方が変わってきています

“災害食”が「常温で6か月以上の賞味期限がある」モノと定義されるように、日常で用いている食品でも備蓄ができるという時代になってきているのです。

またすでに備蓄をしている方も、どんな食品がどれくらいあるのかを定期的に確認したり、食べ方を知っておかなければ、いざというときに、賞味期限が切れて劣化していたり、食事がとれないということにもなりかねません。

普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していく。食品を一定量に保ちながら、消費と購入のスパンを繰り返すローリングストックは、備蓄品の鮮度を保つだけではなく、いざというときにも日常生活に近い食生活を送ることことを可能にする備蓄法でもあります。

アレルギー対応の食品が必要なお子さんをもつお父さん、お母さん。内部障がいがあり普段から、食事制限を行っている方はもちろんのこと、一人暮らしの学生や、インバウンドの多い都市部に住んでいる人……ありとあらゆる方が、自分なりの方法で、“自分の身を守る”ために今日からできる方法です。

まずは、お気に入りのカップ麺を少し多めに買っておく…なんてことからはじめてみませんか?