最終更新日:2022/09/02 (公開日:2020/02/01)
津波救命艇シェルターの技術、私、ここが好き|ミズノマリン×阪大生
〜防災を学ぼう〜大学生連載記事6本目!ついに今回で最終回となりました。
今回は現役阪大生の2人が”津波から救命艇シェルターで救う命”について取材してきました。
そのなかで、絶対に水が船内に入ってきても沈まない構造などの動かされる技術があったので、ご紹介していきます!!
ご協力いただいたのは大阪府豊中市でマリンエンジン整備・救命艇検査を手掛ける「株式会社ミズノマリン」代表取締役の水野茂さんです。
防災技術について大変興味深いお話を伺うことができました。
(外から見ても迫力満点のシェルターのあるミズノマリンさん)
【取材当日 集合】
妻鹿「お疲れ様です!クリスマスの翌日ですが、頑張って取材行きましょう!」
瀬古「おー!!」
妻鹿「あれ、瀬古さん1人ですか??残り2人は??」
瀬古「吉本は帰省で九州に帰って、大崎は体調優れないらしいよ。」
妻鹿「…2人で行きますか。」
(自分の企画で張り切っていたのに、メンバーが集まらず、哀愁漂う妻鹿)
【ミズノマリンさん到着 取材開始】
妻鹿「こんにちは。お時間とっていただいてありがとうございます。大阪大学経済学部の妻鹿真太郎です。」
瀬古「同じく瀬古です。よろしくお願いいたします。」
水野「ミズノマリン代表取締役の水野です。よろしくお願いします。楽しみにしとったんで、良いお話をしたいですね。」
品野「ミズノマリンの品野です。今日は同席させていただきます。」
妻鹿「品野さんお若いですね、入社して何年目ですか??」
品野「入社して半年で、今年20歳になりました!」
妻鹿「え!!年下!!めちゃくちゃしっかりされてますね…。(社会人の偉大さを感じる)」
(アイスブレイクしながら、徐々に本題へ)
【津波救命艇シェルターの開発】
妻鹿「では、まずどのようにして救命艇シェルターが作られたのか経緯を教えていただけますか?」
水野「2012年から始めました。東日本大震災の翌年から着手ってことなんですよ。もともと大型船に搭載されてある救命ボートの検査を本業でやっておりまして、そことうまくマッチしたって話ですね。」
瀬古「東日本大震災の翌年ということは、水野さん自身何か被災されたんですか?」
水野「東日本大震災ではある画像を見て、何か救命艇シェルターみたいなのがあったら多くの人が助かるなーってなんとなく思ったんです。1人の男性がこんな箱に乗って、3人もの命を助けたんです。これに痛く感動したんですよね。」
(NHKの「あの日、わたしは」の一コマ。助ける男性。)
妻鹿「素晴らしい行動力ですね。他にも何か経験があったんですか?」
水野「東日本大震災の翌年、私はタイに行ってたんですね。ここで大きな地震に遭ったんです。プーケットっていう町の細い道をみんなが逃げてるんで、動けないんですよ。周りは全部タイ語で、何言ってるかわからないですし。今、津波が来たらもう絶対終わりだなと思いました。そこで先ほどの画像とリンクしたっていいますかね。もし津波に会わずに帰れたら、絶対救命艇シェルターを作ろうと思ったんですよ。」
(熱く開発話をしてくれる水野さん)
【私たち、津波救命艇シェルター技術のここに感動しました】
妻鹿「他にも技術の面でお伺いしていきます。水が入っても沈まない構造だと拝見したんですけど本当ですか?」
水野「ああ、不沈構造ですね。簡単にいうと、浮き輪みたいなもんですよ。万が一ぶつかって、穴が空いて、水が入ってきても沈まないんですね。満杯に水が入っても沈まないんですよ。」
妻鹿「すごいですね。それは船体の下に空気が十分入ってるからですか?」
水野「空気というか発泡体が入ってるんですよ。つまり浮力体ですね。そのおかげで上向きの力が十分かかってるんです。」
妻鹿「なるほど、どんなに船上が重くなっても浮力が勝つから沈まないんですね。」
水野「そういうことですね。」
瀬古「他にも何か技術が使われてるんですか?」
水野「セルフライディング、つまり船体がひっくり返ってしまっても元に戻るものがありますね。」
瀬古「素晴らしいです!それはなぜ実現できているんですか?」
水野「重心をなるべく真ん中に寄せるように作っているからです。人が中に乗ったとしても真ん中に寄るように設計します。図面の段階で計算して、プロトタイプを作った後の実証実験で何回もひっくり返します。」
(実際にひっくり返った救命艇シェルターが元に戻る動画を見せていただく)
瀬古「え〜!本当にもとに戻ってる…!すごい。」
水野「ありがとうございます(笑)。」
【実際の救命艇シェルター見学へ】
水野「じゃあ、そろそろ外で実物見てもらいますか。」
一同「はい、ぜひよろしくお願いいたします!」
(お土産にお餅をいただきつつ、外へ移動。)
妻鹿「間近で見ると、大きいですね!!」
水野「25人乗りの方は重さ2トン、長さ6メートルありますからね。どうぞ中にもぜひ入ってみてください。」
(救命艇シェルターの中へ)
瀬古「いろいろな設備がありますね。このカラフルなものはシートベルトですか?」
水野「はい、そうですね。非常に簡単に取り外しができますが、滅多に外れることはありません。どうぞつけてみてください。」
瀬古「(ガチャッ)おおー!簡単ですね。」
(シートベルト装着の実演)
(早速つけてみた瀬古さん)
妻鹿「この扉はなんですか?上から頭を出すオープンカー的なものですか?」
水野「そ、そうですね…、上から顔を出すこともできます。ただ、これは何かの障害物のせいで扉が開かなくなってしまった時の緊急脱出のために作られています。」
妻鹿「なるほどです。出入り口が何個もあると安心ですね。」
(脱出口を紹介する妻鹿)
妻鹿「このつまみは一体なんですか?」
水野「これは水を確保するためのものです。上部に雨水を確保しており、そのつまみを引き抜くことで水を得ることができます。」
妻鹿「へぇ〜、まさに至れり尽くせりですね。」
(25人乗り救命艇シェルターで水を得るためのつまみ)
水野「では続いて8人乗りも乗って行ってください。」
瀬古「ありがとうございます。何から何まで。」
(8人乗りのある倉庫に移動)
瀬古「へぇ〜、さっきの25人乗りよりもだいぶコンパクトですね。」
水野「そうなんですよ。展示会に行くたびにスペースを取りすぎると言われたものですから、頑張って開発しました(笑)。いつ使うかわからないものにそんなスペースは割けませんからね。」
(瀬古さんと比べてもコンパクトな8人乗り救命艇シェルター)
妻鹿「おー!かなり広々とした作りですね。ちなみに、この真ん中の棒ってなんのためにあるんですか?」
水野「よくぞ聞いてくれました(笑)。これは一点で釣り上げることができるように置いてあるんですよ。持ち運びしやすいように。この棒がない状態で一点釣りするとズポッっと抜けてしまうんですね。」
妻鹿「なるほど。救助の時にも役立つ設計になっているんですね。」
(8人乗り救命艇シェルターにあった謎の棒)
【今後の救命艇シェルターの展開は】
妻鹿「今後の救命艇シェルターはどのような展開を考えているのですか?」
水野「来年2月に4人乗り救命艇シェルターをリリースする予定です。これまでのターゲットは10人以下の中小企業でしたが、4人乗りは家族にフォーカスしています。来たるべき時に備えて、ラインナップを拡大しているんですよ。」
瀬古「値段はサラリーマンでも買える価格なんですか?」
水野「痛いところつきますね(笑)。それが今迷ってるんですよ…。技術的に小型になると価格が高くなるんですよね。詰めれるとこは詰めていかんとね。もちろん、安全性を確保しながら。」
妻鹿「難しいところですよね。さらにその先も考えているのですか?」
水野「まだ、全然空想の段階ですけど、ペット用のシェルターとかどう思います?」
妻鹿「おお!可能性はありそうですね。命を助けるということの末端まで来た感じがします。現状だと子供の数よりペットの数の方が多いですもんね。」
水野「もしかすると、ここが採算事業になるかもしれないと思ってるんですね。というのも、東日本大震災の時にペットを連れて逃げるために亡くなった方が多いですし、連れ戻しに行って亡くなった方も多いんですよ。だから、ペットが逃げ込める犬小屋・猫小屋兼シェルターなんていいかなって思ってますね。」
妻鹿「いいですね、人命を助けるためにどんどん守るものを広げていく。見習いたいです。本日は貴重なお話を伺えて嬉しかったです、誠にありがとうございました。」
(雨なのに外に出て見送ってくれる従業員の方々。※見ずらくてごめんなさい。)
【まとめ】
水野さんをはじめとするミズノマリン様の協力により、津波が来ても命をつなぐことができる救命艇シェルターの技術を学ぶことができました。
水野さん自身がタイで被災したこともあり、防災に対する意識が非常に高いことが伝わってきました。1つ救命艇シェルターを作っても満足せず、次々に改良・新規開発を行っている向上の精神は圧巻の一言だと思います。
ミズノマリン様の自分の持っているリソースを使って社会に貢献していく姿勢を見習い、人生を歩んでいきたいと思います!!
ご協力、誠にありがとうございました。