2019.09.07

病院がやるべきBCPに基づいたマニュアル構成とは

written by admin

災害発生時、多くの傷病者が発生します。

警察や消防、DMATなどの機関と連携し、病者の医療措置の拠点ともなる病院は、自らが被災したときでも医療措置を継続できるように、すでに災害対策マニュアルを作成している施設も多くあるでしょう。

ところが病院における従来の災害対策マニュアルではカバーできない災害が増加してきたことを受けて、被災時を想定したマニュアル作成だけではなく、事前からの備えを行っておくことが重要視されるようになりました。

これを受けて厚生労働省は、病院を始めとした医療機関各所に「BCPに基づいた災害対策マニュアルの作成」を呼びかけています。
ここでは、従来の災害対策マニュアルとの比較や、病院がやるべきBCPに基づいたマニュアル構成について解説します。

現在の災害対策マニュアルを、BCPを踏まえて再構築したい人もぜひ参考にしてください。

目次

病院におけるBCPの考え方とは

病院におけるBCPの考え方とは
BCPとは事業継続計画の略で、災害など企業の事業を停止する要因が発生した場合に、事業を停止させない、または即急に復旧させるためにあらかじめ策定しておく計画を指します。

一般企業においてBCPで停止を防ぐべき事業とは、その企業の中核事業です。

一方で病院における停止を防ぐべき事業とは、患者すべての診療を行うことが該当します。
特に災害発生時病院は病院機能を維持したうえで、被災者を含めて患者すべての診療を行わなければいけません。

さらに、災害発生時は時間の経過とともに、傷病者の数や状況も刻一刻と変化するため、病院としても発災直後からの初動期、急性期、その後の亜急性期、慢性期へと変化する災害のフェーズに対して継ぎ目なく、的確な医療措置を提供する必要があります。

以上の観点から、病院においては災害対策マニュアルに、事業を継続させる「BCP」の観点を取り入れ、作成する必要が求められるようになりました。

病院における従来の災害対策マニュアルとの違い

病院における従来の災害対策マニュアルとの違い

今後病院が取り入れるべきBCPに基づいた災害対策マニュアルと、従来の災害対策マニュアルの違いは以下の通りです。

  • 被災時の対応ではなく事前対応が前提
  • 自らの脆弱部分を洗い出して補える
  • 継続的に被災患者の診療にあたれるための改善点が分かる

被災時の対応ではなく事前対応が前提

病院ではすでに災害発生時にどのように行動するかをあらかじめ取りまとめた、災害対策マニュアルを作成しているところは多くなっています。

ところが、災害対策マニュアルは被災時にどのような行動、対策を行うかをまとめたものです。

つまり、従来型の災害対策マニュアルでは災害発生時の動的な対策のみ書いてあるだけのものがほとんどで、事前行動についてはほぼ書かれていません。

東日本大震災では、病院を含めた多くの医療施設でインフラなどが損傷し、病院としての機能を果たせない「想定外」のことがおき、被災時の対応のみが書かれている従来型の災害対策マニュアルは役に立たなかった、という問題点が浮き彫りになりました。

そこで、発生した災害を「災害対策マニュアルでは対応できない想定外のこと」とするのではなく、ある程度災害などのレベルを想定し、事前に対策などを策定しておくBCPの考えを取り入れた災害対策マニュアル作成が重要であると考えられるようになりました。

自らの脆弱部分を洗い出して補える

BCPに基づいた災害対策マニュアルは、事前の準備、つまり病院や医療施設で災害に対して脆弱な部分を事前に洗い出し、その対策をしておくことも含まれます。

施設で足りないところ、弱いところも確認できリスクの発見につながるため、災害対策マニュアル作りだけでなく、病院としてのリスク管理能力の向上にもつなげられるメリットもあります。

継続的に被災患者の診療にあたれるための改善点が分かる

病院は災害発生から時間経過によるフェーズの移行だけでなく、地域性や災害の規模によっても病院に対する医療ニーズはそれぞれで異なってきます。

このフェーズごとに変化する医療ニーズに柔軟に対応し、かつ円滑に病院としての事業を災害時でも進めるためには、BCPに基づいた災害対策マニュアルが必要です。

災害時に継続的な診療を行うために病院ごとで求められている医療ニーズの把握につながり、従来の災害対策マニュアルで記載されている、災害時の動的対応に関する改善点も発見できます。

新たにBCPとして事前対策を記載するだけでなく、従来の災害対策マニュアルのブラッシュアップにもつながるでしょう。

病院のBCPに基づいた災害対策マニュアル構成のポイント

病院のBCPに基づいた災害対策マニュアル構成のポイント
病院が従来型の災害対策マニュアルから、BCPに基づいた災害対策マニュアルへ再構成する場合、改善点を整理しておかなければいけません。

改善点を発見するために役に立つのが、BCPチェックリストです。

BCPチェックリストに沿ってチェックすべきポイントは以下の通りになります。

  • 地域のなかでの位置づけ
  • 組織・体制
  • 災害対策本部
  • 診療継続・避難の判断
  • 安全・減災措置
  • 本部への被害状況の報告
  • ライフライン
  • 緊急地震速報
  • 人員
  • 診療
  • 電子カルテ
  • マスコミ対応・広報
  • 受援計画
  • 災害計画
  • 災害対応マニュアル

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその1:地域のなかでの位置づけ

地域の防災計画や防災業務計画において、病院の位置づけが明確に定義されているかどうかをチェックします。
定義されていない場合は病院の位置づけを再確認しましょう。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその2:組織・体制

災害時に病院としての役割を遂行できるように、災害に関する常設の委員会や組織があるのが望ましいです。
また、予算的な権限が付与されていて、必要に応じて予算を管理や編成できる立場であるかどうかも確認しましょう。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその3:災害対策本部

病院が災害時に適切な活動を行うためには、指揮管理を行う災害対策本部の設置が必須となります。

災害対策本部の部長や要員、本部長代理、役割分担、設置場所、通信設備などの事前計画が行われているかを確認しましょう。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその4:診療継続・避難の判断

災害発生時、病院では災害対策本部の設置とともに本部長が適切に診療などの継続判断を下さなければいけません。

たとえば、地震によって津波が発生するなど、病院のある場所が危険になった場合ただちに避難しなければいけません。
そのさい、災害対策本部長が外来診療や手術などの、病院における事業の中断や中止、病院避難などの事項を決定します。

事業の中断の基準レベルや実際の対応方法についても事前に決められているかをチェックしましょう。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその5:安全・減災措置

病院として災害時でも診療を続けるためには、医師や看護師、従業員などの安全がすでに確保された状態であるのが必須です。

病院の建物は免震や耐震設計になっているか、災害前に耐震・安全性基準を受けているか、災害後にすみやかに安全評価ができるか、医療機器や棚などの転倒や転落の防止措置は行われているかなどを確認します。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその6:本部への被害状況の報告

災害発生後に災害対策本部へ被害状況を迅速に報告できる体制が整っているか、被害報告のための書式などが統一かされているかなど、報告に関する事項をチェックしましょう。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその7:ライフライン

病院そのものが被災しても、必要な医療措置を提供するにはライフラインを確保しておかなければいけません。

自家発電や燃料、下水やガス、医療ガスなどの医療措置に必要なライフラインが確保されているか、医薬品や通信機器、エレベーターなどの災害時対策ができているかも同時に確認しましょう。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその8:緊急地震速報

地震の発生直後に発せられる緊急地震速報を館内に有しているか、放送やエレベーターなど速報発表とともに止まるなど連動しているかをチェックします。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその9:人員

災害発生時に病院として適切な医療措置を行うためには、働く人員の確保とともに、適切なケアも必要になります。

交代要員の確立、仮眠や休憩が取れるスペース、水や食料の確保、緊急連絡ができる手段の確立、徒歩などの通勤手段の確立など、人員確保のための事前対策ができているかどうかをチェックします。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその10:診療

災害時に多数の患者を受け入れるための受付から、治療・検査、手術、入院、帰宅までの流れと診療場所が分かりやすくまとめられているか、各エリアの担当者、場所、必要物品、診療手順、必要書式について診療マニュアル化されているかなど、適切かつ円滑な診療提供ができる体制が整っているかを確認します。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその11:電子カルテ

災害時、電子カルテが使用できない可能性が高いため、停電やシステムダウン時の対応方法、病院内外にバックアップをとっておくなどの事前対策をしておきます。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその12:マスコミ対応・広報

災害時の情報公開など、マスコミへの対応方法が検討されているかを確認します。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその13:受援計画

DMATや医療ボランティアの受け入れ体制・待機場所・マニュアルが確立されているかを確認します。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその14:災害計画

災害計画に基づいた多数傷病者受け入れ訓練、災害対策本部の訓練や亜急性期・復旧期を視野に入れた机上シミュレーションなどの実践と改善が行われているかをチェックします。

BCPに基づいた病院マニュアルポイントその15:災害対応マニュアル

災害対策マニュアルそのものの維持管理体制ができているか、マニュアル内容の周知ができているか、ほかのマニュアルとの整合性が取れているかを確認します。

参考:厚生労働省 BCPの考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き

病院だからこそBCPを踏まえた災害対策マニュアル作成を

病院は自らが被災した場合、診療を止めると傷病人への医療措置ができなくなり、災害被害の拡大にもつながってしまいます。

事前の準備だけでなく、災害発生時にも病院の事業である診療を止めないためにも、BCPを踏まえた災害対策マニュアルへの再構成や改善を行いましょう。

BCPについては以下の記事もあわせてご覧ください。

【BCP対策事例集】BCP対策マニュアル作成に役立てよう

BCPの発動フローのスタート地点「初動対応」をスムーズに行うには

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