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最終更新日:2022/09/02 (公開日:2019/09/07)

BCPの発動フローのスタート地点「初動対応」をスムーズに行うには

企業の危機管理能力のひとつとして、さらに災害大国の企業として策定しておくべき計画が「BCP」です。

BCP発動の要因となるのは災害や事故、パンデミックやサイバーテロなど多岐にわたりますが、企業としてはどのタイミングでBCPを発動するかに加えて、発動後の的確な初動対応ができるようにしておかなければいけません。

ここでは、BCP発動後のフローをスムーズに展開するための、初動対応において重要なポイントについて解説しています。

BCP策定済みで今後より良いものに改善していきたい人や、BCPをスムーズに発動させて事業停止を防げるか不安な人は、ぜひ参考にしてください。

BCPの初動対応を見直す前に発動レベルを決めておこう

BCPの初動対応を見直す前に発動レベルを決めておこう
BCPとは事業を停止するほどの要因が発生したときに発動し、事業停止の防止、または事業を停止する場合でもできるだけ早い復旧を目指すための計画を指します。

特に日本は災害大国のため、防災への取り組みをすでに行っている企業が多くなっていますが、それと同時に事前に事業を停止しないように取り組みをしておく、BCP対応も求められるようになりました。

とはいえ、発生した要因のレベルによってはBCPを発動するほどのものではない、またはBCPを発動しても事業停止は避けられない、といった場合もあります。

たとえば地震が発生しても震度3~4程度までなら事業に何ら影響がない場合がほとんどですし、地震でも企業そのものや関連施設も壊滅状態になった場合は、BCPを発動しても間に合わない状態ともいえます。

BCP対応をしておくのは重要ですが、事業停止の可能性がある事象が発生した場合に、実際にBCPとして機能しないと意味がありません。

そのため、BCP策定とともにあらかじめBCPを発動するレベルを決めておくようにしましょう。

具体的に、以下の条件を満たしている場合はBCPを発動すべきといえます。

  • 会社の中核事業に致命的なダメージを受けたとき
  • BCPを発動させないと復旧目標時間に間に合わないとき

会社の中核事業に致命的なダメージを受けたとき

BCPは会社の中核事業を停止しないために発動します。
そのため、中核事業を継続する上で何らかのネックが発生したときなどはBCPを発動するタイミングと言えます。

逆に中核事業に深刻な影響がない場合は、BCPを発動しなくても事業には影響ありません。
複数の事業を展開している場合にはまず中核事業は何かを検討し、BCPで停止を防ぐ事業の優先順位をつけましょう。

BCPを発動させないと復旧目標時間に間に合わないとき

BCPは事業の停止を防ぐ、または停止せざるを得ない場合はできるだけ早い復旧を目指すのが策定の目的です。
そのため、BCP発動時は事業の復旧目標時間も定められています

災害や事故などが発生して事業停止となった場合、BCPを発動しないと復旧目標時間に間に合わないタイミングなら発動すべきでしょう。

BCP以外の復旧作業などでも十分に復旧に間に合う場合や、BCPの発動の有無が復旧目標時間に影響しな場合は、発動タイミングではありません。

BCP発動の要、初動対応のポイント

BCP発動の要、初動対応のポイント

BCPを発動後、適切かつスムーズに実行していくためのポイントが、初動対応を適切に行うことです。

BCPの初動対応は、災害や事故など発生した要因によって異なります。

また、事業を停止させるリスクというのは企業や事業内容によって異なるため、まず危機管理の観点から事業停止や中断の可能性の高い、甚大なリスクを優先して対応するのが重要でしょう。

ここでは、いろいろな企業や事業に共通する、地震、風水害、火災、集団感染のBCPの初動対応のポイントをフローごとに解説していきます。

BCP初動対応その1:地震発生時の初動対応とフロー

地震の予知を基に国があらかじめ自身の発生を警戒するように発令する「警戒宣言」がありますが、現在東海地震のみが該当しています。

つまり、地震は突発的に発生する災害であるという前提で、初動対応を行うのが重要です。

  1. 発災直後の安全確保
  2. 津波からの避難
  3. 安全確認
  4. 各自がルールに従い行動する
  5. 会社以外の場所にいる場合の対応
  6. 他の地域の状況の確認

発災直後の安全確保

まず従業員それぞれで自分の身の安全を確保します。
落下物に気を付ける、机の下にもぐるなどの対応を行いましょう。

津波からの避難

津波の危険性がある場合、高台などの指定避難場所までただちに避難します。
特に日ごろから津波の危険性がある場所の場合、揺れを感じたらすぐに津波を想定して避難を心がけましょう。

安全確認

建物の状況や土砂災害、堤防決壊などのほかの状況も考えて避難をするか、施設内にとどまるかを判断します。

各自がルールに従い行動する

地震発生後はパニックになりやすく、社長など上の立場の人間が指示を出してもうまく伝わらないことが多いです。
あらかじめ従業員全員に初動対応ですべき正しい行動を周知し、ルールに従い行動できるようにしておきましょう。

会社以外の場所にいる場合の対応

在宅時や通勤中、就業時間内の外出中など会社内にいない場合に被災した場合は、会社への連絡手段を決めておくとともに、そのまま会社に出社するか、帰宅するかの判断となります。

あらかじめどのような対応をとるべきかを周知しておきましょう。

他の地域の状況の確認

自社の施設には直接被害がなくても、ほかの地域にある関連施設や取引先などが被害を受けている可能性があります。
他の地域の状況も確認しておきましょう。

また、自社のある地域に対する支援は受け身になるのではなく、積極的に支援活動を行うようにしましょう。

BCP初動対応その2:風水害発生時の初動対応とフロー

風水害は土砂災害(土石流、山腹崩壊等)、河川氾濫による浸水(堤防決壊や越水、内水氾濫等)、沿岸部の浸水(高潮)の3つの被害が出る可能性があります。

また、災害の種類によって被害のレベルは異なるでしょう。

たとえば、台風なら上記3つの被害すべてが出る可能性もありますので、風水害の種類によっての適切な初動対応が求められます。

  1. 警戒段階からの対応
  2. 情報源の把握
  3. 早期避難

警戒段階からの対応

風水害は地震と違い、突発的に発生するのではなくあらかじめ警報などで発生情報を得られます
発生してから対応をするのではなく、警戒段階から準備をしておくと、風水害の実際の被害軽減に役立つでしょう。

情報源の把握

風水害は発生状況が刻一刻と変化していきます。

状況を把握するためには正しい情報を手に入れるのが重要です。
テレビやラジオ、国土交通省や気象庁のホームページなど、あらかじめ情報源を把握しておきましょう。

早期避難

風水害の場合、避難勧告や避難指示など国から段階的に避難情報が出ます。
また、当該地域の自治体の避難準備情報も発信されます。

早期避難を心掛け、出勤前なら自宅待機とする、出勤後なら従業員の帰宅時間を前倒しにするなどの対応を行います。

BCP初動対応その3:火災発生時の初動対応とフロー

火災は天災でもあり人災でもあるため、ある程度の事前予防が可能な災害のひとつです。

ただし、隣接した建物などからのもらい火や放火など、突発的な発生もあります。
日々の予防とともに初期消火が肝心といえるでしょう。

  1. 「発見」「初期消火」「通報」をワンセットで行う
  2. 初期の役割分担
  3. 初期消火の中止・避難
  4. 周辺企業や住民への通報
  5. 鎮火後は必ず消防の検分を受ける

「発見」「初期消火」「通報」をワンセットで行う

ボヤで済みそうな場合でも、判断を見誤ると大きな火災となり、被害が拡大する可能性があります。
少しのボヤでも火災を発見したら初期消火、また消防への通報をワンセットで行うようにするのが重要です。

初期の役割分担

火災発生時、初期消火と通報、さらに周辺の施設や住民への周知は同時に行わなければいけません。
あらかじめ火災における初動対応で何を担当するかを、社内で役割分担しておきましょう。

初期消火の中止・避難

万が一火災が壁や天井など、初期消火が難しい箇所に引火した場合はただちに初期消火を中止し、迅速に避難をします。

なお、火災発生から3分程度で有毒ガスの発生や酸欠の可能性が高くなるといわれていますので、迅速な避難が重要です。

周辺企業や住民への通報

延焼の危険性から、消防だけでなく周辺の企業や住民へも通報を行いましょう。

鎮火後は必ず消防の検分を受ける

初期消火で鎮火し、ボヤで済んだと思ったとしても実は見えない箇所で延焼が収まっていないことがあります。
必ず初期の段階で消防への通報を忘れないようにしましょう。

BCP初動対応その4:集団感染発生時の初動対応とフロー

インフルエンザなどの感染症が要因のリスクが集団感染です。
空気や接触によって感染拡大リスクがあります。

狭いスペースで長時間勤務するオフィスワーカーなどは、とくに感染拡大の恐れがあります。

風邪などにかかった従業員はマスクの着用徹底などの防止策とともに、感染が発覚したら拡大防止策を打っておくことも重要でしょう。

  1. 拡大防止対策の早期実施
  2. 商品等の汚染防止対策の実施
  3. 保健所に相談する

拡大防止対策の早期実施

感染症は潜伏期間があります。
少人数の従業員でも感染症が疑われる場合、必ず休ませて医療機関を受診させる、ほかの従業員にも手洗いやマスクの徹底など、早期の拡大防止対策を実施しましょう。

商品等の汚染防止対策の実施

感染した従業員から商品を介し、顧客まで感染症が拡大してしまうと社会的信用の損失にもつながります。
取り扱う商品やサービスを介した汚染防止対策も事前に決めておき、実施しましょう。

保健所に相談する

その他感染症に関することで不安なことがあれば保健所への相談が有効です。
感染症発生時はもちろん、事前の対策のための相談も可能ですので活用しましょう。

参照:中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針

BCPは発動タイミングと初動対応が運用の鍵

BCPを策定し、実際に使えるようにするには発動するタイミングを決めておくことと、初動対応が鍵になります。

災害の種類によって初動対応は異なるため、必ず具体的な初動対応もマニュアルに盛り込み、訓練も欠かさず行って事業停止を防ぎましょう。

BCPについては以下の記事もあわせてご覧ください。

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