最終更新日:2022/09/03 (公開日:2020/02/01)
[生き抜く知恵]vol.8 政治
滋賀県長浜市のとある場所にある、生き抜く知恵の実験室WEEL。
ここでは日夜「生き抜く力」について考え、時にそれらを身につけるための実験やチャレンジや発信がおこなわれています。
「防災」って、きっとこれからの時代においては自然災害に対するだけのものじゃなく、人生そのものを生きていくための「生き抜く力」のことになる。そんな仮説のもと、生き抜く知恵を学んでいく暮らしの中で、特色あるゲストを招いての特別研修もおこなっています。
今回は、「政治」。
わたしたちが学んだ生き抜く知恵を少し、ご紹介させてください。
生き抜く知恵のかけら
・「見えないルール」を見極めることの重要性
・「未来をつくる」ためにできることは多種多様であると知っておくこと
目次
知恵の持ち主は増沢諒さん
「政治は格好良いものだ」という信念
学生時代から政治を学び、議員秘書の経験なども経て現場にも足を運ぶ増沢さんにとっての政治は、今も昔も一貫して「未来をつくる、わくわくすること」だ。
「社会をよりよくしていくためのひとつの手段」として政治を捉える増沢さんは、自身の経験からこんな思想を抱くようになったという。
「僕にとって政治は、iPhoneを初めて触ったときと同じくらいのわくわくを感じるもの。未だに『声』での発言しか認められない議会の場で、難聴の議員でも発言が認められるようにとITを活用してそれを可能にしたり、議員と一緒に地方をまわる中でおばあさんから泣きながら日本の未来を託されたり。涙が出そうになる瞬間っていうものを、僕は政治の場でいくつも体験した」
「声」での発言しか認められない議会の場で、入力した文字を読み上げるソフトを使い『発言』を行えるように改善を行った際、発言が認められた瞬間に、増沢さんは涙を流してその進歩を噛み締めた。政治というシステムも、こうして少しずつ前へ進んでいるのだ。
「政治は社会をよりよくしていくためのもの。だからこそ、やっぱり格好良いものだと僕は思う」
こんなことを言いながらも、その語り口は飄然として、表情も緩やかで柔らかい。同時に、実に楽しそうに政治への想いを語るその表情は、どこかヒーローを夢見る少年らしさをも感じさせるものだった。
「想いのある適度な温度」の大切さ
増沢さんの語り口は余計な力みや圧を感じさせることがない。肩の力の抜けた純粋な語り口は、「政治」に対して世間一般の中になんとなく存在している「どこか触れてはいけないこと」のようなタブー感や、右翼・左翼の論争といった烈しいイメージを全く感じさせない空気を纏う。それは、現在「政治」から遠く離れているといわれるような若者世代にもどこか安心感を与えながら、「政治」という世界への導入を促していく役割を担う。
熱を秘めながらも、それをすべて丸出しにして表現することはしない。この「適度な温度感」は、きっとどんな物事を伝える場面においても非常に重要な役割を担う。ただ冷めているだけではなく、豊富な知識と濃厚な経験に裏打ちされたその静けさは、普段その界隈に接していない「外野」である者たちに、学ぶか学ばざるかという「選択肢」を無言のうちに与えているように思う。人間は、何かを学ぼうとする時、あるいはセンシティブとされるような事柄に触れようとするときに、「ここにいたいと思うかどうか?」と自らに問う余裕を持ち、いつでも引き返して良いのだというゆとりと、思考し選ぶことができるという心地よい安心感を得た上ではじめて「学び」に入る生き物なのかもしれない。
増沢さんが編集長をつとめる「選挙ドットコム」というWEBサイトは、「選挙をもっと、オモシロク。」をコンセプトに、分かりづらい選挙の情報や政治の解説を、コラム形式にしたり表にして見せたりと手に取りやすい形にして発信を行なっている。
(選挙ドットコムに掲載される情報の一部)
多くの人たちに伝えるべき課題の真ん中にいる人たちというのは、どうしても「内輪」になりやすい。本来伝えるべきところへ情報を伝えるために、その内輪化をどうやって打開していくのかという方法の中の一つにも、「適度な温度」は存在しうるのではないだろうか。
「未来」を知る者が誰もいない以上、政治は暗中模索の繰り返しだ。多分、多くの社会課題や人生における「災い」にも、決まった正解というものは存在しない。そうだとすれば、やはりそこには決まった人だけでなく多くの人々の接点や視点も重要になってくるのではないだろうか。
敢えて適度な温度を保つこと。それが大切になる場面というものは、わたしたちが生きている中に意外と多く存在しているのかもしれない。
より良い未来へ向かうためには、まず存在している「ルール」を知る必要がある。
わたしたちは毎年何回も「選挙」に行くが、選挙が開かれるたびに投票率が低いというような話を耳にする。政治への無関心の表れだとしてある種の危機感を抱いている人たちもいれば、そういわれても自分には関係の無い話だとしか捉えられない人もいるだろう。
なぜ、政治は遠いのか。
ひとつは、おそらくその構造のわかりにくさにある。たとえば「選挙」と一言でいっても、衆議院議員の選挙、参議院議員の選挙、県議会議員の選挙、市議会議員の選挙、県知事選挙、市長選挙と種類が多く、それぞれが何のために行われているものであるのかさえ、混乱してしまうのも無理はないのかもしれない。
根本的に、おそらく多くの人間が「何者」であるのかわからないものには近づこうとしない。けれど、政治に関して言えば、たとえ近づくことをやめたところで、わたしたちが生きる日本という国は日々変化し、未来へ向かって進んでいく。
「政治は、『国のルールを決めて実行する』ということ。法律を決め、予算配分を決めて、定めたルールを実行していくのが政治の役割」
社会や国家はこの「ルール」のもとに成り立っている。
たとえどんなに権力を持つ者であっても、このルールには従わなければならない。わたしたちひとりひとりがより良い未来を選んでいこうとするときに、このルールを「知らない」ということは非常に大きなリスクであり、災いの種になるとはいえないだろうか。
単純な話として、サッカーのルールを知らないとサッカーはできない。
政治も同じで、どんどん改訂されていくルールを知り、その中で自分が走るべきゴールの方向を見定めてフィールドに立つという意識こそが、わたしたちがわたしたちの未来へ向けて走るために必要なことになる。
これは何もスポーツや政治だけの話ではない。すべてのコミュニティ、すべての事柄において、わたしたちが生きていく中で触れるものごとには目に見えないルールというものが多少なりとも存在している。自分が今居る場所において、「ルール」を知るための方法は一体どんなものがあるだろう。先人に聞く、本を読む、周囲の様子を気にかけてみる…色々な方法を検討し、変わり続けていく「見えないルール」を見極めていくことは、わたしたちが未来へ向かって生き抜いていくために重要なスキルといえる。
「未来をつくる」ためにできることをしよう。
選挙に行くという行為が礼賛される風潮にあるここ数年だが、増沢さんは先述したように「選挙に行く」行為そのものよりも「より良い社会」や「未来」をつくっていく行為に重きを置いて考えているという。
「選挙に行こうって言うこともまぁ大切だろうけれど、政治は結局『未来をつくる』こと。そのためなら、国を動かすためにビジネスを頑張るという手法もあっていいし、やりやすいものや動きやすいものを活用していけばいいんじゃないかなと僕は思う」
起業家は多くの雇用を創出し、それはより良い社会へ向けての一手となっていたりもする。また政治家とは異なった動き方ができるからこそ、時に総理大臣よりも先に異国の大統領へ会いに行くことが叶ったりすることもある。
このように、「政治家」でなくとも世の中を大きく変える力を持っている立場にある人はたくさんいて、むしろ政治家よりもずっとスピーディー且つ大きな影響力をもって人々を幸せにしているという事例もたくさんあるのではないかと増沢さんは語った。
「地域の課題に目を向けている若い人はどんどん地方議員になればいい。ビジネス分野で社会を変えようと立ち上がるソーシャルスタートアップの人たちが増えたりしているが、政治の分野にももっと進出してくればいいのになと思っている。より良い未来をつくっていくために、ビジネスでも政治でも、できることで形にしていくのがいいのではないか」
就職活動の時、若者は「こんな世の中を作るためにこの仕事をしたい」というようなビジョンを描く。それはまさしく「より良い未来をつくるため」の選択だ。そこに「政治家」という選択肢がもっとフランクに入ってもいいのではと、増沢さんは笑う。
「何を選び、何を動かすことで未来をつくるのか」ということを考え、選ぶ。
それはビジネスでも政治でも変わらない、人生を通してわたしたちひとりひとりが考えるべき生き抜くための知恵である。
「政治家」といえど、国会議員と地方議員ではできることがまったく異なる。 どこで何を動かすことが自分のつくりたい未来にとって必要なのかを考えるには、やはりこういった知識も必要になってくる。気になることがあればこの機会に調べてみるといい。
■国会(国会議員)
憲法など国の大きな方針
国の予算(財政)
外交 など「国」としてのことを考える
■地方議会(首長、地方議員)
学校教育
福祉
警察・消防
地域産業 など「地方/地域」としてのことを考える
他にも生き抜く知恵の実験室WEELでは動画配信など様々な取り組みを滋賀県長浜市さんと行なっております!ぜひ下の画像をクリックしてご覧ください!