ITで震災後の人手不足を解決!?北海道のスーパー幼稚園

被災後の混乱した状況下では、様々な問題が発生する。

その1つとして、ボランティアへの対応に、時間と現地の人手が割かれてしまうという問題がある。

具体的にいうと、受付や作業の割り振りに何時間もかかってしまい、結果的に、実際にできるボランティア活動の時間が短くなってしまうという状況だ。

この問題に対し、革新的な取り組みを行なった地域がある。
それが、9月の北海道胆振東部地震で被災した安平町だ。

ここではボランティアの受付にiPadを使用し、事前登録した情報を元にスムーズに受付を進める人々の姿があった。

このITシステムの導入で活躍された、はやきたこども園の園長、井内さんにお話を伺った。

「園の働き方改革のために使ってたIT。災害が起きたとき、これって使えるんじゃないかと」

はやかわこども園井内聖園長先生

北海道安平町の「はやきたこども園」で園長を勤める井内聖さん。電子黒板やiPadを園に導入し、Pepperくんと一緒にプログラミングを学ぶなどのユニークなプログラムを実施している。

地震が発生してから、ボランティアを集めるまで

ーー9月の北海道胆振東部地震で被災したときのことをお聞きしてもよろしいですか?

発災当時は、実は園でお泊まり会をしていました。

キャンプが終わって、みんなが寝静まった時に地震が起こりました。

園庭に地割れが起きたり、日差しよけが傾いてしまったりなどの被害が当園にもありました。

けど、うち(安平町)は、もともと地方なので、単純に動ける人がいないんです。
役場の人間でも100人ぐらいしかいない。

その上、うちの園は民間なので、誰も助けてくれない。

なのでこども園は当初休園するつもりでした。

けど、やっぱり地震があった後だからこそ、子どもたちには友達と一緒に遊んだり言い合ったり、いつも通りの日常を過ごしてもらいたい。
そう思って時間を短縮した形ですが、園の活動を再開しました。

 

ーー園の活動再開に関して、どのような問題がありましたか?

まず問題となったのが出勤できる職員数が足りなかったことです。

職員ももちろん被災者ですので、出勤できる三分の一には園に来てもらい、残りの三分の二は自宅の復旧にあたってもらいました。

その職員の人手不足を補うために、全国に向けてボランティアの募集を開始しました。
私のフェイスブックで募集の旨を投稿したら、一気にたくさんの方に拡散されて大勢のボランティアが集まってくれました。

 

ーーSNSを使って集められたんですね。その後自治体と組んで活動されたと聞きましたが…

安平町がボランティア受け入れを立ち上げるということで、その時点ですでにボランティアを集めた経験のあるうちがサポートに入ることになりました。

まず、1日で安平町のボランティアセンターのホームページやフェイスブック、ツイッターをすぐに作成しました。

北海道胆振東部地震の後の行動

安平町災害ボランティアセンターの設置の経緯

ーーすごく早い対応ですね!

今は無料のものを使えば、知識のある人ならすぐにできる時代です。

社会福祉協議会は、市民や地域に関する色々な情報を持っているけれども、即断即決の判断は慣れていない。
役所は人手は回せないが、トラックなどの町の支援資源を持っている。

一方で民間のうちは、そういった情報や資源はないけれども「実行」というところを担うことができる。

こうやって適材適所で、復興に対して一緒に取り組んでいきました

ボランティアセンター構図

 

事前にボランティアの情報を回収し、ニーズにあった人に来てもらう

ーー募集された後は、どのように動かれていたんですか?

次に懸念したのが、ボランティアのパンクです。
一気にたくさんの方が来られたら、確実に受け入れ作業で混乱して人手を取られる。

例えば、事前にどんな方々が来るのか把握しておかないと、たくさんのボランティアが集まってから「この中で看護師の資格持っている方いますか!」と直接全員に聞いてまわらなくちゃいけない。

けど実際はそこまでできないから、最適な仕事の割り振りができなくなる。
資格を持たれている人が、ゴミ拾いをしてたりするんです。勿体無いですよね。

この問題に対して、もしかしてITが使えるんじゃないかと思ったんです。

北海道安平町はやきたこども園インタビュー

津田が熱烈に質問しています

 

ーーITによる効率化ですね。具体的にどんなシステムなんですか?

SNSでの情報拡散と並行して、まずはボランティアに来たい方の事前登録サイトをすぐに作りました。

登録サイトでは、どんな資格をもっているのかなどの21項目を細かく記載してもらいます。
そこで福祉系の免許や大型免許をもってる方、看護師など、資格の有無を把握します。

その後に現地でどんな人材が必要かヒアリングを行なってから、ニーズのある資格を持った方々にのみ来てもらう。

安平町ボランティア受付の仕組み

 

ーー21項目と聞くと、結構多い印象を受けるのですが…

そこは、あえて細かく聞くことで、作業のミスマッチを防ぐことを重要視しました。

また、こういった形で事前に細かい情報を確認しておくことで、今何人看護師さんがこれるのか、などの現状も把握することができます。
また、その看護師さんの中で条件を絞っていくこともできる。

避難所の手伝いができるのは?長期滞在できるのは?その都度帰宅の人は?車中泊できる人は?という風に、こちらの状況に合わせてより来て欲しい方を呼ぶことができます。

安平町ボランティアマッチングシステム

加えて、これらの情報はネットで集計しているので、夜の間にマッチング作業を進めることができました。

ITを使うことで、せっかく来たのに仕事のない人が生まれないシステムを作り、なおかつ数が少ない現地の人手が、本来やるべき仕事に取り組めるようにしました

補足

2014年の広島土砂災害において、一日で5000人以上のボランティアが集まってしまい、受付に貴重な人手と時間を割いてしまった事例がある。
その結果、「来てくれたボランティアのために仕事を探す」という本末転倒の事態が発生した。

参照:産経WEST「なんで仕事ないの?」ボランティア過剰で大混乱…「広島土砂災害」の教訓

 

ーー実際に来られた方には、どんな風に受付をおこなっていたんですか?

まず来られた方にも、先ほど説明した事前情報の登録をしていない人もいます。

その方々には、受付にQRコードをおいて、ボランティア登録の質問サイトにとんでもらうようにしました。
そこで何ができるかなどの内容を細かく入力してもらいます。

集めたそれらの情報はセンターで一括管理。あえて手書きの紙はおかない。
すでに述べたように、回収した情報を使って被災者のニーズに合わせてマッチングを行なうことで、仕事のミスマッチを減らすよう勤めました。

事前登録が終わった方から、当日の参加確認を行いました。
そのタイミングで、園でいつも使っていたPiPit登園システムを応用して使わせていただきました。

従来だと名前を聞いて、チェックして…としていた作業を、全て機械がやってくれることになります。

こうすることで、受付に必要な人数を削減しました。

このシステムのおかげで、何日に誰が来た、何人の方が集まったなど、今までいちいち帳簿を数えていた作業をボタン1つで資料化できるようになりました。

 

PiPit登園システム

受付に使っていたPiPit登園システム

 

ITを被災地で使える形で導入するには

ーー実際に被災地の問題をITで解決しようという動きは自治体にあるんですが、実際はそれが現地で上手く活用できていない。つまり使いこなせない、という状況が多発しているようです。それについてはどう思われますか?

ああ、それはあるでしょうね…。

よくあるのが停電したとき、非常用発電機があるのに、「使ったことがないからわからない」ってなるパターン。

非常時には、普段から使っているシステムを転用することが間違いないと思います。

今回においては、私たちは普段使っている無料ソフトのシステムを組み合わせて対応しました。
その理由として、普段使っているから勝手がわかること、また、多くの人が使っているからサービスがより使いやすく更新されているので質が高いんです。

もし災害時に使える専門のITシステムを導入するなら、その機器を普段の活動でも使っている、という状況が好ましいですね。

北海道安平町はやきたこども園インタビュー

また、設計仕様がパソコンになってしまっているものが多いけれども、スマホやパッドなどのタッチパネル形式で使えるようにすると、使い勝手がとてもいいと思います。

補足

被災直後の活動ではスピードや喫緊性が求められ、普段使い慣れていない機材を使う余裕はない。
熊本地震の際、内閣府によって提供されたiPadの物資調達支援システムは、普段使っていないことで活用が難しいとの声があがった。

参照:平成28年度熊本地震に係る初動対応の検証レポート

 

ーーもしよければ、今回一般向けの無料ソフトを使った上で、何か難しかった点などあればお聞かせいただけますか?

改善点としては、複数のシステムを別々に使っている、というところだと思います。
小さなところで、何度かシステム連携が足りないなと思いました。

別のシステムで集めた情報を他のシステムに移すとなると、どうしても手作業が発生してしまう。今回はボランティア登録システムとPiPit登園システムの名簿が連携してなかったので、データをコピーして取り込む作業が発生しました。

 

まとめ

  • ボランティアのパンクを懸念して、ITを活用することで仕事のミスマッチをなくし、受付の人員を削減
  • 紙を使わないことでデータの管理も24時間、資料化もボタン1つで可能に
  • 普段使用していない機器は、災害時という特殊状況下では使いこなすことは難しい

 

はやきたこども園園長井内さん(左)とSAIGAI JOURNAL津田(右)

最後に

このように、ITを使いこなすことで被災後の人手不足を補い、事務作業時間の効率化も行うことがわかった。

また、ITは非常に便利なものではあるが、災害時などは普段使っているシステムを応用して使う形でないと使いこなせない、という課題も残っている。

そのため、普段からITシステムを作業内に取り入れて、災害時に転用できるような機器の開発と使用が重要だ。

 

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