最終更新日:2023/01/27 (公開日:2022/12/16)
非常食は何日分必要?選ぶポイント〜会社や自宅別の備え方もご紹介!
「備えておく非常食が、3日分か7日分必要なのかわからない。」
「子供と大人だと備える量が違ってわからない。」
「一度やってみたけど、なかなか続かなかった。」
この記事は、そんな不安や悩みを抱えているあなたへ向けて書いています。
実際に被災地でのボランティア活動の経験がある筆者が、被災者の方々から伺ったお話などから得たリアルな知識を踏まえて、執筆しています。
あなたが、もしものもしもに備える、一助となれば幸いです。
非常食を最低3日分は備えておくべき根拠
そもそも、いざ被災した時に支援物資がいつ届くのか。量は足りるのか。食材に偏りはないのか。など不確定要素が多くあります。
そのため、自分達自身の力で生き抜くために非常食を備えておく必要性が問われています。
非常食を3日分揃えるべき根拠
災害大国日本はこれまで、阪神淡路大震災や東日本大震災など未曾有の大規模災害に遭いました。
数々の被災経験から学び、自治体などの防災マニュアルが作成され、更新されてきました。
今までマニュアルは、「非常食は3日分備えておきましょう。」
ということを記載しているマニュアルが多いです。
備蓄しておくべき非常食の量が3日分と言われてきた理由は主に2つです。
・3日間水が飲めなければ・・・・
人が亡くなる条件として、空気がなければ3分間、水がなければ3日間、食料がなければ3週間という3の法則があります。
この、「3日間水がなければ」という期限がひとつの要因でしょう。
インフラが復旧する目安
熊本地震 | 東日本大震災 | |
電気 | 6日 | 1週間 |
水道 | 2週間 | 3週間 |
ガス | 2週間 | 8週間 |
内閣府 の 熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援策検討ワーキンググループと厚生労働省の 東日本大震災水道施設被害状況調査報告書をもとに編集部が作成
・過去の災害時の食料支援
2011年の東日本大震災では、発災後3日目に食料供給が行われた地域が多くありました。
そのような過去の経験を踏まえ、農林水産省は「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」においても、最低3日間の備蓄を推奨しています。
2016年の熊本地震でも、国からの食料の援助は、発災後3日目から始まりました。
注意点としては、国から食料供給が開始されたことが発災3日後であって、被災された方々全員に発災3日後に食料が届いたわけではないということです。災害の規模や自治体の備蓄量によって実際の状況は異なりますが、1つの目安として考えることができます。
上記2点を踏まえると最低でも3日分の非常食を備える必要があると納得できるでしょう。
しかし、昨今では3日分では不足するため3日から1週間分の備えが必要だとも言われています。
「3日目くらいから支援物資が届くなら、1週間も必要ないじゃないか」
そんな不安や悩みを持つ方が多いでしょう。
なぜ、1週間分備えることが望ましいのか次節を読んで判断してください。
これからは1週間分は備えるべき?
結論から述べると、備えるべきでしょう。理由としては、2つあります。
- 発災後3日で食料が届くとは限らないから。
- 自然災害の激甚化が起こっているから。
2011年の東日本大震災でも、2016年の熊本地震でも発災後3日目から国からの食料供給が開始しましたが、被災された全ての地域、人々に発災後3日目に物資が届いたわけではありません。
そして、近年警鐘されている南海トラフ地震クラスの災害が起こった場合、交通網、インフラや物流機能が完全に停止する恐れが高いです。
東日本大震災では、電気や水道の復旧に1週間以上の日数がかかった地域もありました。
また、気候変動の影響で増加している大型台風についても、同時期に多数の地域で被災するため、支援が遅れる恐れが高いです。
他にも、新型コロナのような感染症対策として、自宅で避難生活を行う「在宅避難」を行うとなると、余計に支援物資が手元に届くまで時間が必要となります。
こちらの内閣府の資料の支援物資の流れに記載されている通り、現状国や都道府県が集めた支援物資の行き先は主に避難所です。避難所を起点に支援物資の供給が開始します。
避難所外避難者に対する支援方法についてもきちんとルールが決まっている自治体が多いですが、発災直後で事態の把握ができていない状態では、まずは避難所が優先され、在宅避難されている方へ支援物資の供給が遅れる可能性が高くなると想像できます。
これらの事情により、最低でも3日分から1週間分の非常食を各家庭で備蓄しておくことが今は推奨されています。
非常食を備える3つのポイント
「3日分ないし、1週間分を家庭で備えた方がいいと危機感を覚えたが、どうやったらいいのかわからない」
「ローリングストックを試してみたけど、挫折した」
そんな悩みを持つ方は、まずは非常食を備える3つのポイントを押さえましょう。
①日頃食べている食品を多めに買う
いきなり非常食を備えようと考えて、インターネットで5年保存水や缶詰パンを購入することもいいでしょう。
しかし、初めから馴染みがない非常食として販売されている商品を購入することはハードルが高いでしょう。
まずは、日常生活で使用している商品を多めに購入することから始めるといいでしょう。
- 日常生活で使っているラップやウェットティッシュなどの日用品
- インスタントラーメンやフルーツグラノーラのように賞味期限が数ヶ月持つ食品など
野菜などの生鮮商品ではなく、常温保存が可能で日常生活で食べている加工食品を、いつもより1袋多めに購入するなどから始めることがおすすめです。
②栄養バランスを考慮する
ある程度非常食を備えている方は、次のステップに進みましょう。
ご家庭で備えている非常食を見ると、炭水化物の占める割合が多い方が多いのではないでしょうか。
アルファ化米や乾麺、缶詰のパンなどが炭水化物が多い食品に当たります。
特に、発災時の食事は炭水化物に偏りタンパク質やビタミン、ミネラルが不足しがちです。
そのため、サバ缶や高野豆腐、果物缶、ドライフルーツなどの食品は賞味期限も長く不足しがちな栄養素を摂取できるためおすすめです。
避難所の生活においては、配給される飲食物や調理設備が限られています。
飲料水が少なく水分の摂取量が減少したり、トイレの数が限られるためにトイレに行かなくて済むように、水分の摂取を我慢することで、脱水症状になる方もいるので注意が必要です。
さらに、ステップアップしたい方は、献立表を考えてみると非常食の準備が楽しく効率よく備えられるかもしれません。
③実際の献立をイメージする
例えば、今のご家庭にある食品の状況で、3日間の避難生活を行うとなったらどのような献立にするのか。
そして、電気やガス、水道といったインフラ設備も軒並み使えない場合どうしますか。
気温によりますが、冷蔵庫のドアの開閉をしなければ冷蔵室の冷気は3時間、冷凍室の冷気は1日程度は保冷されるので、野菜やお肉がすぐに痛んで食べられなくなるということはありません。
被災日当日など安全が確保された場所に避難できた状態であれば、カセットコンロを使えば、いつも通りの食材を使って調理ができそうです。
このように、もしもを想定して考えると偏っている食品や食べたい食品が考えやすいでしょう。
さらに、ご家族とご一緒に考えると、防災への関心も高まりコミュニケーションを活発にもできるのでおすすめです。
引用:農林水産省 > https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/pdf/140205-02.pdf
乳幼児や高齢者 / アレルギーがある方へ
結論から述べると、少なくとも2週間分の備蓄が望ましいでしょう。
なぜなら、乳幼児やアレルギーを持っている方が食べることができる食品は、一般的な食料供給よりも遅くなるからです。
東日本大震災の時には、アレルギー対応食品が届くまで1ヶ月以上かかった方もいるそうです。
ゼリー飲料やスマイルケア食品などといった食べやすい食品にも、保存期間が長い商品もあります。
母乳育児をしている人は、母乳による授乳を継続することが大事ですので、しっかりと食事や水分を取り災害時でも過度なストレスがかからない環境を作れるように備蓄しておきましょう。
ミルク育児をしている方は最低でも2週間分のミルクを備蓄しておきましょう。
また、調乳用の水については、お湯を沸かせるように、カセットコンロとボンベ(1日1本)の用意を忘れずに用意しておきましょう。
一度食べてみて、美味しいと感じた食品を備えておくと非常時にも食べ慣れた食事ができていいでしょう。
おすすめの備蓄方法「ローリングストック」とは?
ローリングストックは聞いたことがある方も多いでしょう。
備蓄といっても、いろいろな方法があります。
そこで、簡単に始められるローリングストックが推奨されています。
備蓄する食品は、大きく分けて2種類に分けられます。
- 非常時に使用するモノ。例えば10年保存水や5年保存缶詰パンなど長期保存が可能な食品
- 日常的に使用しているモノ。例えば、サバ缶やドライフルーツインスタント味噌汁などの食品
ローリングストック法を用いると、どちらの種類にも活用できます。
ここからは、ローリングストックのメリット、デメリットから簡単な始め方をご紹介します。
ローリングストックとは?
日常生活で使用している日用品や食品で、自然災害などの緊急時にも利用できるモノを少し多めにストック(備蓄)することです。
「1度ローリングストックをやってみたけど挫折した」
といった声もあるのですが、挫折された方は勘違いされているかもしれません。
ローリングストックを挫折する要因としては、いきなり5年保存水や3年間持つ缶詰パンなどの本格的な非常食を購入することが考えられます。
例えば、いつもなら1度のお買い物でサバ缶は1セットしか買わない方は、2セット買うだけでもローリングストックと言えるでしょう。
また、近年問題視されているフードロス対策の一環にもなります。
- 普段食べている食品を少し多めに備える。
- 普段の食事として食べる。
- 食べた分を購入する。
このループを行うことで、賞味期限切れの心配も必要ありません。
さらに、非常時に日常と同じ食事を摂ることができることは、過度なストレスがかかるリスクの軽減にもなるでしょう。
ローリングストックのメリット
国や自治体のマニュアルにも記載されているローリングストックですが、どのようなメリットがあるのか疑問に持たれる方もいるでしょう。
インターネットで調べると、「ローリングストック デメリット」「ローリングストック 失敗」なども出てきます。
ローリングストックを始める前にメリット、デメリットを確認してみましょう。
①誰でも気軽に、家庭で備蓄を始められる
②防災に関する知識がなくても行える
③非常時にも、食べ慣れている食品を食べることができる
④賞味期限や消費期限など食品の管理がしやすい
⑤購入するべき食品の量がわかりやすい
防災は大事とわかっていながら、後回しになりがちです。普段の生活で使っているものを多めに買うだけで防災になるので、すぐに始まることができます。
また、数年ごとに買い替える商品を保存していた場合、ついつい忘れてしまうこともあるかと思います。
日常生活の中で古いものから順番に消費するので、賞味期限切れの心配も少なくなります。
ローリングストックのデメリット
ここからは、よく聞くローリングストックのデメリットも確認してみましょう。
①ストックしておく保管スペースがない
②加工食品は生鮮食品より価格が高い
③買う食品が偏ってしまう
心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方のために、簡単なローリングストックのやり方をご紹介します。
簡単なローリングストックのやり方
気軽に誰でも行えるローリングストックは、次の3ステップを意識して実践することです。
ステップ1 日常生活で使っている日用品や食品を1種類でもいいので多めに買う。
ステップ2 日常生活で食べたり、使ったりする。
ステップ3 食べたり、使用したりした分だけ、購入する。
挫折した方の多くは、いきなりたくさんのことを始めようとしてしまいがちです。少しづつ少しづつ購入する商品を増やしていきましょう。
非常食の3日分&7日分リスト
「最低でも3日分は備蓄しないといけないことはわかったけどリストが欲しい」
そのお声に応えます。
アレルギーや持病を持っていないと仮定したリストです。
下記のリストに、あなたに必要なものをどんどん追加して活用してください。
大人1人1日分の目安
女性/乳幼児/高齢者の方1日分の目安
4人家族の場合の備蓄リスト
会社に備える非常食のポイント
自宅の備えができて、レベルアップしたい方は、会社への備えも考えてみましょう。
自宅と違い会社に置く場合は、下記のポイントを押さえておくと非常時に役立つでしょう。
- 携帯性がいいものを選ぶ
- 調理不要で食べられる食品を選ぶ
- なるべくゴミが少ない食品を選ぶ
おすすめの非常食5選
レトルト食品 / 缶詰
最近では、高級なレトルト食品や缶詰もあります。
日常生活の中で食べたくなるような商品を購入すると非常時はもちろんですが、楽しく備蓄を始められるのでおすすめです。
フリーズドライ食品 / 乾麺
日頃から食べ慣れているインスタント味噌汁やラーメンなどがあります。
カセットコンロやポータブル電源とホットプレートなど温められる製品を持っていると、食べ慣れた美味しい食事を行えます。
ゼリー飲料
咀嚼力が弱っている高齢者の方や赤ちゃんなどにも適しています。
また、食欲がない方でもゼリーならサラッと食べられるのでおすすめです。
ドライフルーツ
長期保存ができるだけでなく、コンパクトかつ軽量です。
さらに美味しくビタミンやミネラルなど不足しがちな栄養素を摂取できるためおすすめです。
ビーフジャーキー
長期保存ができるだけでなく、コンパクトかつ軽量です。
その上、美味しくタンパク質が摂取できるためおすすめです。
被災時の食事を手助けするアイテム
1日だけの避難生活なら、我慢できることもあるかもしれませんが、南海トラフ地震などのように大規模な災害の場合、長期の避難生活が予想されます。
その場合、電気、水道、ガスといったインフラの復旧に長期間かかることが予想されます。
カセットコンロ / ガスボンベ
長期の避難生活の中で、食事は単なる栄養摂取の手段だけになるとストレスが強くかかります。
慣れない環境で、なおかつ娯楽も少なくなる被災生活で、冷えた固いご飯だけ食べ続けるのは心身ともに疲れてしまいます。
せめて食事の時だけでも、明るい気持ちになれるようにするためには、温かい食事が必須です。カセットコンロを用意しておくと、災害時も温かくて美味しい食事を食べることができます。
ポリタンク
生活用水を含めると、大人1人あたり3リットルの水が1日で必要になると言われています。避難生活が長くなると、備蓄している飲料水や生活用水だけでは不足するので、水の支援を受け取る必要があります。
そこで課題となるのが、支援物資として届いた水を家まで運ぶ手段です。
特にマンションにお住まいの方や、足腰に自信がない方など、重い水を持って何度も給水所と自宅を往復することは、簡単ではないかなと思います。
背負って持ち運べるタイプのウォータータンクがあると、女性でも運ぶのが楽になります。
ラップ
ラップは、万能に活用できるためかなりおすすめです。
軽度の外傷の応急処置にも使えますし、食器につけることにより洗う手間もなくなります。
使い捨て哺乳瓶セット/紙コップ
避難生活の中で哺乳瓶を清潔に保つことは困難です。
ミルク育児で赤ちゃんを育てているがいるご家庭では、哺乳瓶を使わずに紙コップで授乳ができるように練習もしておくか、使い捨ての哺乳瓶を用意するようにしておきましょう。
ミルクは飲み慣れたものを用意するのがいいですが、液体ミルクの場合は、お湯の準備が不要のため粉ミルクよりも使いやすいです。
防災と日常の境を減らそう
あなたが、お住まいの地域や建物、ご同居されている方の状況などによって、必要な用意は変わってきます。
100人いれば、100通りの防災の方法があり、それぞれ皆さんの状況に合わせて用意することが重要になってきます。
パーソナル防災サービス「pasobo」では、10問程度の質問に回答するだけで、警戒すべき災害リスクを可視化し、それぞれに合った防災対策や防災グッズを提案してくれるサービスです。一人一人にあった最適な防災グッズを購入することが可能ですので、是非ご確認ください。
大学時代に災害救援系NPOに在籍し、多数の災害救援活動を経験。卒業後は防災のベンチャー企業でECサイト/オウンドメディアの運用を請け負う。被災地での災害救援活動を行なったり、居住地の防災対策コミュニティに参加し、日々防災と向き合っている。