最終更新日:2022/09/06 (公開日:2020/03/29)
BCP「事業継続計画」とは?策定、対策方法を企業から病院まで完全網羅
災害大国である日本は、個人や家庭はもちろん、企業でも従業員や関係者の命や財産を守るために、防災計画や対策をすでに行っているところも多くあります。
ところが、近年想定外の規模の災害が起きるケースも多く、防災対策だけでは企業そのものの存続が危ぶまれることも少なくありません。
災害を含めた、あらゆるリスク要因から企業の存在を守るため、事業を継続させるための計画がBCP「事業継続計画」です。
近年ビジネスシーンでも多く聞かれるようになったBCPとは何か、の意味や概要に含めて、これから策定したい人のための対策方法、一般企業から製造業、病院までBCPに関連した知りたい情報をまとめました。
企業はもちろん、災害からあらゆる施設や組織、団体を守るために何をすべきか知りたい人は、ぜひこの情報を明日のために役立ててください。
BCPとは?を理解するのが第一歩
日本は島国という風土から、地震や津波、台風などの災害を歴史の中で多く受ける機会のある国家です。
元々災害に対する心構えができている国家であるのにも関わらず、近年では日本でも想定外の、未曽有の大災害と呼ばれる事例も多く発生するようになりました。
そこで防災対策に加えて、企業が災害への対応措置として注目されるようになったのが「BCP」です。
BCPとは事業継続計画を指す
BCPとは、「事業継続計画」のことで、災害を含めて企業の事業を停止する要因が発生した場合でも、事業を停止しないように、または停止せざるを得ない場合でもできるだけ早い復旧を目指すために、あらかじめ策定しておく計画を指します。
BCPを策定する意味を知っておこう
もともと、BCPはアメリカを始めとした欧米諸国で9.11世界同時多発テロをきっかけに生まれた企業間での施策です。
日本では東日本大震災の発生を機に、多くの企業がBCPの策定を検討し、国としてもBCP策定を企業へ推奨する傾向が高くなりました。
すでに防災計画や対策を行っているため、BCPは策定する必要がない、という企業や、コストやソース、人力不足でBCP策定まで手が回らず対策ができない、という企業は中小企業を中心に多くなっています。
まずは防災計画とBCPの違いや、BCPとは何か、BCPを策定する意味を理解し、必要な対策や施策へ動き出すのが重要と言えます。
BCPとは何かを理解するために、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
BCPを策定する意味とは?知っておきたい企業の危機管理について
BCPを対応・策定するまえに「要因」と「最優先事業」を決める
BCPは、事業を継続させるため、またはできるだけ早い復旧を目指すために策定される計画です。
ところが、いざBCPを策定しようとしても「何から始めればいいか分からない」「企業の事業を停止する要因が分からない」ということも少なくありません。
BCPの対応、策定するまえに以下の事項を決めておきましょう。
- BCP策定で最優先する事業
- 最優先する事業を停止する要因の中で一番可能性の高いもの
BCP策定の前に、最優先事業と事業停止の可能性の高い要因を考えよう
BCPは、日本でも大企業はほぼ策定または策定予定であるのにもかかわらず、中小企業ではまだ策定に至っていない、具体的な計画も出ていないところも多くなっています。
まずBCPを策定するうえで、必要なのが「企業で最優先にする事業」と「事業を停止する可能性の高い要因」を決めることです。
BCPで停止を防ぐ、または即急な復旧を目指す事業は、ひとつに絞ります。
企業の中核事業を選びましょう。
もしも、企業で複数の事業を展開している場合には、企業の中核となっている事業を選んで、その事業を停止防止、または復旧を目指すためのBCP策定をすることなります。
BCPは、事業を停止する要因すべてに対してあらかじめ対策を行っておく計画ですが、企業ごとに最優先して対策すべき要因は異なってきます。
著名なのが、欧米諸国ではBCP策定のきっかけとなったのが9.11世界同時多発テロのため、「テロ攻撃」がBCP策定にて最優先で対策すべき要因となります。
一方で日本では東日本大震災をきっかけにBCPに注目が集まったため、「災害」がBCP策定で対策すべき要因となるでしょう。
さらに、企業の施設のある立地や環境によっても発生する災害、ほかの要因の種類は異なってきます。
まずは、事業を停止する可能性の高い要因とは何か、企業にとって何が一番脅威となるかを考えなければいけません。
BCP対策の前提となる、最優先事業と要因を考える方法については以下の記事を参考にしてください。
BCP策定で忘れてはいけない「災害対策」
BCPを策定したいけれども、何の要因への対策を第一にすればいいか分からない、という場合は災害対応へのBCPを策定するのがおすすめです。
なぜなら、どんな企業でも等しく起きる可能性が高いのが災害だからです。
初めてBCPを策定するには、災害発生への対応を前提に考えてみましょう。
とはいえ、すでに防災対策を行っているためBCPの対応は行わなくても良い、と考える企業担当者の人も多いでしょう。
企業としては防災と同時に、BCPの対策を行っておくのが重要と言えます。
防災対策とは、実際に災害は起きた前提で行動することを指します。
ところが、災害発生時のことのみを対策しているだけでは、未曽有の災害には対応できません。
発生時に「企業の事業が正確に機能している」という前提も、覆されるほどの大規模災害が発生になったのが、近年のBCP策定推進の裏側にはあります。
すでに防災対策を行っている企業で、BCP対応や策定を考えたいとき。
または、防災とBCPの違いが分からずBCP策定に重要性を感じないときには、以下の記事でBCPと防災の違いや関係性について解説しています。
災害が起きる前にできる対応方法として、BCPをぜひ策定しておきましょう。
BCP対応から策定までの方法について
自社の最優先事業や、事業を停止する可能性の高い要因を選定できても、具体的にBCP対応や策定はどのように行えばよいか分からない、という人も多いです。
BCP対応や策定を行ううえで、基本的な流れを理解しておきましょう。
- BCP策定のメリットと全体プロセスを把握
- BCP発動のフローと大切な「初動対応」を決めておく
- BCP策定後は、訓練、改善、策定のサイクルを回す
BCP策定のメリットと全体プロセスを把握
BCPを策定する目的や、意識がない場合BCPを策定したい、という気持ちはあっても実際の策定になかなか結び付かない場合があります。
BCPは事業を停止しないためにあらかじめ策定しておく計画を指しますが、防災と同じく災害を含めたリスクから企業や従業員、関係者の命や財産を守るだけでなく、いろいろなメリットが得られます。
たとえば、BCPは災害を始めとした企業の存在や財産をおびやかす要因についての対応方法のひとつのため、近年問われている企業の「危機管理能力(リスクマネジメント能力)」のひとつとしても数えられます。
危機管理がきちんとしている企業として、対外的な信頼が上がる、事業を停めないことで企業としての社会的責任が果たせるなど、さまざまなメリットがあるのを覚えておきましょう。
メリットを把握したうえで、BCP策定における具体的なプロセスを把握しておけば、BCP策定の第一歩を踏み出したと言えます。
BCP策定によって企業にどのようなメリットがあるのか、また全体的な策定プロセスは以下の記事を参考にしてください。
BCP発動のフローと大切な「初動対応」を決めておく
BCPは、策定したあと実際に発動するか、しないかを決めるタイミングも一緒に決めておかなければいけません。
さらに、災害を要因としてBCPを発動させる場合や、あらかじめ策定しておく場合、災害の種類によって初動対応が異なります。
BCPを円滑、かつ適切に発動するうえで重要なタイミングと、初動対応についても決めておきましょう。
BCPの発動フローのスタート地点「初動対応」をスムーズに行うには
BCP策定後は、訓練、改善、策定のサイクルを回す
BCPはただ策定するだけでなく、実際に従業員への周知やマニュアルの策定、さらに教育や訓練を経て改善点があれば改善するのが重要です。
策定して終わり、ではなく策定後に実際に訓練などで実働させたうえで、気が付かなかった改善点があれば改善し、策定し直すというサイクルを踏んで行くことで、災害を始めとしたリスクに強い企業造りにつながると言えるでしょう。
BCPは策定と改善が重要!策定までのプロセスと運営方法を解説
幅広い分野や業種で求められているBCP
BCPは、一般企業のなかでも幅広い業種で策定が急務とされています。
さらに、企業だけでなくいろいろな分野でも、BCPは重要視されているのです。
特にBCP策定が急務の製造業
日本における「ものづくり」を担う製造業は、国内だけでなく海外にも高い技術力を集結した製品を多く出荷しています。
製造業はサプライチェーン構造がほとんどのため、ひとつの企業の事業が停止してしまうと、そのサプライチェーンすべてが止まってしまい、経済にも影響を及ぼす可能性が高いです。
とはいえ、中小企業も多い製造業では、BCP策定に至っていない企業も少なくありません。
日本の経済の中核を担っているといっても過言ではない、製造業だからこそBCPを策定する重要度は高いと言えるでしょう。
BCPは製造業だからこそ対策すべき理由と策定のポイントを解説
企業だけでなくBCP策定が求められている
災害大国である日本は、BCPで対応する要因を災害とすることも多いです。
災害は、一般企業だけでなくほかの施設や団体などにも等しく起きる可能性が高いため、一般企業以外でもBCPを踏まえた防災対策の重要性が再認識されるようになりました。
たとえば、災害で医療の拠点ともなる病院や医療機関では、災害時に適切な対応ができるように、事業を継続させるためのBCPを策定しておく重要性は高いと言えるでしょう。
もしも、自社や施設でどのようにBCPを策定していいか分からないときには、実際にBCPを策定した企業や施設などの事例を参考にするのもBCP策定において有益です。
BCPの意味や重要性を考え、対策や策定につなげよう
企業の規模や事業の内容に関わらず、大規模な災害が起きる可能性がある日本では、どんな企業や施設、組織もBCPを策定しておくのが重要です。
防災対策とともに、BCPも同時に策定し、改善しながら災害を始めとしたリスクに立ち向かう体制をつくらなければいけないステージに来ていると言えるでしょう。