公開日:2023/10/19
【保存版】水害対策!!個人・家庭での備え方を解説
目次
水害とは?
2023年8月上旬に発生した台風7号が、近畿地方を中心に大きな被害をもたらしました。
台風による大雨の影響で、新幹線をはじめとした公共交通機関に乱れが生じました。
それだけでなく、京都府や鳥取県では土砂崩れが発生しました。
水害とは、
大雨や台風などの多量の降雨によって引き起こされる災害のことです。
引用:国土地理院>「水害について」,Microsoft PowerPoint – 8 (gsi.go.jp)
日本は雨が多いため、水害が発生する可能性が高いです。
特に、梅雨や台風の6月〜9月に発生件数が集中しています。
昨今は、ゲリラ豪雨といった一時的に狭い範囲で大量の雨が降ることが頻繁に発生しています。
水害の主な被害としては、土砂災害・河川の氾濫・洪水・建物への浸水が挙げられます。
水害は毎年のように日本各地で発生しています。
日本全国1,741市区町村のうち、平成23年~令和2年までの10年間で水害の発生回数が0回なのはわずか3.2%であり、ほとんどの市区町村で水害が発生していると言えます。
それでは、日本ではどのような水害の事例があるのかを見ていきましょう。
水害が発生する原因
都市化と気候変動が、水害のリスクを高めている原因と考えられています。
そもそも「都市化」とは、都市への人口集中が発生し、それに伴い都市型の生活様式が形成されていき、都市周辺や農村部分にもその生活様式が拡大していくことです。
都市化が進む前は、流域の開発が進んでいない状態でした。
山の表面や池などが水を吸収し一時的に貯め、その水が川にゆっくりと流れ込み、水の流量の調整を行う役割を担っていました。
都市化が進むことで流域の開発が進み、道路が整備され、建物が建てられていきました。
さらに道路の多くは、水が浸透しにくいアスファルト等で舗装されました。
その影響で、短時間に多量の水が河川に流入するようになってしまったのです。
そのため、地下街が発展している都心部においては、そこに大雨による水や土砂が流れ込んでしまうという被害も出ています。
また、水害が発生する原因として地球温暖化による気候変動の影響もあります。
気象庁のデータによると、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数が増加傾向であると言えます。
1日の降水量が200ミリと言われてもどれくらいなのかピンとこないですよね。
例えると、東京都の平年9月ひと月分の降水量が1日で降るという状況だそうです。
今後も大雨の頻度が増加傾向にあると予測されており、大規模な水害が発生する可能性がさらに高まっているのです。
水害の事例
水害について皆さんに知って頂くためにも日本で起こりやすい事例として「内水氾濫・外水氾濫」を紹介します。
内水氾濫とは、
河川の水位の上昇や流域内の多量の降雨など(要因によって湛水型とか氾濫型等の表現も用いる)により、河川外における住宅地などの排水が困難となり浸水することです。
引用:気象庁>「予報用語 河川、洪水、大雨浸水、地面現象に関する用語」,気象庁|予報用語 河川、洪水、大雨浸水、地面現象に関する用語 (jma.go.jp)
先ほど触れた「都市化」の影響により、内水氾濫の危険性が高まってきているのです。
外水氾濫とは、
河川の水位が上昇し、堤防を越えたり破堤するなどして堤防から水があふれ出ることです。
引用:気象庁>「予報用語 河川、洪水、大雨浸水、地面現象に関する用語」,気象庁|予報用語 河川、洪水、大雨浸水、地面現象に関する用語 (jma.go.jp)
洪水とはこの外水氾濫のことを指します。
水害による被害
水害が発生することで、どのような被害が生じるのでしょうか。
例えば、大雨により家屋が浸水したというニュースをよく耳にすると思います。
浸水といっても、0〜50cmの床下浸水と50cm以上の床上浸水に分けられます。
浸水が発生することで、
- 停電や建具の変形
- 天床の全壊
- カビや雑菌の繁殖
- 大量のゴミ処理
といった多くの被害が生じる可能性があります。
それでは実際に水害に被災された地域はどのような被害を受けたのでしょうか。
実際の被災地の様子は?
実際、水害にあった被災地の様子を、写真を通して見ていきましょう。
また、この章では、令和5年台風第13号による千葉県茂原市、福島県いわき市の被害の様子、そして2023年(令和5年)7月に秋田県で発生した記録的な大雨による水害の被害の様子を取り上げております。
令和5年台風第13号、秋田県での記録的大雨で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
千葉県茂原市(令和5年台風第13号)
これらの写真は、千葉県茂原市の様子です。
今年の9月に発生した台風13号により、千葉県では記録的大雨に見舞われました。
茂原市では、台風13号の影響で水につかった家具などを回収することになり、それらを一時的にこの場所に置いていたそうです。
写真からもわかるように、大量の家財や木くずが多く、災害廃棄物として捨てられていることがわかります。
台風による家屋の浸水の影響で、家財などがダメージを受けてしまったのでしょう。
福島県いわき市(令和5年台風第13号)
これらの写真は、台風13号による大雨で被害を受けている福島県いわき市の様子です。
いわき市では10本の河川が氾濫し、市内全域に5段階の避難情報で最も高い「緊急安全確保」が発令されました。
また、約1000棟の住宅が床上浸水し、断水した地域もあり多くの被害に見舞われました。
秋田県(令和5年7月15日からの梅雨前線による大雨)
これらの写真は、秋田県で発生した記録的大雨による被害の写真です。
今年の7月14日から16日にかけて東北地方北部に梅雨前線が停滞し、その影響で秋田県内の広い範囲で多量の雨が降りました。
総降水量は多いところで400ミリを超え、一部の地域では72時間の降水量が観測史上1位を更新しました。
さらにJR秋田駅周辺も冠水し、その原因は内水氾濫であったと見られています。
水害対策の取り組み事例
ここまで、水害の仕組みや実際の被災地の様子を見てきました。
水害は日本全国で、毎年数多く発生していることがわかりました。
では、政府や地方自治体、民間企業は水害に対しどのような対策を講じているのでしょうか。
国による水害対策
国土交通省は、今後気候変動により水害リスクがより増大すると予測されているため、「流域治水」の取り組みに関する「流域治水施策集」を作成しました。
「流域治水」とは、気候変動の影響による水災害の激甚化・頻発化等を踏まえ、堤防の整備、ダムの建設・再生などの対策をより一層加速するとともに、集水域(雨水が河川に流入する地域)から氾濫域(河川等の氾濫により浸水が想定される 地域)にわたる流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行う考え方です。
引用:国土交通省>「流域治水施策集 目的とそれぞれの役割 Ver2.0」,r503_sesaku_01.pdf (mlit.go.jp)
流域治水の考え方が反映されている具体例としては 、
- 治水ダムの建設
- 水害のリスクの低いエリアに人々を誘導し、住居を移転させる
等が挙げられます。
国土交通省が作成した「流域治水施策集」には、より詳細に施策の目的や制度、事例等がまとめられています。
ぜひこちら(r503_sesaku_01.pdf (mlit.go.jp))からご覧ください。
地方自治体による水害対策
今回は、東京都が行っている水害対策の事例について紹介します。
東京都の特に東部は、海面水位より低い地域が広がっていて、万が一川の水が増水し堤防が決壊すると、広範囲で浸水被害が発生すると予測されています。
また東京都では、公共交通機関のインフラなど人々のライフラインに多大なる影響を及ぼし、日本全体の社会経済活動に支障をきたす可能性が高いです。
東京都では、堤防やダムの整備といったハード対策だけでなく、洪水ハザードマップの公表や水位情報等の発信を行っています。
特に江東5区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)は、区のほとんどが浸水すると予測されているため、他の区より独自の取り組みを進めています。
水害による影響で、避難する事態に陥った際、緊急的かつ一時的に中高層建築物へと避難をする必要が出てきます。
葛飾区では、ハザードマップに基づき区内で浸水をしないフロアがある210箇所の区有施設を「洪水緊急避難建物」として指定しました。
具体的に言うと、葛飾区内の保育園や小・中学校、児童館、アパートが指定されています。
さらに東京都は、災害に強いまちの形成に向け、治水施設の整備を急速に進めていくと共に避難生活の水準を最低限確保できるような「高台まちづくり」を推進しています。
民間企業による水害対策
費用や時間がかかるため国や地方公共団体のみでは、水害対策を十分に講じることは困難です。
国や地方公共団体のみならず、民間企業との協力が重要になってきます。
日本の多くの民間企業や工場・事業所等は、自分達の事業への影響を最小限に抑えるためにも水害対策を行っているのです。
まずは東京地下鉄株式会社(東京メトロ)の事例です。
画像引用・参考①:東京地下鉄株式会社>「風水害対策」,風水害対策 | 安心への取組み | 東京メトロ (tokyometro.jp)
東京メトロでは、大雨の際に浸水の恐れのある出入口は、既に歩道より高い位置で作られており、止水板や出入口全体を閉鎖することが可能な防水扉を設置しています。
次に大塚製薬工場の事例です。
大塚製薬の主力工場と言われている徳島県の松茂工場では、浸水対策として工場を囲う様に防潮堤を整備し、電気系統の重要設備への防潮扉の設置を行いました。
また万が一に備え、物流拠点を日本各地に分散化しました。
個人の水害対策のポイント
では、私たち個人がどのような水害対策を行っていけばよいのでしょうか。
自分が抱えているリスクを知る
まず重要なこととして、「自分が抱えているリスクを知る」ことが大切です。
「自分の住んでいる地域は、水害の際どれくらい被害を受けるのか」
「自宅周辺に氾濫の恐れのある河川はあるのか」
など、自分の身の回りに潜むリスクをきちんと把握し、知る必要があるのです。
自分が抱えているリスクを知る1つの手段として「ハザードマップ」があります。
そもそもハザードマップとは、被災想定区域や避難場所、避難経路などが表示されている地図のことです。
そこで国土交通省が運営しているハザードマップポータルサイトを見てみましょう。
ハザードマップポータルサイトでは「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2つあります。
「重ねるハザードマップ」では、洪水や土砂災害、高潮、津波などの災害種別で選択することができ、被害想定を地図上で見ることができます。
また「わがまちハザードマップ」では、都道府県と市町村を選択すれば各地方公共団体のサイトに移動し、災害に関するハザードマップや情報を手に入れることができます。
詳しくはこちら(ハザードマップポータルサイト (gsi.go.jp))のリンクよりご覧ください。
ハザードマップをすでに見たことがある方や初めて見た方は、
「ハザードマップってわかりにくい」
「ハザードマップを調べてもどんな対策をすればいいのかわからない」
と思った方も多いのではないでしょうか?
そんな方にぴったりの防災サービス「pasobo」をご紹介します。
pasoboは無料で1分で行える防災診断です。
いくつかの質問に答え、被災リスクや防災対策など診断結果がまとめられています。
その診断結果から防災対策におすすめのグッズまでがわかるサービスです。
「何から始めればいいのかわからない」
そんな方はぜひこちらから(pasobo パーソナル防災サービス)をご利用してみてください!
自宅の浸水被害を減らす
水害が発生した際に、住宅の1階部分が浸水してしまったケースが多々あります。
皆さんの自宅の浸水被害を減らすにはどんな方法があるのでしょうか。
水害が発生した際、家に水が入ってこないようにするには、まず土のうを設置することが良案です。
土のうは、水を家の中に入れないようにせき止めてくれる役割を担っています。
土のう袋はホームセンターなどで手に入れることが出来るので、特に戸建て住宅にお住まいの方はぜひ購入してみてください!
また、雨水を排水する役割を担っている「雨水ます」を日頃から清掃しておき清潔に保っておくことが大切です。
流れてきた水が適切に雨水ますの中に流れ込むためにも、清掃をしておきましょう。
建物自体を水害から守るような方法も存在しています。
外壁をある程度の高さまで止水性のある材料で覆う建物防水化案、建物の基礎を高くし敷地をかさ上げする高床化案など、水害に強い家を選択することも重要です。
浸水した場合に備える
では万が一、自宅が浸水してしまったらどうすれば良いのでしょうか。
自然災害に備えるには、日頃から防災グッズを準備しメンテナンスをしておくことが大切です。
水害時には、断水してしまったりガスや電気が止まってしまったりする可能性が高いです。
そのうえで、最低限日持ちがする食糧や水を備蓄しておきましょう。
また、水害対策の面においては、浸水する可能性がある住宅の1階部分よりは、2階以上などの高い場所に食糧や水を保管しておくと良いでしょう。
浸水後に作業をする際は、できるだけ肌の露出を減らした服装で作業をするようにしてください。
散乱しているがれきや木材が刺さってしまい、けがをする可能性があります。
水害によって流れ込んだ泥の中にはへドロなどの有害物質が含まれています。
ヘドロとはやわらかい泥のことで、生活排水や工業廃水に含まれる有害物質を含んでいる場合もあります。
ヘドロは感染症の危険性があり子供にとって有害なため、お子さんには絶対に触れさせないようにしてください。
自宅が浸水してしまい、家具や家電が濡れてしまったというケースも考えられます。
その場合は「濡れていても捨てない」ようにしましょう。
一見濡れていて使えなさそうでも、乾燥させて使えることもできる場合もあります。
まずは 専門業者の方に点検してもらうようにしましょう。
家財を動かしたり分別したりすることは非常に大変な作業になります。
そんな時は災害ボランティアセンターに相談しボランティアの方の力を借りることもできます。
詳しくはこちら(全社協 被災地支援・災害ボランティア情報 – 2023台風13号特設ページ (saigaivc.com))をご覧ください。
おすすめの水害対策
最後に、おすすめの水害対策についてご紹介します。
災害リスク診断
先ほども少し触れさせていただきましたが、pasoboという災害リスク診断をすることができるサイトがあります。
pasoboは無料で、簡単に行うことができる防災診断のことです。
自宅や自宅周辺の状況を答えるような項目があり、その診断結果から自宅周辺における災害の危険性などがわかり、それらが一つにまとめられています。
さらに、防災対策におすすめのグッズまでもがわかるサービスになっています。
ぜひこちらから(診断 – PASOBO パーソナル防災サービス)ご覧ください!
水害対策グッズ
水害対策グッズでお勧めなものを3つ取り上げます。
1つ目は「土のう」です。
土のうとは、袋に土や砂を入れたもので浸水対策に効果的です。
土のうを作るために必要な土砂や土のう袋は、ホームセンターなどで簡単に手に入れることができます。
しかし、土のう袋に土砂を詰め始めることから、土のう袋を積み上げる設置まで、相当の時間を要します。
そのため、事前に土のうを準備しておくことをお勧めします。
また、土の代わりに水を入れる「水のう」というものもあります。
大雨で排水の処理が追いつかなくなった際、下水道や排水管から汚水が逆流するという被害が発生する可能性が高いです。
汚水が逆流してしまう場所は、お風呂やトイレ、洗濯機の排水口などが挙げられ、汚水に含まれる菌やウイルスが人々に害を与えてしまいます。
水のうを先ほど挙げた場所に設置することで、下水の逆流を防ぐことができます。
水のうは、自宅にあるゴミ袋で作成することができるので、水害が発生した際に実践してみてください。
2つ目は「レインウェア」です。
レインウェアを着用することで、防水機能もあり身体を守ってくれる役割があります。
水により体温が奪われ体力が落ちてしまい、命に関わるリスクも高まるので、レインウェアも準備しておきましょう。
3つ目は「脱出用ハンマー」です。
脱出用ハンマーは自動車の中にいる場合に効果的なものです。
浸水により車のドア、そして窓が開かない場合には脱出用ハンマーを利用します。
素手で窓ガラスを割るのは非常に危険なので、脱出用ハンマーで窓ガラスをたたき脱出するようにしましょう。
こちらの記事(台風対策グッズのおすすめ&自宅や避難におけるチェックポイント | SAIGAI JOURNAL(災害ジャーナル)|防災をもっと身近に (saigai-info.com))には、他の防災グッズはもちろんですが実際に防災グッズが役に立つシーンも記載しています。
是非ご覧ください!
また先ほどご紹介した「pasobo」では水害はもちろん、被災リスクに合わせた防災グッズが購入できます。
「どういった防災グッズを購入すればいいのかわからない」
と悩んでいる方は、pasoboで防災診断をしてみてください!
マイ・タイムラインの作成
水害から身を守るために、マイ・タイムラインを活用するのも良いでしょう。
マイ・タイムラインとは
住民一人ひとりのタイムライン(防災行動計画)であり、台風等の接近による大雨によって河川の水位が上昇する時に、自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、自ら考え命を守る避難行動のための一助とするものです。
引用:国土交通省>「マイ・タイムライン」,マイ・タイムライン (mlit.go.jp)
マイ・タイムラインの作成では、ご自身が住まわれている地域での洪水ハザードマップを用いて、様々な水害に関するリスクを把握し、どのような避難行動が必要かを考えます。
国土交通省が簡単にマイ・タイムラインを作成できるサイトを公表しています。
是非こちら(マイ・タイムラインを作ってみましょう | 河川 | 国土交通省 関東地方整備局 (mlit.go.jp))をご覧になって、ご自身でもまたご家族とご一緒に、現在の状況をチェックし実際に水害時どう行動すればよいのかを、再度考え直してみてください!
まとめ
今回の記事では、水害の原因や実際に被害にあわれた事例、国や地方自治体、民間企業による水害対策、そして個人で行うことのできる水害対策についてを紹介してきました。
水害は日本各地で毎年のように発生している、私たちの生活に密接に関わってくる災害であると言えます。
どの災害にも共通して言えますが、日頃からの備えが私たちの生活を守ることが出来るのです。
ご自身の住まわれている場所が水害の被害に合う可能性があるのかどうかを、実際に洪水ハザードマップなどで確認してみてください。
インターン生として在籍している大学3年生。大学では都市防災計画研究室に属していて、防災をテーマに幅広く研究している。将来は防災という観点で、人々の暮らしに役立つことが出来るような仕事をしたい。